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4章

第35話 振動

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
職員室

「バアアアァァン!!」
学院長室と職員室を繋ぐ扉が勢いよく開く。

ニャータ「緊急事態発生!!」「全教員は生徒のすみやかな避難誘導と保護に当たられたし!!!」
職員室の真ん中の通りを足早に歩きながら指示を出す。
教員一同「了解!!!」
ニャータ「ダニエル先生!」
ダニエル「はいっ!」
ニャータ「先生は王室参謀本部に連絡し、騎士団に救援要請を出してくれ!」「その後は避難誘導の全体指揮を頼む」
ダニエル「了解です!」「ニャータ学院長はどうされますか?」
ニャータ「ワシは・・・・・・・出撃しゅつげきする」
ダニエル「・・・・・・!」
ニャータ「首謀者がどこかにいるはずじゃ。そいつをたたく」
ダニエル「わかりました、お気を付けて!」
ニャータ「学院を襲撃するとはいい度胸じゃ!」
急ぎ外に向かうニャータを見届けたダニエルは、慌てて通信室に向かう。

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王都おうと/王城都市おうじょうとしアクトゼリシア
王城最上階
国王謁見こくおうえっけんの間

ハロルド参謀総長にハイジャック事件の報告をする第二騎士団長アルベルト。
アルベルト「副団長レスリー・ランス・クラークとリンデル・デイヴィス・メリルの証言は以上です・・・・・・」

バタバタと謁見の間に駆け込む通信官。
通信官「緊急伝令です!」
謁見の間を采配さいはいする守衛官に耳打ちする。
守衛官「少し、よいですかなハロルドさま」
ハロルド「後でいいか?今、アルベルト第二騎士団長から報告を受けている最中だ」
守衛官「状況が切迫せっぱくしていると判断されます」
アルベルト「私は大丈夫ですので、ご報告を」
ハロルド「なんだ?言ってくれ」
守衛官「王立騎士魔導学院ウェルウィッチアが襲撃を受けています。」
ハロルド「なに!?」
ドミニク国王「・・・・・・なんと」
アルベルト「!」
ざわめく一同。
ハロルド「詳しく聞かせてくれ」

守衛官「はい・・・・・・」「例の秘密結社カラミティが呼び出したと思われる無数の闇魔法生物カースクリーチャーが、学院施設及び生徒を攻撃しているとのこと」
「今現在、実行犯の特定には至っておらず、既に多数の負傷者が出ている模様」

ハロルド「なんということだ・・・・・・」「分かった」「騎士団を緊急派遣する」

?????「オレが出よう・・・・・・」
国王のすぐそばに鎮座していた第一騎士団長サンダース・K(キルボーン)・フォーサイスが立ち上がろうとする。
アルベルト「いや、私が行きましょう」
さえぎるようにアルベルトが手を挙げて進言する。

守衛官「・・・・・・アルベルトさまは報告の途中では?」
アルベルト「ハロルド参謀総長への報告はほとんど終わっています」
「それよりも、この状況で第一騎士団長が王都を離れるのは得策ではありません」
「私がおもむくのが適任かと」
アルベルトはハロルドに頭を下げて述べる。
ハロルドは少し考え、アルベルトの意見に納得したように頷く。
ハロルド「・・・・・・了解した」「アルベルト第二騎士団長及び第一騎士団の即応部隊に学院襲撃者の排除と生徒の保護を命令する」
アルベルト「は!」
国王「頼んだぞ、アルベルトよ」
アルベルト「は!」
アルベルトはすぐさま身をひるがえし、走り出す。第一騎士団の即応部隊にも命令が伝えられる。

アルベルトは謁見の間の最も近い窓から王都の街に飛び降りていった。
通信官「アルベルトさまはあのような高い所から飛び降りて大丈夫なのですか?」
守衛官「安心せよ、アルベルトさまは跳躍系ちょうやくけいの精霊魔法に長けておる」「王都の建物の屋根を跳躍すれば、学院まであっという間じゃろう」
はぁと感心する通信官を尻目に、不機嫌そうなキルボーン。

ハロルド「せっかくの俺の出番なのにという顔だな、キルボーン」
キルボーン「いえ、別に・・・・・・」
国王「ハロルドに隠れてこっそり行ってもかまわんぞ」
ハロルド「陛下・・・・・・」
非常に困ったような顔をする参謀総長。
国王「・・・・・・冗談じゃ」「それより、今回の件は一大事。くれぐれも慎重に対処をたのむぞ」
ハロルド「もちろんです。陛下」「情報収集を継続し、可能な限りの人員を送るつもりです」「例の彼女の件もありますし」
言葉尻で小声になるハロルド。
国王「うむ・・・・・・そうじゃのぉ、とても心配じゃ・・・・・・」

建物を次々に跳躍して飛び越えるアルベルト。学院の方を見るとうっすらと黒い塊が見える。
アルベルト『・・・・・・あれか』『・・・・・・急がなければ』
さらに加速するアルベルト。

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王立騎士魔導学院ウェルウィッチア
図書館

「カキィ、ィィイン、カン、キンッ、カンッ、キン、カッ、キーン!」
魔力で加速されたノアの剣とミースの刃物が目にもとまらぬ速さでぶつかり合う。
ノア「はあ゛ーーーーーーーーぁ!!!!!」
全力で勝機しょうきを掴もうとするノア。
ミース「アハハハハハハッ!!!!」
楽しくて仕方がなさそうなミース。
キャロルが万全であったとしても助けに入る余地はなさそうだ。

ミース「これはぁどうかしらぁ~?」
ミースが片手を挙げると中空に無数の黒紫色のとげが生成されノアに襲いかかる。
剣を高速で振るいたたき落すノアだが、全てを防ぐことはできない。
ノア「ッー!」
一定の頻度でノアの体表をえぐる。このまま出血が続けばノアの戦闘力は大幅に低下する。
長期戦になるほど、ノアの劣勢は否めない。

ノア『早目に決着しなければ・・・・・・!』
今までのよりも多めに力をためるノア。周辺に光が集まる。
次の瞬間、突撃する。
ミースに高速で接近し、全方位から立体機動的に激しく剣を打ち込む。
ミース「アハハハハハ、1年生でこれだけ戦えれば大したものだわ!!」
それでも全て受け流すミース。

ノア「ちっ!」『やはり、見切られている!?』
ミース「でも、まだまだ経験値不足ねぇ!」
近距離で黒紫の棘をノアに浴びせる。
ノア「クッ!!!」
ノアの身体からだにサクザクと棘が刺さる。
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