ドグラマ ―超科学犯罪組織 ヤゴスの三怪人―

小松菜

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本編

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「え、今から!?」

ヤーゴがすっとんきょうな声をあげた。

「当たり前だろ。明日は忙しくて出来ねえんだろ?  じゃあ今日しかねえじゃねえか」
「え、あ、いやしかし……」

ヤーゴはてき面に狼狽えた。
面白がって聞いていたものの、まさか今これから思い付きで強奪に行こうというのか。
やっぱりコイツら普通じゃなかった、と思ったが時既に遅しである。
情報を知っている自分は絶対に人数に加えられている筈だ。

「よおし!  んじゃヤーゴ、案内してくれや」

唯桜が威勢良く言った。
やっぱりか、とヤーゴはため息をついた。
言い出したら聞かないのはこの数日で解っている。
ヤーゴは仕方無く腹を括った。

御者席に乗り込むと手綱を握る。
美紅が続いて乗り込み、最後に牛嶋が乗り込んだ。

「牛嶋さんも?」

美紅が意外そうに言った。

「奴の厄介事を呼び込む才能に期待しての事とは言え、収集がつかなくなる程の厄介事では目も当てられまい」

牛嶋はそう言って美紅の向かいに腰を下ろした。

「それに手伝ってやれと言ったのは俺だからな」

牛嶋がそう言い終わるよりも先に馬車は走り出した。
美紅は変に牛嶋を意識しないように話を変える。

「作戦とかあんの?  どうせ無いんでしょ」
「なめてんのか。あるに決まってるだろ」

美紅の問い掛けに唯桜が胸を張る。

「まず現場についたらお前が例のガスで全員眠らせろ。そしたらブツを頂いてずらかるって訳だ」
「……棒みたいな作戦ね」

予想はしてたが予想通り過ぎて特に何の感慨も無かった。
むしろいつも通りの唯桜の作戦に美紅は妙に安心した。

「旦那は見張りを頼むぜ。俺と美紅でたんまりブツを運び出してくらあ」
「ちょっと、荷物運びも私がやるの?  見張りを片付けるのは私なんだから、後はアンタが自分でやんなさいよ」
「なんだよケチ臭いこと言うなよ。人手が要るかもしれないだろ?」
「知らないわよ。大体煙草が欲しいのはアンタでしょ。言い出しっぺもアンタでしょ。自分の事は自分でやる!」

美紅はそう言って腕組みをして足を組んだ。
これ以上話を聞かない時のサインである。
恐らく無意識であろうが、美紅がこの格好になるともう頑として話を聞かない。

唯桜は諦めた。

「……ち、解ったよ。一人で行けば良いんだろ、一人で行けば」

ふて腐れた唯桜が急に、おいヤーゴと声を掛けた。

「手伝いたいのは山々だが、俺は逃走用に馬車をスタンバイさせておかなきゃならねえ。無理だぜ」

先手を打ってヤーゴが答える。

「わかってるよ、そうじゃねえ。煙草はどのくらいの量があるんだ」
「さあねえ、俺も煙草を扱った事は無いんでね。取り敢えずここから一番近い、日帰りで行けそうな所はそう大きな拠点じゃねえな」
「なんだよ、この馬車一杯にはならねえのか?」

唯桜があからさまに肩を落とした。

「まあ今日の所はそれで良いじゃねえか。どうせ次もやるんだろ?」

ヤーゴがそう言った。

「やるのは簡単だが、そう何度もやってられねえ。早いとこ自分達で何とか生産出来るようにしねえとな」

いつに無く真面目な顔で唯桜が答えた。

「……アンタついに煙草の製造まで視野に入れ始めたの?」

美紅が驚いた様な呆れた様な顔で唯桜を見た。

「当たり前だろ。他に方法が無いんなら作るしかあるめえ。大丈夫だ、作り方は知ってる」

大丈夫と言われても美紅は別に作り方の心配などしていない。

「それに、こっちじゃ向こうよりも金になりそうだしな。まさか俺も煙草の利権を手にする日が来ようとはな」

唯桜がニヤニヤしだした。

「大神煙草、……OTか。悪くねえな」

密売しようと言うのに社名を考えている。
美紅はまともに付き合わない事にした。

「そんなにしてまで吸いたい物かしら」

そもそも、なんで煙草の製造方法まで知ってるのかと突っ込みたかった。
だが聞けば得意になって話始めるであろう事が容易に想像できる。
そう想像して、美紅は面倒くさいのは御免だと突っ込むのをやめた。
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