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第8話 ぬか喜び
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「お…おおー!とれた!とれたぞぉぉぉ!!」
俺は自由になった右手を握ったり開いたりしてみる。
異常はないようだ。
隣を見ると、黒音も同じように自分の左手が正常か確かめている。
それにしても、
「なんか…あっけなかったな」
俺と黒音の手がくっついてしまうというこの奇妙な事件がこんなにも早く解決してしまうとは思わなかった。
「やっぱりこれ、アニキが黒音さんを家に連れ込むための嘘だったんじゃないの?」
美兎が訝しげに俺を見て言う。
「違う!さっきまでは本当に離れなかったんだ。カマ先生にも確かめてもらったんだぞ」
だが、そう言う俺もなんだか気のせいだったのではないかと思えてきた。
「まぁ、でもよかったじゃん解決して!もしもそのまま二人が離れなかったらお風呂とかトイレとかいろいろ大変になってたもんね!」
美々に言われて俺も離れなかった場合のことを考えてみる。
…あれ、もしかして俺はかなり惜しいことしてしまったんじゃ…
頭を振って沸き上がる邪念を追い払う。
いいんだ、これで。
「私、これでここにいる理由はなくなったわ」
黒音が静かに立ち上がる。
「帰るわね」
その言葉を聞いて、少し寂しいと感じたのは、きっと気のせいだろう。
まだ邪念が残っているようだ。
「ああ、じゃあ家まで送るよ」
俺は平然を装い、リビングのドアを開けようと黒音から離れたその瞬間
呼吸が、できなくなった。
「?!」
思わず後ずさり、そのまま尻餅をついた。
すると、さっきの真空状態が嘘だったかのように、肺にたっぷり空気が入ってきた。
思わず噎せかえる。
そして隣で黒音もなぜか同じように咳き込んでいた。
「なんだ今のは…?」
「お兄ちゃんと黒音さんどしたの?二人して咳き込んで」
美々が駆け寄ってくる。
「なんか…今一瞬息できなくなって…」
それを聞いた黒音がピクリと反応する。
「シロウも?」
「え…うん、てか黒音も?」
嫌な予感がする。
まさかこれもさっきまで手が離れなくなってたことと何か関係が…?
「何、どーゆーこと?」
美兎が腕を組み直して聞いてくる。
「今…俺が黒音から離れようとした瞬間、なんか周りの酸素がなくなったみたいに突然息ができなくなって…」
そこで黒音が立ち上がった。
「シロウ、そこにいて」
そう言うとゆっくりと後ろ歩きで俺から離れていく。
すると、黒音と俺の距離が一メートルを越えた辺りで、さっきと同じように呼吸ができなくなった。
即座に黒音は後ろ歩きをやめ、俺の方に寄ってきた。
「まじか…こんなことってあるか?…」
そこで、しびれを切らした美々が
「お兄ちゃん達さっきから何言ってるか全然わかんない!つまりどーゆーことなの?」
と聞いてきた。
「私達」
黒音が口を開く。
「もうこれ以上離れられない」
「…………」
沈黙。
俺の肩を美佐子姉がポンと叩く。
「やっぱり今日はお赤飯ねぇ」
「いやだから誤解招く言い方すんじゃねぇぇ!!」
俺のシャウトが夜の町に虚しく響いた。
俺は自由になった右手を握ったり開いたりしてみる。
異常はないようだ。
隣を見ると、黒音も同じように自分の左手が正常か確かめている。
それにしても、
「なんか…あっけなかったな」
俺と黒音の手がくっついてしまうというこの奇妙な事件がこんなにも早く解決してしまうとは思わなかった。
「やっぱりこれ、アニキが黒音さんを家に連れ込むための嘘だったんじゃないの?」
美兎が訝しげに俺を見て言う。
「違う!さっきまでは本当に離れなかったんだ。カマ先生にも確かめてもらったんだぞ」
だが、そう言う俺もなんだか気のせいだったのではないかと思えてきた。
「まぁ、でもよかったじゃん解決して!もしもそのまま二人が離れなかったらお風呂とかトイレとかいろいろ大変になってたもんね!」
美々に言われて俺も離れなかった場合のことを考えてみる。
…あれ、もしかして俺はかなり惜しいことしてしまったんじゃ…
頭を振って沸き上がる邪念を追い払う。
いいんだ、これで。
「私、これでここにいる理由はなくなったわ」
黒音が静かに立ち上がる。
「帰るわね」
その言葉を聞いて、少し寂しいと感じたのは、きっと気のせいだろう。
まだ邪念が残っているようだ。
「ああ、じゃあ家まで送るよ」
俺は平然を装い、リビングのドアを開けようと黒音から離れたその瞬間
呼吸が、できなくなった。
「?!」
思わず後ずさり、そのまま尻餅をついた。
すると、さっきの真空状態が嘘だったかのように、肺にたっぷり空気が入ってきた。
思わず噎せかえる。
そして隣で黒音もなぜか同じように咳き込んでいた。
「なんだ今のは…?」
「お兄ちゃんと黒音さんどしたの?二人して咳き込んで」
美々が駆け寄ってくる。
「なんか…今一瞬息できなくなって…」
それを聞いた黒音がピクリと反応する。
「シロウも?」
「え…うん、てか黒音も?」
嫌な予感がする。
まさかこれもさっきまで手が離れなくなってたことと何か関係が…?
「何、どーゆーこと?」
美兎が腕を組み直して聞いてくる。
「今…俺が黒音から離れようとした瞬間、なんか周りの酸素がなくなったみたいに突然息ができなくなって…」
そこで黒音が立ち上がった。
「シロウ、そこにいて」
そう言うとゆっくりと後ろ歩きで俺から離れていく。
すると、黒音と俺の距離が一メートルを越えた辺りで、さっきと同じように呼吸ができなくなった。
即座に黒音は後ろ歩きをやめ、俺の方に寄ってきた。
「まじか…こんなことってあるか?…」
そこで、しびれを切らした美々が
「お兄ちゃん達さっきから何言ってるか全然わかんない!つまりどーゆーことなの?」
と聞いてきた。
「私達」
黒音が口を開く。
「もうこれ以上離れられない」
「…………」
沈黙。
俺の肩を美佐子姉がポンと叩く。
「やっぱり今日はお赤飯ねぇ」
「いやだから誤解招く言い方すんじゃねぇぇ!!」
俺のシャウトが夜の町に虚しく響いた。
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