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2章

第13話 片鱗

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
剣術闘技場

実践剣術大会トーナメント
男子ブロック初戦
ミックVSユーリ

ミック「ぶべェれッツ!!」
一瞬で剣をはじかれ、回転しながら地面にぐしゃりと落下するミック。
ライル「そこまでっ!」「勝者ユーリ!!」

グレイン「・・・・・・あいつ、やる気あんのか?!」
ノア「・・・・・・」
テル「ははは・・・・・・」
苦笑いするテル。

実践剣術大会トーナメント
女子ブロック初戦
キャロルVSシンディ

シンディ「シンディ・ルメイ・レームクール」「クールに倒してあげるわ!」「にゃーハッハハっーー!」
レームクールだけにと呟き、高笑いするシンディ。
キャロル『面白いこと言ったつもりなのかな・・・・・・』
冷めた目でシンディを見つめるキャロル。
頭を左右に振り気を取り直す。
キャロル『授業以外でも一杯特訓した・・・・・・大丈夫、できる!!』
剣を握り直して構える。
キャロル「キャロル・C・ライシアン」「勝負よ、シンディ!」

ケイ「用意はいいな・・・・・・」「はじめ!!!!」

キャロルに突進してゆくシンディ。
シンディ『何もさせずに、場外に叩き出してあげるわ!』
ールール1:場外の側溝に落ちると敗北となるー

ノア『騎士の戦いは魔力と剣術の掛け算・・・・・・』
『魔力に圧倒的差がある以上、やはりキャロルは不利・・・・・・』
『どうするキャロル・・・・・・?』
見学席から固唾を飲んで見守るノア。
女子の初戦だけにC組の多くの生徒が集中して見学している。

シンディの剣が魔力を纏いピンク色に光る。
剣を後ろに引き、待ち構えるキャロル。
キャロル『正面から受けちゃダメ!』『魔力に差がある以上押し負ける・・・・・・』『上手くらす!!』

シンディ「はあ!」
強烈な一撃をキャロルに叩き込むシンディ。

「バシィィ!!!」
キャロル「くっ!!」『思ったより強烈・・・・・・!』
剣撃の威力を何とか側面に逸らすキャロル。

ノア『!』『力を逸らした!』
カーリン『意外と上手ね・・・・・・』

シンディ「ちっ!」「小賢しいわね!」
力が有り余るシンディ。すかさず、返す刀でキャロルをりする。
キャロル「っーーー!」
流石に逸らし切れないキャロル。
長方形の闘技場長辺部分のふち付近に一気に弾き飛ばされる。

ノア『やはり相殺しきれないか・・・・・・!』
カーリン『淵は危険よキャロル!少し押されれば、すぐ場外だわ!』
グレイン「こりゃ、厳しい戦いだな・・・・・・キャロルにとっては」
セリア『頑張ってキャロルちゃんー!!』
祈るように見つめるセリア。

シンディ「おら、おら、おらーー!!!」「落ちろーーーーー!!!!」
闘技場の中心付近から攻撃を放つシンディ。魔力で練られた飛ぶ斬撃が容赦なくキャロルを襲う。
自分の剣を盾代わりにして、何とか防ぐキャロル。
キャロル「く・・・・・・うぅ!」
しかし、攻撃圧によってじりじりと闘技場の淵に後退する。
踏ん張っていても土の上を靴が滑る。
キャロル『強い・・・・・・』『防ぐだけで精一杯・・・・・・』

乱雑なシンディの攻撃でキャロルの周りに土煙つちけむりが立つ。
キャロルの姿が見えなくなったあたりで攻撃を中断するシンディ。
シンディ『地面をえぐり過ぎた・・・・・・どこ行った・・・・・・キャロル?』

縦方向に高速回転しながら煙の上部から飛び出すキャロル。
シンディ『・・・・・・上か!』
全体重を剣に載せ、シンディの頭から切りかかるキャロル。

「ガチイィィィィーーーーン!!!」
シンディ「くっ!」
防御をする予定が無かったシンディ。
腕に攻撃が響く。
シンディ「フンッ!」
遅れながら魔力を全放出してキャロルをはじくシンディ。

吹き飛ばされるキャロル。しかし、受け身をとって着地する。
キャロル「少しは・・・・・・効いた・・・・・・かしら?」
息切れしながらも食い下がるキャロル。
シンディ『腕が痺れる・・・・・・』『少し油断し過ぎた・・・・・・』
腕がわずかに震えるシンディ。それでもはったりをかますシンディ。
シンディ「は~あっ~?ぜーーんぜん!!」「お前の攻撃なんて効くわけないにゃ!!!」
わざとらしく両手を使ってポーズをとる。
キャロル「そう」
呼吸を落ちつかせ攻撃の構えをとるキャロル。
折り込み済みのセリフに動ぜず、シンディに向かって飛び出す。

「カチイィィィン!!」
切り結ぶキャロルとシンディ。
シンディ「フンっ!」「小細工しても無駄にゃ!!」

「キイィィーーーン!」
シンディの右上からの袈裟けさ切りを受けるキャロル。
シンディ「わたしとあんたじゃ素養が違うにゃ!いなか猫!!!」

「ギイィーーン!」
シンディの左上からの袈裟切りを受けるキャロル。
シンディ「魔力圧がそのまま剣圧の差になるにゃ!!」
キャロル「くっ・・・・・・」
苦しそうに受けるキャロル。
シンディの攻撃を受ける度に身体が大きくぐらつく。

ノア『やはり・・・・・・腕力だけでは・・・・・・』
苦々しい顔をするノア。
セリア『キャロルちゃん!!』
目を閉じ、手を組むセリア。

シンディ「〇×※!!!」
乱暴な声を上げるシンディ。剣を大きく振りかぶる。
目がキラリ光るキャロル。軌道を見切って自分の剣を手放す。
中空に浮いたキャロルの剣とキャロルの手の間を斬り下ろしたシンディの剣が通過する。
シンディ『なっ・・・・・・!?』
キャロルの予想外の動きに動揺するシンディ。

掌底しょうていに有らん限りの魔力を込めて小さな炎を発生させるキャロル。
シンディの懐に入り込み突き出す。

シンディ「熱っーー!!」
つい自分の剣を手放してしまうシンディ。
すかさず、膝でシンディの剣を蹴り上げるキャロル。

さらに地面に落ちた自分の剣を拾うキャロル。
シンディ「しまっ・・・・・・」
ールール2:剣を手放した状態で相手の剣を受けると敗北となるー

シンディの剣が宙に舞う。
時間がスローに感じる。
シンディ『まずいっ・・・・・・!!!』
キャロルの剣がシンディに迫る。

ノア/グレイン『今だっ!!!!!!!!!』
カーリン『あの子・・・・・・チャンスを作り出した!』
セリア『ーーー!!!』

シンディ『うそ・・・・・・わたしが負ける??』『こんな、いなか猫に?!』
キャロル「はあああーーーー!!!」
剣を突き出すキャロル。
セリア「キャロルちゃん!!」
思わず叫ぶセリア。

「ズテーー」
ノア『・・・・・・』
目を手でおおうノア。
ミック『転んだ・・・・・・』
見学生徒『転んだ!』『ここで?』
キャロル『転んじゃったーーーーーー!』

シンディ「フンッ!」
落下してきた自分の剣を素早くつかむシンディ。
キャロル「あっ・・・・・・!!」

「シュッ」
キャロルの頭部に剣を突き立てるシンディ。
剣がキャロルに触れる。
ールール3:地面に手を着いた状態で相手の剣を受けると敗北となるー

ケイ「そこまで!!!」「勝者、シンディ・ルメイ・レームクール!!!!!」
わ~と喝采が上がる。

キャロル「あ~あ、負けちゃった・・・・・・」「やっぱり強いね、シンディさん」
立ち上がり、土を払い、へらっと笑うキャロル。
シンディ『こんなはずじゃない!!』『完膚かんぷなきまでに圧倒するつもりだった・・・・・・』『なのに・・・・・・』
勝利したが苦々しい表情のシンディ。

<見学席>
男子生徒A「やっぱ、シンディは強いな~」
男子生徒B「初等学校の頃から評判だったっもんな」
男子生徒C「俺は直接戦って負けたw」
男子生徒A「それは、ダセェな~」
男子生徒C「いや、まじで強かったから」「天才なんだって!」

ノア『・・・・・・思ったよりずっとキャロルは健闘した』
『あれだけの魔力差がありながら、チャンスを作り出した』
『キャロルに剣術のセンスは・・・・・・ある』
ノアの瞳が確信に輝く。
『アマテルーシアはあまり剣術が盛んな地域ではない・・・・・・』
『初等学校でも大して教わっていないだろう』
『つまり、入学して2ヶ月程度でここまで成長したということ』

シンディとキャロルが闘技場から退場していく。

カーリン「十分見込みあるんじゃない?」
ノアに声をかけるカーリン。
ノア「お前は確か・・・・・・パーリンだったか・・・・・・」
カーリン「カーリン!!!」「そんな割れそうな名前にしないで!!」
ノア「すまん、あまり名前を覚えるのが得意じゃなくてな・・・・・・」「キャロルはすぐ覚えられたんだけどな・・・・・・」
カーリン「あっそ!!」『何なのそれ・・・・・・』
悔しがるカーリン。

ノア「あいつはまだまだ、これからなんだ」「助けてやってくれカーリン」
横目でカーリンを見てしゃべるノア。
カーリン「言われるまでもないわ!」「なんと言ってもキャロルとはお友達ですもの!」
自慢げなカーリン。

ノア「その割には距離がある気がするな」
カーリン「失礼ね!これから仲良くなるのよ!!」
ノア「ふ~ん」
カーリン「なによ!」
ノア「キャロルも大変だな・・・・・・」
カーリン「なんでよ(怒)!!」
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