キミトナリ

七星

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第9話 苦労

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結局その後、美佐子姉達には今の状態を根気強く説明して、納得させることができた。

で、問題はその次である。

俺達はなんだかんだで夕食に赤飯を食わされた後、テレビを見ていた。
しばらくして、隣にいた黒音が

「シロウ」

と俺に呼びかけてきた。

「なんだよ?」

「トイレ」

は?と聞き返す。

「トイレ行きたい」

少し大きめの声で黒音は言い直した。

姉妹達が一斉にこっちを見る。

「あ…ああ…トイレね」

俺は立ち上がって黒音をトイレに連れていこうとした。


―――背中に視線


「いや、手が繋がってるわけじゃないし俺が行くのはトイレのドアの前までだからな?」

「別にあたし達何も言ってないけど?」

美兎が無表情で言った。

…なんか怖いんですよね、目が。

さりげなく早足で黒音を連れてリビングを出る。

「そんなに急がなくてもいいのに」

「いや…急がねば俺が危ない」


黒音がトイレから出たあと、俺もついでに用を足して速やかにリビングに戻った。

すると、美佐子姉が俺達が戻ってきたのを見るなり

「さて、じゃあお風呂入れましょっか!」

と、どことなく嬉しそうに言った。

風呂か…

「おー?白兎と黒音、風呂はどーすんだ?」

宇佐美姉がニヤニヤしながら聞いてくる。

「いや…どーするって言われても…」

俺は返事に困って黒音を見る。

「私、お風呂入りたい」

何の迷いもなく黒音は言い切った。

「いやでもな…この状況だぞ?つまりそれは俺と一緒にってことになるわけで…」

我が家の風呂場は、なんというか立派だ。
入口から風呂まで三メートル以上は離れているような大浴場だ。
一家そろって風呂好きなのだから当然ではあるのだが…

そのせいでトイレと同じように外で待ってる、ということはできない。

「お兄ちゃん達、ほんとに一緒に入るの?」

美々が食いついてくる。

「うーん…シャワーだけならなんとか外で待ってることはできそうだし…そうしないか?」

俺は美々を無視して黒音に聞いてみた。

「嫌」

「よし、そーしよ…え、なんで?!」

思わず二度見する。

「ちょ…黒音さん?あの、話聞いてた?そーなると俺も一緒に入ることになるんだけど」

「私は気にしない」

「いや気にして!てかむしろ俺が気にすんだよ!」

姉妹達に必死で『俺がそんなに黒音と風呂に入りたいわけがない』アピールをする。
しかし、四人(特に美兎)の視線がとても痛い。

「お風呂がいい。今日は寒いもの」

「いやでも…」

「シロウは…私と一緒じゃ…嫌?」


少し寂しそうに上目使いでそう言った黒音に、俺はそれ以上反対することができなかった。





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