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3章

第26話 深夜

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真夜中に差し掛かる頃

王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
生徒寮B棟
男子寮

外は天気が悪く、雷が遠くに響き、雨が降っている。

B2145号室/テルの部屋

書斎の椅子に座って考え事するテル・ジーム・フレッチャー。
テル「あ、そういえば・・・・・・」
ふと、姉からの手紙を読んでいなかったことを思い出す。
昨日の午後、1Fの個人ポストで受け取った手紙。後で読もうと思い、しまっておいた。

小棚の引き出しを開け、手紙を取り出す。
テル「思ったより早く返ってきたなぁ」「姉さん、実は暇?」
笑いながら封を切るテル。

2つ折りの手紙を開く。
本文を読む。
2、3行読み、視線が止まるテル。
テル「・・・・・・何言ってんの・・・・・・姉さん」『そんなはず・・・・・・』
落ち着こうと思って手紙を片手にコップの水飲むテル。

「カチッ」
扉の方から音がした。
テル「・・・・・・」『鍵・・・・・・?」「鍵が開く音がした気がする・・・・・・』『き、気のせいか・・・・・・』
急に鼓動が激しくなるテル。
数秒経っても何事もない。

テル「き、気のせいか・・・・・・」『び、びっくりしたー・・・・・・』
平常心を取り戻そうとするが冷や汗が零れる。

「キいいい・・・・・・」
扉が勝手に開く。

テル『!?』
今度こそ動悸どうきが激しくなるテル。呼吸ができない。
テル『部屋に入る時、確かに鍵を閉めたはず・・・・・・』
「キいいいぃ」
さらに隙間が開き、完全にドアが開く。

誰も入って来ない。
テルの位置からは寮の通路は見えない。
恐怖で身動き出来ないテル。
廊下で影が揺らめく。

テル「だ、だれですか!」
声を絞り出すテル。

「ピシャアア!!」
突然落雷の音。
ビクッとするテル。
背後に誰かが立つ。
書斎の鏡に映るその姿に驚愕するテル。

テル「・・・・・・!!!!」
目を疑うテル。
次の瞬間テルはこと切れていた。

血だまりが椅子の脚下に広がる。
何者かは忽然こつぜんと姿を消していた。

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次の日
朝、天気は快晴。

ミック「お~い!テル~!」「そろそろいくぞ~!!」
テルの寮室のドアをドンドンと叩くミック。

グレイン「寝てんじゃねぇのか~?」
ミック「いや~、あいついつも早起きだぞー?」

ノア「ん~、どうした2人とも」
ミック「いや、テルの返事がないんだよ~」

異様にドアの隙間からの風の抜けがいいことに気付くノア。
ノア「おい・・・・・・まさか」
ミック「は?」

ノアの反応にピンとくるグレイン。
グレイン「まさかって・・・・・・」
青くなるノアとグレインにようやくミックも気付く。
ドアノブをひねるノア

ミック「どうだ・・・・・・」
ノア「・・・・・・閉まっている」
ミック「先生呼んで来て開けてもらおう・・・・・・」

剣を引き抜くグレイン
グレイン「おい、どけ!」
ミック「ちょ、ちょ、ちょっと待って・・・・・・」
ノア「一刻を争う・・・・・・」
ミック「え!?」

「バーン!!」
グレインの一撃で木製のドアが砕け散る。
ミック「あ~」『やっちまった・・・・・・』

グレイン/ノア「テル!!」
部屋に飛び込む。
椅子で血を流し伏せているテルを見つけるノアとグレイン。

ノア「テル!!!!!!」
グレイン「おい!!しっかりしろテ・・・・・・」
テルに駆け寄り、既に亡くなっている事に気付くグレイン。

グレイン「テ・・・・・・ル・・・・・・」「どぅして・・・・・・」
ノア「ーーー!!!」『なぜだ!!』『なぜテルがっ!!』

ミック「まじか・・・・・・」「せ、先生呼んでくるっ!!」
ドアの枠にぶつかりながら、慌てて出ていくミック。

グレイン「くそがぁぁっ!!!!!!」
叫ぶグレイン。

ノア「チッ!!!」
拳を壁に打ち付けるノア。それでも状況分析し始める。
ノア『窓ガラスが割れている・・・・・・窓から侵入したのか!?』

グレイン「テル・・・・・・ぅ・・・・・・なんで・・・・・・」
むせび泣くグレイン。

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
職員会議室
緊急職員会議

ケイ「テルの部屋の窓ガラスが割られていた・・・・・・」

マーガレット「外部からの侵入者ですか?!」
ニャータ「キアラ先生の検知ドームは健在なはずじゃ」

キアラ「ええ・・・・・・3重に構築した検知網に侵入者は引っ掛かっていません・・・・・・」
マーガレット「では誰がどうやって?!」

ライル「キアラ先生の技術を疑ってはいないが、ドームに隙はないのかね」
キアラ「・・・・・・それは」
マーク「私も一緒に確認しましたが、ほころびはありませんでした」
精霊を介して会議に参加するマーク。

ダニエル「寮室の鍵は掛かっていた・・・・・・」
アニエルカ「窓ガラスから犯人が強襲したとしか思えません!」

アーミン「となるとドーム内への直接侵入しかあり得ませんね」
エリザール「あるいは学院内の誰かじゃのう・・・・・・」

アーミン「生徒の中に真犯人がいるのかもしれませんね」
ライル「ステファニーの件があったからな」

アニエルカ「それでも、最後まで生徒を信じるべきですっ!」
ケイ「私も同感です・・・・・・」「こんなことをする動機が薄い・・・・・・」
ニャータ「ワシもそう思う・・・・・・」

マーガレット「ですがそうなると・・・・・・」「我々教員の中に、犯人がいる可能性も否定出来ませんね」
沈黙する教師一同。

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
大講義室

緊急職員会議が開かれ、組ごとに大講義室での待機が指示されている生徒たち。

グレイン「俺が間違っていた・・・・・・俺のせいでテルは・・・・・・」
ミック「おい、自主退学の話しか~?」
ノア「グレインのせいではない」

グレイン「でもよお・・・・・・」
弱気になるグレイン。肩を落とし、手で目を覆う。

ミック「テルもお前を恨んじゃいないって」
流石にミックもなぐさめる。

隣同士に座るキャロルとカーリン。
キャロル『マーナちゃん、セリアちゃん、テルくんまで・・・・・・増える犠牲者・・・・・・』
『頑張らなきゃいけないのに、集中出来ない・・・・・・』
頭を抱えるキャロル。

カーリン『ステファニーが単独犯ならこの事件は起こらない・・・・・・』
『どこかに黒幕・・・・・・真犯人が潜んでいる?』
『・・・・・・いったい誰!??』
『別な生徒?』『それとも教員サイド??』
『だめだわ・・・・・・情報が足りないわ・・・・・・もっと調べないと』
必死に頭を働かせるカーリン。

離れたところに座るユーリとニコ。
ユーリ「・・・・・・」
ニコ「想定内って顔だね・・・・・・」
ユーリ「ああ・・・・・・」「いずれこうなるのは分かっていた・・・・・・」
「真実が解明されてないのに油断しすぎだ、この学院」

ニコ「まさか、グレイン君を責めたりしないよね?」
ユーリ「そんな気はさらさらねぇ」「全部考えた上で、退学を取り消したんだからな」
ニコ「どうする?」

ユーリ「真犯人を探す」「それだけだ・・・・・・」
ニコ「真犯人を探してやるって意気込む生徒と、退学したいと考える生徒にわかれる」
「生徒同士の不和・・・・・・これも狙いかな」
ユーリ「ああ・・・・・・」

ニコ「今回退学者が出るのは避けられないね・・・・・・」
ユーリ「間違いなく生徒の学院・教員への信頼が低下する」
「教員は生徒を疑っている・・・・・・ステファニーの件があったからな」
「地獄の学院生活の始まりだ」

カーリン「みんな!」「少しいいかしら?」
一部の生徒は顔を上げる。

カーリン「私は・・・・・・真犯人を捕まえたい!」「それにはみんなの強力が必要!」
「何でもいい、気になったことをみんなで共有しましょうっ!」「私がみんなの情報をまとめるわ!」

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場所:????
秘密結社カラミティ
謀略会議

シャットン「恐怖は順調に広がっております」
「不安、不和、不信、憶測、猜疑心さいぎしんが渦巻き、加速度的に学院は崩壊に向かうでしょう」
会議卓上に浮かぶ投影球に映されるシャットンの顔。
どこにいるかは分からない。

会議の部屋は薄暗く、参加する者の姿ははっきりと見えない。
有機的な壁面の怪しげな青い光が参加者の後背こうはいを照らしている。

01????「順調で何よりだよ~、シャットン君」
会議卓の上座に座る赤紫色の眼光を放つ者が最初に答える。
椅子に立て掛けられた半月のかまが鈍い光を放つ。

シャットン「恐縮至極きょうしゅくしごくにございます」
胸に手を当てお辞儀するシャットン。
04????「フラゴールの陽動も効いている・・・・・・」「騎士団の余力もないだろう」
06????「ククク、我らの出番も近い・・・・・・」「なあ兄者?」
05?????「ああ、早く切り刻みたくて、ウズウズするワ」
何かをこすり合わせカチカチと音を鳴らす05。

07????「・・・・・・ぼ、ぼくの出番はい、いつに、なるのかな・・・・・・」
01????「安心して07。ちゃんと活躍してもらうよ」「少し先になるけどね」
07????「イヒヒヒ・・・・・・た、たのしみ・・・・・・」

03????「11はどうした?」「忙しいのか?」
シャットン「生憎あいにく、業務中でして・・・・・・」
08???「しっかりとサポートしてあげるんだよ」
シャットン「鋭意活躍しております」
03????「・・・・・・ならば問題ない」

01????「02は何かある?」
02?????「・・・・・・」
01????「・・・・・・ないらしい」「じゃ、お開きで!」

シャットン「では失礼」
光を失う投影球。シャットンの姿はき消える。
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