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プロローグ
しおりを挟むその夜
「すごい突き…うまいわ」
「そっちこそ…締めつけてきやがって…だが、俺のマグナムはこんなもんじゃくたばらねぇ!!」
「お前らもう少し静かにやってくんね?」
俺は大乱闘スマイルブラザーズ(格ゲー)をしている二人に言った。
*
「あー疲れた…腹へった」
三時限目の体育が終わりグラウンドの隅にある水道で、俺、時田白兔は親友の山口空斗と水を頭から被っていた。
「それにしても五千メートル走はないよなぁ…さすがの俺もキツかったぜ」
「お前初っ端とばしすぎて後半女子にも抜かされてたもんな」
「うっせー男は最初が肝心なんだよ。最初良ければ全て良しって言うだろーがよ」
「言わねーよ。人としてどーなんだよそれ」
俺は盛大に溜め息をついた。こいつほんとに高校生なんだろうか…
「でもシロウだってバテバテで全然前に進んでなかったじゃねーか。兎が跳ねてるって女子笑ってたぞ」
「ああ…聞こえてたよ」
俺の名前は白い兎でシロウと読むのだがその珍しい宛字と低い身長により周りからはよく兎扱いされいじられることが多かった。
しかもインドアの生活による真っ白の肌も兎を連想させる要素のひとつのようで高校二年になった今でも兎いじりはなくなっていない。
まぁ俺もそこまで嫌というわけでもないので軽く受け流しているのだが。
「ほんと昔から変わらねぇよなシロウは…初めてお前に会ったとき泣いてて目は赤いし肌は白いしでほんとに人間の形した兎だと思ったもん」
「いやお前も昔から変わってねぇって」
空斗と初めて会った時のことは覚えている。
俺はあの日駄菓子屋で買ったアイスを一口も食えないで落としてしまいメソメソ泣いていた。
十歳に満たない幼い子供だったのだから仕方ないだろう。
そこに駄菓子屋から出てきた空斗が俺を見るなり
「半分、やるよ」
と言ってパピコをくれたのだった。
まぁ半分といっても、食うときに外す上の部分だけだったのだが。
その後パピコの争奪で喧嘩になったのは言うまでもない。
「いや~俺は昔から優しかったからなぁ。アイス落として泣いてるシロウにパピコ全部あげて、しかもポケットにあったキャラメルまであげたんだもんな」
どうやらこいつの思い出は自分の都合のいいように書き換えられているらしい。
あと、キャラメルをあげたのは俺だ。
パピコは結局半分すら食えなかったし。
「あの日のことは覚えてんだけどなぁ…」
そう言って俺は春にしては強い日差しの空を見上げた。
空斗も黙って見上げた。
雲はなく、ただ深い蒼色が広がっていた。
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