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第7話 鷹と風と滝

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『ハァ…ハァ…フゥ』

と息を荒げてグランドを走る
野球部員達。

しかし今日はいつも先導して走る
早河部長の姿は無かった。
早河は急用により帰宅していた。

部長不在により副部長の風間が
部員達を先導して走っていた。
1人だけ飛び抜けて先頭を走る風間
部員達は必死に風間に追いつこうと
頑張るが中々距離が縮まらない。
すると部員達の群れから飛び出し
風間に接近した鷹矢

『なぁ、風間。いつもより
走るの速すぎないか?
女性の宮野さんと花咲さんが
つらそうなんだけど
もう少し遅く走らないか?』

と言う鷹矢に風間は

『分かった。あと5周だ。頑張れ』

と言うと少し速度を落とした。
鷹矢は速度を大きく落として
部員達の群れに混じり
風間の指示を伝えた。
すると花咲と宮野は
鷹矢に会釈して走り続けた

風間の後に少し遅れながらも
走り終わってその場に座り込んだ
部員達に風間は冷えた清涼飲料水と
冷たいタオルを配っていた。
花咲と宮野が部員達より遅れて
走り終わると風間はすぐに
2人にも配ったが

『良く頑張ったな』

と言い、笑みを見せて頭を撫でた。
予想だにしない出来事に
花咲は照れながらも満更でもない
笑顔をタオルから覗かせていた。
宮野は恥ずかしさのあまり
顔をタオルに埋めていた。
その光景を見た鷹矢は

『あー!それはずるい風間君
俺も頑張ったんですからねぇ!
褒めて欲しいですなぁ』

とお褒めの言葉を催促する鷹矢
しかし風間からはキツイ褒美が
鷹矢に告げられた。

『俺に付いてこれる走力を持って
おきながら部員の群れに混じって
楽をした奴にはグランド50周走る
褒美を与える。全力で走れよな!』

と言うと風間は鋭い目で睨んだ
鷹矢は風間が本気で怒っているのを
感じてグランド50周走りだした。

すると鷹矢の後を追いかけ
一緒にグランドを走る滝本
滝本は手を抜いていないが
鷹矢と一緒に走る事で上手く
走るコツを鷹矢から見て
学ぼうとしていた。

鷹矢は上手く走るコツを
滝本に教えながら走っていて
20周目からは走塁のコツや
盗塁のコツを教えていた。

風間は2人を時々見ながら
残りの部員達と
守備練習をしていた。

風間と他の部員は先に部活を
終わりにして帰って行ったが
2人はまだ息を荒げながらも
グランドを走っていた。
風間からの罰をこなし
グランドに礼をすると
部室奥にある更衣室に入り
着替えて帰りの支度をした
2人が部室から出てきた。

部室から出ると先に帰った
はずの風間が待っていた。

『飯、行くか?』

と風間が2人に言うと鷹矢は
いつもの様に元気になり
はしゃいでいた

『焼肉!焼肉!あ!肉を
焼くのは俺に任せてくれ!』

滝本も嬉しそうに頷いた。
3人は焼肉屋に歩いて行った。

焼肉屋に入り席に座ると
鷹矢はメニューを見なずに
次々と肉を注文していく。

大量に来た肉を前にすると
鷹矢は次々と肉を
網の上で焼き始めた。
網の上にギッシリと
敷き詰められた肉
1度に大量に焼くと対応出来ず
焦がしてしまうが鷹矢は
自信たっぷりで焼いていた。

風間と滝本が肉を取ろうと
すると鷹矢が阻止して

『まだ!もう少し焼いてから』

と言う鷹矢の目は獲物を狙う
鷹のようだった。
丁度良い焼き加減になると
鷹矢は次々と肉を網から取り
3人の皿に盛り分けた。

鷹矢の焼肉さばきに圧倒され
感心していた2人に鷹矢は

『早く肉食べようぜ
冷めないうちにな!
ドンドン焼くからな!』

と言い、肉を頬張る鷹矢
2人は鷹矢の喰いっぷりに
負けない喰いっぷりで
3人は大量の焼肉を完食した。

会計は3万円になりますと
聞いた時は3人で顔を見合わせ
焦った表情になったが、
無事割り勘して払い
店を出て家に帰った。

その後1週間の3人のお昼は
パンやおにぎりを2、3個に
するなど豪華な食事を
控える事になったのだった。

貴重な小遣いを焼肉で
消費してしまった3人だったが
これを機に3人の仲は良くなり
絆を深めたのだった。

大山監督就任まであと2日
次回!登場人物紹介

宮野《みやの》 1年生
女性部員、遅球と速球を操る
中継ぎ投手、左投げ、左打ち
薄紫髪で謙虚でお淑やか
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