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本編
やっぱりホテルじゃねえか
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しばらく行くと、辺りの景色は一変した。
岩や割れたアスファルトが多かったのが、緑を多く含む景色に変わってきた。
かつて国道だったと思われる大きな道から外れてくると、どこも大体緑が多くなってくる。
あれだけの災禍を経験しても、自然は力強く甦っていた。
人間が如何に自然の大敵であるかを如実に物語っている様である。
「もう、ブラン領ですよ」
ショーコが言った。
遠かった山が大分近くなっている。
程なくして馬車はコンクリート製の建物に着いた。
奇跡的に前時代の建物が比較的そのまま残っている。
老朽化しているのだろうが、あまりそれを感じさせない外観だった。
入り口の前にロータリーを思わせるスペースがある。そこに沢山の人が集まっていた。
「……ここは」
唯桜は馬車から建物を眺めた。
何となく見覚えが有るような無いような。
ショーコが着きました、と言う。
唯桜はキャビンから降りた。
もう一度唯桜は建物を見渡した。
三階建てのビルかと思ったが違った。
広くスペースを取った三階まで生き残っていて、高層部分の四階からは無くなっているのである。
唯桜は何処と無く見覚えがある気がした。
入り口を支える大きな柱を見て、急に思い至った。
「時坂・グランドシティ・ホテル……」
かつて妹が披露宴を行ったホテルだった。
高級感のある造りは当時のままだ。
これが現領主である、ブラン・ブラン・時坂の居城なのかと、唯桜は妙な気持ちになった。
ホテルの高級感ある造りが、領主に気に入られたのだろう。
思わず、へえ、と声が出たが、それ以上の感想は唯桜には無かった。
別にどうでも唯桜には関係が無い。
「これ、全員参加者かよ」
集まった屈強の集団を見て唯桜が呟いた。
それなら別に俺がくる必要があったのか、とも思った。
ヤーゴと美紅の顔がチラつく。
報酬を逃したらまた色々言われるのかと思うと、一応やっとくかと嫌々ながらも思った。
人々を掻き分けて唯桜は玄関口まで進む。
入り口には衛兵が四人立っていて、唯桜が近付くと前に出て立ちはだかった。
「発表があるまで大人しく待っていろ。入城は許されん」
衛兵の一人が大きな声で高圧的に言った。
「あん? 何だてめえは、たかが門番が偉そうにするんじゃねえよ。首根っこ引きちぎるぞコノヤロー」
唯桜は何処でも、誰が相手でも常に唯桜である。
空気を読むとか同調するとか言う事が出来ない。いや、やろうとしない。
それは弱い奴が生きていく為か、忠誠を誓う相手に対してのみ必要な事である。
ましてや改造人間の力を持つ唯桜には、敬意を表する相手などそうそう存在しない。
「何ぃ! 貴様!」
衛兵が色めき立つ。
その場にいた参加希望者全員が注視した。
「何だアイツ……」
そんな声が、そこかしこで囁かれた。
「化け物退治をしようって奴が、てめえなんか恐れる訳ねえだろバーカ。お呼びじゃねえんだよ」
唯桜の無礼な発言は、止める者がいないと止まる事を知らない。
事の成り行きを離れて見守っていたショーコは、気が気じゃ無かった。
「あ、あれがウチの社長……大神唯桜」
この時代に生きる力無き者にとって、唯桜の姿は恐ろしくも有り、眩しくも有った。
唯桜のあまりに大それた行動にショーコの脚が震える。
しかし、同時に何だか解らない興奮で心も奮えていた。
唯桜の態度に衛兵が気色ばむ。
「物を頼んでおいて態度が違うんじゃねえか? 偉いのか何なのか知らねえが、客人を待たせるんじゃねえよ」
辺りは騒然となった。
衛兵が手にした槍を唯桜の胸元に突き付ける。
「下がれ貴様! 無礼だろう!」
しかし恫喝は唯桜に対して効果は無い。
「何が無礼だ。良いから早く呼んでこいよ」
衛兵はみるみる顔が真っ赤になる。
「貴様あ!」
衛兵の槍が唯桜の胸に突き刺さろうとした時。
「お止めなさい。何の騒ぎですか」
凛とした声が衛兵を制した。
唯桜は両手をポケットに突っ込んだまま声の主を見る。
そこには小綺麗な衣装に身を包んだ美人が、こちらを見据えて立っていた。
「少しは話が通じる奴なんだろうな」
唯桜は薄ら笑いを浮かべて美人を眺めた。
岩や割れたアスファルトが多かったのが、緑を多く含む景色に変わってきた。
かつて国道だったと思われる大きな道から外れてくると、どこも大体緑が多くなってくる。
あれだけの災禍を経験しても、自然は力強く甦っていた。
人間が如何に自然の大敵であるかを如実に物語っている様である。
「もう、ブラン領ですよ」
ショーコが言った。
遠かった山が大分近くなっている。
程なくして馬車はコンクリート製の建物に着いた。
奇跡的に前時代の建物が比較的そのまま残っている。
老朽化しているのだろうが、あまりそれを感じさせない外観だった。
入り口の前にロータリーを思わせるスペースがある。そこに沢山の人が集まっていた。
「……ここは」
唯桜は馬車から建物を眺めた。
何となく見覚えが有るような無いような。
ショーコが着きました、と言う。
唯桜はキャビンから降りた。
もう一度唯桜は建物を見渡した。
三階建てのビルかと思ったが違った。
広くスペースを取った三階まで生き残っていて、高層部分の四階からは無くなっているのである。
唯桜は何処と無く見覚えがある気がした。
入り口を支える大きな柱を見て、急に思い至った。
「時坂・グランドシティ・ホテル……」
かつて妹が披露宴を行ったホテルだった。
高級感のある造りは当時のままだ。
これが現領主である、ブラン・ブラン・時坂の居城なのかと、唯桜は妙な気持ちになった。
ホテルの高級感ある造りが、領主に気に入られたのだろう。
思わず、へえ、と声が出たが、それ以上の感想は唯桜には無かった。
別にどうでも唯桜には関係が無い。
「これ、全員参加者かよ」
集まった屈強の集団を見て唯桜が呟いた。
それなら別に俺がくる必要があったのか、とも思った。
ヤーゴと美紅の顔がチラつく。
報酬を逃したらまた色々言われるのかと思うと、一応やっとくかと嫌々ながらも思った。
人々を掻き分けて唯桜は玄関口まで進む。
入り口には衛兵が四人立っていて、唯桜が近付くと前に出て立ちはだかった。
「発表があるまで大人しく待っていろ。入城は許されん」
衛兵の一人が大きな声で高圧的に言った。
「あん? 何だてめえは、たかが門番が偉そうにするんじゃねえよ。首根っこ引きちぎるぞコノヤロー」
唯桜は何処でも、誰が相手でも常に唯桜である。
空気を読むとか同調するとか言う事が出来ない。いや、やろうとしない。
それは弱い奴が生きていく為か、忠誠を誓う相手に対してのみ必要な事である。
ましてや改造人間の力を持つ唯桜には、敬意を表する相手などそうそう存在しない。
「何ぃ! 貴様!」
衛兵が色めき立つ。
その場にいた参加希望者全員が注視した。
「何だアイツ……」
そんな声が、そこかしこで囁かれた。
「化け物退治をしようって奴が、てめえなんか恐れる訳ねえだろバーカ。お呼びじゃねえんだよ」
唯桜の無礼な発言は、止める者がいないと止まる事を知らない。
事の成り行きを離れて見守っていたショーコは、気が気じゃ無かった。
「あ、あれがウチの社長……大神唯桜」
この時代に生きる力無き者にとって、唯桜の姿は恐ろしくも有り、眩しくも有った。
唯桜のあまりに大それた行動にショーコの脚が震える。
しかし、同時に何だか解らない興奮で心も奮えていた。
唯桜の態度に衛兵が気色ばむ。
「物を頼んでおいて態度が違うんじゃねえか? 偉いのか何なのか知らねえが、客人を待たせるんじゃねえよ」
辺りは騒然となった。
衛兵が手にした槍を唯桜の胸元に突き付ける。
「下がれ貴様! 無礼だろう!」
しかし恫喝は唯桜に対して効果は無い。
「何が無礼だ。良いから早く呼んでこいよ」
衛兵はみるみる顔が真っ赤になる。
「貴様あ!」
衛兵の槍が唯桜の胸に突き刺さろうとした時。
「お止めなさい。何の騒ぎですか」
凛とした声が衛兵を制した。
唯桜は両手をポケットに突っ込んだまま声の主を見る。
そこには小綺麗な衣装に身を包んだ美人が、こちらを見据えて立っていた。
「少しは話が通じる奴なんだろうな」
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