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5章

集った変態と強者たちの作戦会議4

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 急いで現場調査から戻ってきた3人と光と勇多が話し合いをしている。
 それを眺めながら、昇華は自分の影にいるルーファスを見た。
(ねぇ、影の中に入れてくれない?今はちょっと一人になりたいの…)
(かまわん…来い)
 ドプンッと足元からそのまま真っ黒い世界に落ちた。頭上では水たまりサイズの光が6つ輝いている。その薄い灯に背を向けて昇華はしゃがみこんだ。
「…ルーファスは屋根の上の人物を見た?」
「いや、人間がいたということしか確認できていないが…」
「あのね、さっき事件が起きたお弁当屋さんの屋根の上に、知り合いがいかにも黒幕です。って感じでこっちをみてたの…」
(気になっている異性だったなんて言えないわ…)

 誰かに言っていいのか、それとも彼の為に黙るべきか、命を狙ってきているのが彼ならもしかしたら最初からそれ目的で近づいてきたのか。
 昇華の心の中はグルグルとした感情で渦巻いた。

 彼女の周りを真っ黒な魔力が零れ、包み、靄のような真っ黒い霧が発生していく。それを心地よさそうに、それでいて彼女の様子を見ながらルーファスは飲み込んでいく。

 どれくらいそうしていたのか、悩む昇華にルーファスが声をかけた。
「我は言うべきだと思うぞ。あいつが前世の記憶に操られている可能性を推してやろう。貴方と会ったのは、ここ数か月おかしくなる前のことのはずだ。元からそのつもりだったというよりは、貴方や勇多のように前世にひきずられているのではないか?」
 ハッと昇華は顔を上げた。
(そうだ、委員長とあったのはもっと前。勇多みたいになっているかも!!)
 自分の命と恋を天秤にかけていた肩の力が抜けて、へたり込んだ。黒い色の魔力の放出も少し収まる。
「そっか、それなら…うん。」
「うむ、元気が出たようだな。」
「…また心を読まないでよって言いたいけど、今回は救われたわ。ありがとう!!じゃあ、暗い影から出て皆に話さなきゃ!」
 ソッと昇華は立ち上がり、影から出ようとした。
「ならぬ、せっかく来たのだ。もう少しここにおれ。」
「え?」

 阻止された。
 黒い闇の怪物と化したものが大きな口を開けて、昨日ぶりに彼女を飲み込もうと迫ってくる。

「うわ、ちょっ…食べないでったらー!!」

 先ほどの集団記憶喪失事件の時の黒い靄のような魔力が消えるまで、昇華はルーファスにもぐもぐされた。



 しばらくしてぺチョッと吐き出され、ぐったりした昇華はうつぶせに倒れている。

「向こうの話し合いも終わっていないようだな。行くと良い。」
 触手を使って、お食事の終わった満足そうな奴が昇華を持ち上げて影から出した。


「あ、しょーちゃん。おかえり!!魔力食べて貰ったんだね、良かったぁ」
「あら、落ち着いたの昇華。おかえり」
「た、ただいま…いや、何その受け入れ方!?こんなぐっしょり濡れた私をみてそれしかないの!?」
 勢いよく起き上がった昇華がさっそくツッコミを返す。
 真咲達3人が戻ってきた時も、一言も発さなかった先ほどの様子と変わって元気そうだ。
 そんな彼女を見て、真咲と優香はこっそり安心していた。
「えーだって、恩方にあった後って大体こんな感じでしょ?もぐもぐされたんだよねぇ?」
 真咲は可愛らしく首を傾げる。優香も同意するように頷く。
「しかも今世は契約したみたいだし、影の中で直接会うときはこうなることを毎回覚悟した方が良いわね。」
「え、え、あいつと直接会うときは今後ずっとこうなるの!?嘘でしょ!?」
 悲鳴に近い声を上げる昇華を見て笑いながら、2人の友人は彼女の身づくろいを手伝った。


 昇華が落ち着いた頃に、光が話しかけてくる。
「もう大丈夫か?びっくりしたよな、あれはお前のせいじゃないからな。気にしなくていいから…」
「そのことだけど、あのね―」

 昇華はお弁当屋さんの屋根の上に委員長と呼んでいた知り合いがいることを話した。昇華のその知り合いという男の特徴を聞き、同じ学校の4人の顔が険しくなった。別の高校の光は首を傾げている。
「どういうことだ?図書館の受付といえば目立たない地味男ってあだ名付けられた奴だろ?」
「えぇ?すごいイケメンで女子に人気の人でしょ?あたしは図書館なんか行きたくないから詳しくは知らないけどさ…」
「そもそも私は図書館の受付の人を見たことなかったなぁ…」
「僕とまーちゃんが一緒の時にあったことがそういえばなかったね。僕も彼のことを上手く思い出せないな。」
 勇多が、優香が、真咲も紫苑も言っていることが食い違っている。昇華以外は図書館の受付の彼を委員長と呼んでいなかったことも変だ。

「あんなにも色んな人に頼りにされていた人なのに…なんでこんなに印象が違うの?」
「逆だろう…昇華の目にはそう映っていただけで、本来の彼を見れた人間はいないじゃないか。純粋に強い真咲さんと魔導に強い紫苑さんは相乗効果で本来の彼を見てしまうからこそ認識を阻害を受けていた可能性がある。優香さんの印象は人から聞いたもので、実際にはわからなくされていたのだろう。あ、ただ昇華のように魔力がそう影響を出していて、人に本当の姿をみられたくないとかその図書館の受付さんが思っていた可能性もある…と思う」

 どんどん落ち込んだ昇華の様子を見て、光は慌てて言い直した。
「ただ、その委員長さん?が関係あることはわかった。本部に連絡をとってみよう。そこでもしかしたらその委員長が大沢真か確認してくれるだろう。」
「わかったわ…」
 肩を落とした昇華は、静かに頷いた。
(まさかとは思ってたけどやっぱり委員長が関係あったんだ…そういえば、委員長の約束を待っていたら勇多に襲われたわね…それに…)
 どこかに電話をかけようとしていた光を見る。
「あんたと最初に会ったのも、図書館だったものね…」
「あ、そうだな…そういえば大沢真を探して昇華に会ったな…」
 また落ち込みだした昇華を見て、言葉をかけてくれる友人たちの方をみる。
(どんな結果が待っているかはわからない…でも、もう光と会った頃の私じゃない。だから、だから本当の委員長がどんな人でも知りたい。逃げずに話をしてみないな。)
 もう彼女は恐怖に飲み込まれてしまうことは無かった。
 昇華の手の中で赤い光が一瞬だけ輝く。

昇華たちはそこから三日間、学校を休むことになった。
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