キミトナリ

七星

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第10話 風呂

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結局俺は黒音と風呂に入ることを承諾した。

しかしさすがに年頃の男女二人で風呂ってのはどうもな…。

俺が未だに葛藤しているのを見て、美佐子姉が

「ほら、目隠ししておけば大丈夫でしょ?」

と言って笑顔でタオルを渡してくれた。
そしてさらに念のため見張りをつけようということになり、美々と美兎が抜擢された。

しかし、この時点で俺は見抜くべきだったのだ。
美佐子姉の残酷な策略を。


脱衣所で俺が目隠しをセッティングしたのを確認してから、美兎達は服を脱ぎ始めた。

…という状況になってやっと俺は気づいた。

―――この目隠し、うっすらと周りが見えてるんですけど…

急いで目隠しを変えてもらおうとしたときには、すでに三人はバスタオル一枚の格好だった。

それを言い出すタイミングを完全に失い、俺はそのまま服を脱いで、腰にバスタオル一枚を巻いて風呂場に突入する羽目になった。

とりあえずバレたら殺されると思った俺は、なるべく目をつぶり、目隠しで周りが見えていないふりを全力で頑張った。

案外気づかれないもので、体を洗って風呂に入るところまでは何も起こらずに済んだ。

だが、悲劇はここから始まった。

「シロウ」

目をつぶりながら風呂に入っていた俺はその声の方に顔を向ける。

「ん?なんだ?その声は黒音か」

そう、と言って

「もう少しこっちに来て。離れすぎると危ない」

「お…おう…」

確かに何度も息が止まるのは勘弁してほしい。

そう思った俺は素直に黒音の方に移動する。

「あんた…ほんとに見えてないんだよね?」

思ってたより近いところから美兎の声が聞こえてきてビクッとなる。

「いや見えてねぇよ?目隠しちゃんとしてるし」

「でもさっきからなんか動きがスムーズな気がするんだけど」

「そ…そりゃまぁ使い慣れてる風呂だしな!なんとなくだけど分かるんだよ」

美兎の鋭い洞察力にビビりながらも、なんとかうまい言い訳を絞り出す。
ヤバイな…これは早めに引き上げなきゃバレる。

「別に見えてても見えてなくてもいいじゃーん。美々、お兄ちゃんと久しぶりにお風呂入れて嬉しいもん!」

美々よ、ナイスフォローだ。

「でもさ~コイツ変態じゃん?」

「お前最近なにかと俺を変態呼ばわりするよな…」

正直、なんでそう思われてるのか予想もつかない。

「だって、この前アンタの机の上に【姉妹との禁断の関係】ってゆー如何わしい本が置いてあったの見たんだもん」

「まじかぁぁぁぁあぁぁあぁ!!」

違う、あれは空斗の私物でこの前遊びに来たときにわざと置いていきやがったやつで断じて俺の趣味とかじゃないし読んでないし

「シロウ」

「いやそれは誤解でっ…」

動揺していた俺は目をつぶるのも忘れて黒音に弁解しようとした。

突然黒音がVサインを出す。

「この指何本?」

「は?いや二本じゃね?」

普通に答える俺。

「おおー!お兄ちゃん見えてなくても分かるんだ!すごい!超能力?」

美々に言われて自分の失態に気づく。

「…………」

美兎から感じる物凄い殺気。

「ふーん…」

あ、ヤバイやつだこれ。

「いやその…これは故意ではなく…」

「死ねぇぇぇぇ!!」

こうして、現役テニス部の妹のフルスイングビンタが、俺の左頬に炸裂したのだった。



風呂から上がった俺は、見事に腫れ上がった頬に冷えピタを貼って、溜め息をついた。
厄日だな…今日は。

黒音がそんな俺を見て言った。

「楽しかったわね」

「その感想は絶対おかしい!!」

美兎は既に自分の部屋に戻っている。
しかし…あれは相当怒ってたな…これで完全に嫌われたな、俺。
リビングでは、早速美々が今の出来事を美佐子姉達に楽しそうに話している。

もう…今日は早く寝よう。

「シロウ、私はどこで寝ればいいの?」

黒音がタオルで髪を拭きながら聞いてくる。
ふわりと香るシャンプーの匂い。

…なんだこれ、俺と同じシャンプー使ってるはずなのに、なんでこんなにいい匂いするんだ。

「あー、そーいえばそーだな…俺はできれば自分の部屋で寝たいんだが…」

また何かとうるさく言われそうだしなぁ…。

そこに美佐子姉が来て、

「さっきはごめんなさいねシロちゃん。ちょっとからかうだけのつもりだったんだけど…まさか美兔があんなに怒るとは思わなかったから」

「いや…すぐに気づいてタオル替えなかった俺も悪いさ…」

一ミリくらいラッキーと思わなくもなかったし。

「まぁそれは置いといて、黒音の寝る場所なんだけど…」

「ん~そうねぇ、シロちゃんの部屋でいいんじゃないかしら」

「え…」

予想外の返答。

「…俺が自分で言うのもなんだけど…いいの?」

すると、美佐子姉は微笑んで言った。

「私は、シロちゃんが黒音ちゃんに変なことをする人じゃないことくらい、ちゃ~んと分かってるつもりよ?」

「美佐子姉…」

俺はどうやら美佐子姉のことを勘違いしていたみたいだ。
こんなにも俺のことを信用してくれてたなんて…。
不覚にも泣きそうになる。

「美佐子姉っ…俺は…俺は―――」

「それに美々の話によると、シロちゃんは妹にしか欲情できない重度のシスコンらしいし、黒音ちゃんは妹じゃないから安心よねぇ~」

そう付け加えて悠々と立ち去っていく。

思考が停止する。


数秒後、

「あいつ話盛りすぎだろぉぉぉぉ!!!!」

俺は深い絶望に襲われて頭を抱えた。

「落ち込まないで、シロウ」

しゃがみこんだ俺に慰めの言葉をかけてくる黒音。

「私も頑張って妹になるから」

「なれるわけねぇだろ!! ってかそこじゃねぇぇぇぇ!!!!」


燃え尽きた俺はその後、女の子と二人きりで寝るというシチュエーションに興奮することなく、とても安らかな眠りについたのだった…。





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