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3章

第30話 迷宮

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正午
王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
大講義室

魔法化学授業後

ノア「・・・・・・なあカーリン」
講義室の階段を登って来て、カーリンに話しかけるノア。
カーリンの隣にはキャロル。
アニエルカはちらりとこちらを見るが、気にめずスタスタと機敏きびんに教室を退出する。

カーリン「なに?ノア?」
ノア「この前の、情報収集についてだが俺も手伝うよ」「ひとりじゃ大変だろ?」
カーリン「ほんと!?」「助かるわ!」
横目でその様子を見るキャロル。

???「あの、カーリンさん」
話したことのないC組の女子生徒。
カーリン「何かしら?」
???「あの、私・・・・・・ずっと気になっていることがあって・・・・・・」
目を見合わせるカーリンとノア。
カーリン「この教室は次の授業の生徒が入って来るわ」
丁度ちょうどお昼だし、食堂で話を聞くけどどう?」
ノア「端の方の席にしろ」
小声でささやくノア。
カーリン「もちろんっ」
???「うん、大丈夫・・・・・・」
カーリン「キャロルも一緒にどう?」
キャロル「う・・・・・・うん、私がいても役に立たないと思うけど・・・・・・」
ノア「あいつら・・・・・・ミックたちも連れて来るけどいいか?」
カーリン「もちろん!」
女子生徒も頷く
カーリン「決まりね!」

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
第一食堂
壁際/テーブル席

カーリン、キャロル、ノア、ミック、グレイン、ユーリ、ニコで情報提供者の女子生徒の話を聴く。

カーリン「それで、どんな話?フィーさん」
フィー「ずっと前から気になっていたことなんだけど・・・・・・」
ノア「ああ、どんな情報でも歓迎だ」
フィー「実は・・・・・・ステファニーさんのことで・・・・・・」
全員『!?』
ノア『ステファニー・・・・・・』
カーリン「聞きたいわ!」「教えて!!」
上々の反応に安心して話出すフィー。

フィー「ステファニーと私は同じ初等学校だったの・・・・・・」
カーリン「そ、それで?」
フィー「ステファニーさんは初等学校で、よくいじめを受けていたの」
ノア「・・・・・・」「なぜだ?」
フィー「理由は・・・・・・魔力が弱くて、全然魔法が使えなかったの・・・・・・」
全員「!?」
キャロル『・・・・・・私と同じ?!!』『あのステファニーが・・・・・・!?』

グレイン「ま、待ってくれ・・・・・・ステファニーは強い魔力を持っていなかったか?!」
ニコ「トーナメントでも、シンディと互角の戦いをしていた」
ユーリ「まぁ、負けたけどな・・・・・・」
ノア「騎士の戦いは魔力と剣術、両方の力の掛け算で決まる」「ステファニーの魔力が弱いとは考えられない・・・・・・」
ミック「実際、それを鼻にかけて、横暴な態度をとってたんじゃないのか?」
カーリン「そうよ」
グレイン「じゃ、どういう・・・・・・」

フィー「そう、みんなの言う通り」「だから・・・・・・私もよく分からないの!」
「初等学校の時はどちらかと言うと大人しくて・・・・・・」「そんな子が、どうして突然あんな風になったのか」
ミック「学院デビュー・・・・・・?」
グレイン「なわけあるか」
ミックを叩くグレイン。
ミック「いてっ!!なにすんだー、グレイン!」
ノア「お前ら今はやめろ!」

ニコ「確か、最初の頃・・・・・・ステファニーは1人でいたよね?」
ユーリ「入学式の時もそうだったな・・・・・・記憶が正しければ」
カーリン「確かに・・・・・・しばらくたってからだわ!」「ジェマとサキナを従え始めたのは!」
キャロル『・・・・・・そういえば、そんな気がする』『最初、からかってきたのはジェマとサキナだけだった・・・・・・』
グレイン「って事は・・・・・・その間に何かがあった?」
ノア「何かわかるか、フィー?」
フィー「それが・・・・・・どうしてもわからないの・・・・・・」「普通ある?」「急に魔力が強くなるなんてこと?」
キャロル「ないと思う・・・・・・」
しまったと思うフィー。
フィー「ご、ごめんねキャロルさん!」「そんなつもりじゃないのっ!」
キャロル「うん、分かっている・・・・・・こっちこそゴメン」
全員が沈黙する。

伏目ふせめがちなキャロルを気に留めるミック。
ミック「なあ、キャロル君、最近暗くない?」
キャロル「は?暗くないし・・・・・・」
ミック「いや暗いだろ、セリアだってそんなキャロルは見たくねぇーじゃねえの?」
ミックをにらみ付けるキャロル。
最近涙腺るいせんが緩んでいるキャロル。つい、瞳に涙が浮かぶ。
ミック「え゛?!」
恥ずかしくなり、席を立ち逃げ出すキャロル。ひとり食堂から出ていく。

ノア「うわ、おまえ・・・・・・」
カーリン「女子泣かせた」
フィー「ひどいですね」
グレイン「最悪だな、ミック」
ミック「ちょっと待ってって、オレはなぐさめてただけで・・・・・・」
ニコ「可哀想かわいそう、キャロルさん・・・・・・」
ユーリ「最低だな」
ミック『こいつら・・・・・・オレの主張も少しは聞け!!』
抗議しようとするミック。

ミック「ま、ちょっと、今の発言は良くなかったかもしれないな!」
「あとであやまっとくか・・・・・・」
全員の視線が痛くて日和ひよるミック。

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次の日/午後
王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
大講義室

基礎魔法学の授業終了後。

ノアが階段を上がって、カーリンとキャロルに話かけに来る。
話が始まる前に荷物をまとめ席を立つキャロル。
ノア「おい、キャロル・・・・・・どこに行くんだ?」
キャロル「図書館」
不機嫌そうに立ち去るキャロル。
ノア「・・・・・・」
視線で見送るノア。
カーリン「で?」
ノア「初心に立ち返ってな・・・・・・式典記念講堂で推理ごっごをしようと思っている」
カーリン「面白そう!」「付き合うわ!」

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
式典記念講堂

ノアとカーリン以外は誰もいない。
講堂の壁際かべぎわに並んで立つ。
ノア「入学式以来だな・・・・・・」
カーリン「そうね・・・・・・」
様々なことを思い出す2人。

カーリン「ねぇ、ノア・・・・・・」
ノアと距離を詰めるカーリン。
ノア「カーリン・・・・・・?」
2人の手がわずかに触れる。
カーリン「私たち・・・・・・」
頬を赤らめるカーリン。
カーリン「付き合うっていうのはどう・・・・・・?」
ノア「・・・・・・」
唇が触れ合いそうな距離。
ノア「・・・・・・ス」
カーリン「・・・・・・」
ノア「・・・・・・すまん・・・・・・お前は魅力的だが・・・・・・」
カーリン「・・・・・・」
ノア「好き”かもしれない”やつがいるんだ・・・・・・」
カーリン「・・・・・・ふん」「知ってる~」
ノア「・・・・・・」
カーリン「・・・・・・冗談よ?」「本気にした?」
ノア「”あいつ”がいなければ食いつてたな・・・・・・」「お前は強くて、賢くて・・・・・・可愛かわいいからな・・・・・・」
カーリン「そう・・・・・・」
ノア「あまり男をもてあそばないでくれ」「多分、男の方が引きずる・・・・・・」
カーリン「ははは、なにそれ~」「私そんな小悪魔こあくまじゃないんだけどっ~~」
クスクスと笑うカーリン。何とも言えない表情をするノア。

カーリン「で?」「推理ごっこするんでしょ?」
ノア「そうだな」「忘れるとこだった」
片手でボールをポンポンほうりながら答えるノア。
カーリン「何?そのボール?」
ノア「ああ、これか、授業中に横でミックが遊んでたから取り上げた」
カーリン「フフ、ほんとふざけてるのね、ミックくん」
ノア「ああ、でもいい奴なんだ・・・・・・」
カーリン「・・・・・・」
ノア「・・・・・・親友なんだ」
カーリン「知ってる~」

「カラン」
ノア「おっと・・・・・・」
ノアが手を滑らせ、ボールが転がり落ちる

「カラン、コロコロコロ、カランッコンッ、コロコロコロ、コンッカラン、コロコロコロ・・・・・・」
段差がついている生徒座席部分を転がっては跳ねて、転がっては跳ねてを繰り返し、最下層まで落ちてゆくおもちゃのボール。

ノア「お、おい・・・・・・カーリン・・・・・・」
声を震わせるノア。何かに気付いたノア。
カーリン「・・・・・・」「!!!」
息をみ青くなるカーリン。
ノア「わかるか?」
冷や汗が零れるノア。
カーリン「・・・・・・ええ、にわかには受け入れ難いけど」
ノア「入学式のあの投影球が現れた時・・・・・・跳ねる音は聞こえなかった・・・・・・」
カーリン「そうね・・・・・・」
ここに来て心拍数があがる2人。

ノア「コロコロと転がりカンッと1回だけぶつかった音がした」
泳いでいた視線が教員席付近に定まるノア。
ノア「教員席・・・・・・」
カーリン「そこから・・・・・・しかできないわね・・・・・・」
教員席から中央の演台までスロープで繋がっている。
カーリン「投影球を投じたのは教員・・・・・・」
ノア「犯人は教員だれか・・・・・・その可能性が極めて高い!!」

カーリン「スロープに最も近い席・・・・・・」
最後に慌てて入ってきた教員を思い出すノアとカーリン。
全てのピースが繋がり始め、最悪の結論が導き出されようとしていた。
                                                    3章 END
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