キミトナリ

七星

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第4話 星川黒音

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「くっついた…ってどーゆーことですか?」

「そのままの意味よ。あなた達の手、何か不思議な力でくっついて離れなくなってるみたいなの」

カマ先生の話によると、この黒音という女の子が気を失った俺をここまで引きずってきたらしい。
保健室は階段のすぐ近くにあるので、細身の彼女でも俺を移動させることができたのだろう。

その後はカマ先生が俺をベッドまで運び、その隣に黒音も座って俺が目を覚ますのを待っていたのだが、疲れたのかそのまま眠ってしまったという。

しかし、気になるのは…

「えーと…なんでこんなことになったんですかね…」

「そんなの知らないわよ。黒音ちゃんに聞きなさい。私が見たときにはすでにこの状態だったんだから」

ということで黒音に向き直る。

「説明してくれると嬉しいんだけど…」

「うん」

黒音は素直に頷いた。

しばしの沈黙。

「…………」

「…………」

時計の秒針の乾いた音が、無音の保健室に響く。

「……………………」

「……………………」

耐えきれなくなって俺の方から口を開いた。

「あの~黒音さん?」

「うん」

「いや、うんじゃなくて」

「タケシ」

「いやタケシでもなくて」

「タロウ?」

「俺シロウだから!」

「あなたじゃないわ」

「じゃあ誰なんだよ!」

「先生の犬」

カマ先生を見る。

「光源氏よ」

「ケバいっすね!てか今それ関係なくね?」

黒音はゆっくりと目を閉じた。
そして、開く。

「話がずれてる」

「お前のせいだろぉぉぉ」

いかん。俺はとんでもない天然ボケ大魔人に会ってしまったようだ。
世紀末のバカ男爵である空斗といい勝負だ。

と、黒音は何かを思い出したように、姿勢を正して

「私を助けてくれてありがとう」

そう言って深々とお辞儀をした。

「あ…ああ、いや別に、急に倒れてきたから反射的にね…」

「あなたのおかげで私は無傷でいられた。命の恩人ね」

「そんな…大袈裟だよ」

「確かにそうね」

「あっさりしてんな!」

黒音は俺と繋いでいる手を持ち上げて言った。

「これ、私があなたと一緒に階段から落ちて起き上がったら、くっついてたの」

やっと説明らしきものをしてくれたが、結局くっついた理由はわからない。
俺は空いている左手で頬をつねる。
痛い、夢じゃない。

頬をさする俺を見ていた黒音は、いきなり手を伸ばして俺の右頬をつねった。

「いだだだだだだだ!」

「どうやら夢じゃないみたい」

「自分のでやってくんない?!」

カマ先生がふふっと笑う。

「とりあえずお互い自己紹介したら?あなた達これからは赤の他人ではいられなさそうだし」

そう言われてまだ本人から名前を教えてもらっていないことに気づく。

「それもそうですね…えっと、俺の名前は時田白兎。2年B組だ」

「白兎ちゃんの名前ね、白い兎って書くのよ。可愛いわよねぇ」

カマ先生が余計な説明を入れてくる。
ま、お決まりのパターンなんだけどさ。

「兎…」

そう呟いて俺の顔をじっと見る。
俺はなんとなく気まずくて目をそらす。

「目が真っ赤ね」

「まぁ、さっき泣いたからな」

自分で言って恥ずかしくなる。
うわ…思い出すと発狂してしまいそうだ。

「まるであの兔そっくりね、私本物の兔って見たことないけれど」

「いやじゃあどの兎だよ?!」

その時、ほんの少しだけ、黒音が笑ったような気がした。

思わず目が釘付けになる。

「星川黒音。2年生よ」

そう言った黒音はさっきまでの無表情に戻っていた。
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