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本編
当たりめえだろ特等席よ
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唯桜達は城門の外に集まっていた。
衛兵が城壁の外に出ろと、うるさかったからだ。
例によって唯桜がぶちギレそうになったが、キバが上手い事なだめてここに陣取ることにした。
ショーコは気丈にも、私もここに居ますと言って城壁の外に馬車を出し、近くの木に馬を繋いだ。
百人からの集団は焚き火をたいて、準備に余念が無い。
俺達全員で手柄をたてるのだ。そんな気迫に充ちている。
誰かが景気付けに酒を持ち出した。
酒盛りになるのに、そう時間はかからなかった。
「おい、お前達。飲みすぎるなよ、酔っちまったら死ぬぞ」
キバが全員に注意した。
しかし肝心の唯桜が、既に浴びるほど飲んでいた。キバが心配する。
「おいアンタ、大丈夫か?」
唯桜は全くの素面でキバを見た。
「あったりめえだろ。このくらいで酔うかよ」
唯桜はそう言って八杯目の酒を、一気にあおった。周りから歓声が上がる。
唯桜はキバに尋ねた。
「ロケット砲やらマシンガンは無いんだぜ。何でやる気になってんだ」
キバは含み笑いで唯桜を見る。
「そんなの決まっている。アンタが居るからさ」
傍でショーコが黙って聞いている。
ショーコもそれが知りたかった。
「素手でワーウルフを殴り殺すなんて、大陸でも聞いた事が無い。アンタが居れば皆の士気も違うしな。後は数で勝負さ」
キバはそう言ってまた笑った。
「そんな事で命懸けちまうのかよ。馬鹿だな、おめえら」
唯桜が言った。
自分が居るからといって、誰も死なない訳じゃ無い。むしろ何名も死ぬだろう。
誰が死のうが、唯桜は少しも興味が無い。
「別に良いんじゃねえか。誰もアンタに守ってくれなんて思ってねえよ。一緒に立ち向かってくれる仲間に、アンタみたいなのが居る事が必要なんだ」
キバはそう言って皆に、なあと言った。
その通り、と言う声がそこかしこから返ってくる。
こう言う馬鹿どもを、唯桜は嫌いじゃ無かった。出入り前の雰囲気を思い出す。
唯桜は立ち上がった。
「おいてめえら、準備は良いかよ」
おおっ! と一斉に声が返ってくる。
「武器はしっかり握ってろ。何なら手に巻き付けておけ。盾持ってる奴は居るか」
三割くらいの人数が手を上げる。
「よし、おめえらは前衛だ。隊列組んでがっちり脇を互いに固めろ。アイツらは馬鹿力だ、隙間があったら簡単に割られるぞ」
盾組が、おおっ! と言った。
「武器持ってる奴は、四、五人で組め。良いか、絶対バラけるなよ。一人になったら死ぬぞ。互いにバラにならねえ様に気を配れ、あぶれた奴はすぐ回収しろ」
今度は武器組が、おおっ! と言った。
キバは感心して唯桜を見上げていた。
何処かの兵団でも指揮していたのかと思う程だ。よほど集団での戦いに詳しい。
キバは内心、凄い人材を見つけたと思った。
「俺が先頭だ。片っ端からブチのめしてやる。俺が討ち漏らしたら、てめえらで囲んで袋叩きにしろ。遠慮は要らねえ、思いっきりブッ殺せ!」
一同の盛り上がりは最高潮に達していた。
たった百名が、うおおおおっ! と地を揺るがす程の雄叫びを上げた。
キバが唯桜に言う。
「おいアンタ、まさか一人で先頭切るつもりか」
唯桜は当たり前だろ、と言った。
「一番強え奴が後ろに居てどうすんだよ。一番強え奴は一番前だ。くくく、特等席だぜ」
唯桜は嬉しそうに笑った。
狂気にも似た笑いだったが、キバには頼もしく見えた。
「……ところで、アンタ武器はどうするんだ。もしかして、また素手かい」
キバが尋ねる。
仕方ねえや、俺は何も持ってねえよ、と唯桜は笑った。
キバは少し待っててくれ、と言うと城門の衛兵に何か無いか聞きに行った。
しばらくするとキバは戻ってきたが、手ぶらの上に怒っていた。
「何か武器は無いか、あれば槍の一つも貸してくれと言ったら、貸せる物など無い、石でも使えだとよ。そもそも誰の頼みで集まったと思ってやがるんだ」
キバは憤慨していた。
唯桜は辺りを見渡すと、すぐそこに落ちていた拳より一回り大きな石を拾い上げた。
「中々良いじゃねえか、コレ」
唯桜は石をポーンと放るとキャッチした。
「俺はコレで十分だ」
そう言ってニヤリとする唯桜を見て、キバは心底震えた。
衛兵が城壁の外に出ろと、うるさかったからだ。
例によって唯桜がぶちギレそうになったが、キバが上手い事なだめてここに陣取ることにした。
ショーコは気丈にも、私もここに居ますと言って城壁の外に馬車を出し、近くの木に馬を繋いだ。
百人からの集団は焚き火をたいて、準備に余念が無い。
俺達全員で手柄をたてるのだ。そんな気迫に充ちている。
誰かが景気付けに酒を持ち出した。
酒盛りになるのに、そう時間はかからなかった。
「おい、お前達。飲みすぎるなよ、酔っちまったら死ぬぞ」
キバが全員に注意した。
しかし肝心の唯桜が、既に浴びるほど飲んでいた。キバが心配する。
「おいアンタ、大丈夫か?」
唯桜は全くの素面でキバを見た。
「あったりめえだろ。このくらいで酔うかよ」
唯桜はそう言って八杯目の酒を、一気にあおった。周りから歓声が上がる。
唯桜はキバに尋ねた。
「ロケット砲やらマシンガンは無いんだぜ。何でやる気になってんだ」
キバは含み笑いで唯桜を見る。
「そんなの決まっている。アンタが居るからさ」
傍でショーコが黙って聞いている。
ショーコもそれが知りたかった。
「素手でワーウルフを殴り殺すなんて、大陸でも聞いた事が無い。アンタが居れば皆の士気も違うしな。後は数で勝負さ」
キバはそう言ってまた笑った。
「そんな事で命懸けちまうのかよ。馬鹿だな、おめえら」
唯桜が言った。
自分が居るからといって、誰も死なない訳じゃ無い。むしろ何名も死ぬだろう。
誰が死のうが、唯桜は少しも興味が無い。
「別に良いんじゃねえか。誰もアンタに守ってくれなんて思ってねえよ。一緒に立ち向かってくれる仲間に、アンタみたいなのが居る事が必要なんだ」
キバはそう言って皆に、なあと言った。
その通り、と言う声がそこかしこから返ってくる。
こう言う馬鹿どもを、唯桜は嫌いじゃ無かった。出入り前の雰囲気を思い出す。
唯桜は立ち上がった。
「おいてめえら、準備は良いかよ」
おおっ! と一斉に声が返ってくる。
「武器はしっかり握ってろ。何なら手に巻き付けておけ。盾持ってる奴は居るか」
三割くらいの人数が手を上げる。
「よし、おめえらは前衛だ。隊列組んでがっちり脇を互いに固めろ。アイツらは馬鹿力だ、隙間があったら簡単に割られるぞ」
盾組が、おおっ! と言った。
「武器持ってる奴は、四、五人で組め。良いか、絶対バラけるなよ。一人になったら死ぬぞ。互いにバラにならねえ様に気を配れ、あぶれた奴はすぐ回収しろ」
今度は武器組が、おおっ! と言った。
キバは感心して唯桜を見上げていた。
何処かの兵団でも指揮していたのかと思う程だ。よほど集団での戦いに詳しい。
キバは内心、凄い人材を見つけたと思った。
「俺が先頭だ。片っ端からブチのめしてやる。俺が討ち漏らしたら、てめえらで囲んで袋叩きにしろ。遠慮は要らねえ、思いっきりブッ殺せ!」
一同の盛り上がりは最高潮に達していた。
たった百名が、うおおおおっ! と地を揺るがす程の雄叫びを上げた。
キバが唯桜に言う。
「おいアンタ、まさか一人で先頭切るつもりか」
唯桜は当たり前だろ、と言った。
「一番強え奴が後ろに居てどうすんだよ。一番強え奴は一番前だ。くくく、特等席だぜ」
唯桜は嬉しそうに笑った。
狂気にも似た笑いだったが、キバには頼もしく見えた。
「……ところで、アンタ武器はどうするんだ。もしかして、また素手かい」
キバが尋ねる。
仕方ねえや、俺は何も持ってねえよ、と唯桜は笑った。
キバは少し待っててくれ、と言うと城門の衛兵に何か無いか聞きに行った。
しばらくするとキバは戻ってきたが、手ぶらの上に怒っていた。
「何か武器は無いか、あれば槍の一つも貸してくれと言ったら、貸せる物など無い、石でも使えだとよ。そもそも誰の頼みで集まったと思ってやがるんだ」
キバは憤慨していた。
唯桜は辺りを見渡すと、すぐそこに落ちていた拳より一回り大きな石を拾い上げた。
「中々良いじゃねえか、コレ」
唯桜は石をポーンと放るとキャッチした。
「俺はコレで十分だ」
そう言ってニヤリとする唯桜を見て、キバは心底震えた。
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