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1章

第3話 開幕

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
式典記念講堂しきてんきねんこうどう

講堂にキャロルが入ると座席はまだかなり空いていた。
新入生120人、全員そろっても満員にはならなそうだ。十分に席数がある。
ノアとミックの声がギリギリ聞こえるぐらいの位置を見つけて座るキャロル。
キャロル『盗み聞きじゃないわ。聞こえてくるの・・・・・・』
もう一人の自分に言い訳する。

????「よう!お前ノアだろ、知ってるぜ」
ノア「あ・・・・・・」
ミック「誰だよお前っー!」
張り出してきたミックを邪魔だとばかりに押し戻すノア。

ノア「初等学校の剣術交流会の時か・・・・・・?」
????「そうだ!覚えててくれたか!」「お前強かったな!」「直接戦え無かったのが残念だったが・・・・・・」
ノア「まだまだ、だよ・・・・・・」『早く兄さんに追いつかないと・・・・・・』

ミック「それでお前は誰なんだよ!?」
????「お前に名乗る名はない」「俺はあくまで騎士道を究めにここに来ている」「へっぽことなれ合うつもりはない」
ミック「なんだとー!」
ノア「2人とも、入学初日で喧嘩けんかすんな」
なだめ諭すノア。
ミックの左隣りに座るテルは様子見し、空気になっている。

ミック「へんっ!いいもんね~、俺だって名前教えてやんないからな~」
????「知りたくもない」
ノア『はぁ・・・・・・名札付けてるだろ・・・・・・』『初日でこれとは思いやられる・・・・・・』
2人に仲良くしてほしいノア。

左に座るミックに小声で耳打ち。
ノア「こいつはグレイン。グレイン・バッシュ・クロフォードだ」
ミック「ふんっ!」
右に座るグレインに小声で耳打ち。
ノア「こいつはミック。ミック・マイアス・ミノーグだ」
グレイン「フンっ!」

キャロル『うわ、面倒くさ・・・・・・』
セリア「キャロルちゃん隣空いてる?」
キャロル「あ、セリアちゃん!空いてるよ~!」『やば、セリアちゃんのこと完全に忘れてた・・・・・・』
キャロルがこんこんと叩いた座席にセリアが座る。
キャロル「セリアちゃんの部屋をノックした時、いなかったから先に来てたのかと思ったよ~」
セリア『ギクッ・・・・・・どうしようなんていえば・・・・・・』「え~と、うん、ちょっとね・・・・・・」
適当な言い訳を考えて来なかったことを後悔するセリア。

キャロル「あ、セリアちゃん!あの子誰か知ってる?」
セリア『話題がそれて良かった・・・・・・』「どの子?」
キャロル「あの今入ってきた金髪の・・・・・・」
金色・中長髪セミロング濃い赤紫ラズベリー色の瞳。小柄な身体からほとばしる輝くオーラ。
一応目をこすってみたが、その輝きは消えない。
周りも少しざわめく。
近くに座るかと思ったが、講堂の反対側の方にその子は座った。
セリア「誰だろう・・・・・・可愛い子・・・・・・」

すると後ろの席から回答が聞こえてくる
???「あの子はカーリンさまね」「カーリン・リー・フランツィスカ・ローゼンフェルドさま」
??「さま?」「もしかして、貴族かなんか??」
???「リーってミドルネームあるでしょ。国王さまの」
??「あ~、ドミニク・キャット・リー=フィンレー?」
???「それ」「そのリーっていうのは現王室の親戚のみが名乗っていい名前なの」
??「へぇー、知らなかった~」

キャロル/セリア『そうなんだー、知らなかった~』
勝手に知識を深める2人。
??「さすがマーナちゃん情報通だね!」
マーナ「これぐらいは、常識の範囲でしょっ」「エルも調べればわかるって!」
エル「調べないって!」

キャロル「やっぱり、本物は違うな~」「住んでる世界が違う気がする・・・・・・」
セリア「そうだね~」
キャロル「庶民どうしこれからも仲良くしましょ♪」
そう言って、セリアの手を握りしめるキャロル。
セリア「う、う~ん・・・・・・(困惑)」

そのうちに教員も入場し、入学式が始まる。
????「新入生の皆さん、こんにちわ。本日の司会進行を務めるダニエル・ロッシ・ミューヴィセンです」
標準的な背格好で、癖のないやや長めの白橡色しろつるばみいろの髪。ハーフリムの銀縁メガネをかけている男性教師ダニエル。
司会者演壇えんだんで入学式の進行をり仕切る。
ダニエル「ご入学おめでとうございます」

?????「すっいませ~ん!」
遅れてきたひとりの若い女性教師が慌てて中央演壇横の講師席に滑り込む。
小声で詫びる女性教師。
周りのベテラン教師に小言を言われているように見える。

ダニエル「えー、では次に学院長の挨拶」「デッジ・ハメスファール・ニャータ先生宜しくお願い致します。」
ざわつく一同。
キャロルが廊下ですれ違った着ぐるみのやばいやつが立ち上がる。
そして、壇上に立つ。
ニャータ「えー、皆さんこんにちは」「私が学院長のニャータです」
キャロル『着ぐるみさん・・・・・・学院長だったの・・・・・・』
新入生一同『こいつが校長?!』『入る学校間違えたか・・・・・・』
ニャータ「皆さんの門出を祝い、この格好で来ました」
新入生『え?なにこれ、祝われてんの?』『呪われてるとしか思えねぇ・・・・・・』
ニャータ「えー、ですが、熱さが限界なので、脱ぎます」
新入生『最後まで貫徹する気もないのか・・・・・・』

そういうと背中のチャックを開けようとするが、手が届かない・・・・・・。
ニャータ「あ、あれ・・・・・・、あれ、うん-ん?」
新入生『・・・・・・(困惑)』
ニャータ「えっと、ダニエル先生手伝ってちょ・・・・・・」
ダニエルは無言でチャックを解放する。
ニャータ「ふぅ・・・・・・」「出れないかと思って、焦ったよ~」
ゼェゼェしながら汗を拭う学院長。
着ぐるみの中身は初老の男性。
細見で完全な白髪・長髪、オーバル眼鏡かける教師だった。
新入生『なんだこの茶番・・・・・・』『転校を検討するレベル』

ニャータ「あ、着ぐるみの中に入っていたのは実はおじいちゃんでした~!」「な~んつって!」
新入生「・・・・・・(イラつき)」『何がしたいんだこいつ??』
キャロル『あはははっーーー』
ひとりだけウケるキャロル。
セリア「・・・・・・」
ニャータ「おっほん、では、気を取り直して・・・・・・、新入生の皆さん入学おめでとうございます!」「以上です!」
新入生『え、それだけ?!』『出てこない方が良かったんじゃね?』

ダニエル「え・・・・・・、学院長のお話しでした。」「とても、いいお話でしたね」
笑顔で述べる。
新入生『どこが!?』『原稿を強行したな・・・・・・』

ダニエル「次は・・・・・・」

「カチッ、バチ、バチ!」
突然切断音。
会場の明かりが次々に消える。

新入生A「え、なに?!」
新入生B「どうした?」
新入生C「こんどは何?!」
ダニエル「・・・・・・なんだ?」
ニャータ「どうしたんじゃ!?」
どうやら、学校側の意図でもないらしい。

「カラカラカラカラカラカラ、コンッ!」
真っ暗闇の中、何かが転がりぶつかる音。
と同時に壇上の中空に何かが浮かぶ。
2、3秒後パッと強烈に光り、何者かの顔が投影される。
モノクロチェック柄の仮面を被っている人物。表情は見えない。
新入生D『え、何?』
新入生E『誰??』

?????「ウェルウィッチアに入学の諸君、ご機嫌いかかがかな?」
誰に許可された訳でもなくその人物は語り始める。
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