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第六話
⑯
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「お似合いですよ、お嬢さん」
「え、そうなの?私もいいと思います」
店員さんに誉められ、担当の人も驚いている。
「とっても似合うじゃない、これ羽織ってみてよ」
コートを手に取り、着てみるとすっかり大人のようになってしまった。
「とても素敵ね!似合うじゃない?」
「そうですか……!私にもぴったりでいいと思うんです!」
「店員さん、今のところの彼女が身に付けている服でおいくらぐらいですか?」
「えーとですね、ざっとですが三万円を越えていていると思います」
「とほほ……給料日までの辛抱だな」
ガックリと肩が落ちる警部とウキウキする二人
「お嬢さん、とてもお似合いですよ。このあと何かあるんですか?」
「彼氏とのデートするんだって言うんです……」
「デート?それは愛でたいですね。では少しだけ割引しましようか?」
「ぜひ、お願いする!」
「貴方が財布係なのね、少しだけなら出来ます。ほんの少しだけですよ」
「私はデートなんかじゃないです!!彼とは……」
「こんな感じなんですよ。素直になれない子ですね」
「彼と頑張ってくださいね!」
「だから……そんなんじゃ……」
「お会計に進みましょ!」
「ちょっと!?」
クレアモールの町内、明るく外灯は光る。場面は変わって主人公は
「少年、これが良いだろう!きっとピッタリだ」
「革ジャン?デザインも良いけど……」
渡されたとおり、腕を通しチャックやベルトを締める。
「鏡を見てごらん」
「これが……自分!?」
「そうだ。男になっただろう?」
「体にフィットするし、動かしやすいですね!」
全身を見渡すと、牛革の渋い革ジャン、ズボンには動きやすく軽い膝や足を守るプロテクターのようなものが内部に備わっている。まさに「高校生」を通り過ぎたような格好だが、主人公はとても気に入った。
「これにするよ!おじちゃん」
「そうか、気に入ってくれたのか……良かった!」
「せっかくなんだから、俺の次に乗る時のヘルメット買いに行くぞ」
「それだと時間が無くなりますよ!」
「時間に間に合わせるようにするよ、お会計を済まして二件目行くぞ」
「二件目って、一つ一つの事であってもそんな言い方しないでくださいよー」
お会計は彼女達よりも下回ったが、ヘルメットを買うと彼女を上回った。
「どんな感じのがいい?」
「普通なタイプや、尖った面白いもの、コルクはお勧めしない。フルフェイスで視界が良く見えて、夜間及び光や暗闇に強いものを選ぶんだ。 自分に合うものを見つけるのが大事だぞ!」
「こんなにお金使わせてスミマセン……」
「問題ない……心配いらないよ」
「分かりました……ではこれで、視界の所を交換して見やすくお願いします……」
「色々と種類ありますが、カラーとかどうします?」
「それじゃあ、外側黄色で内側黒色で視界が綺麗なもので」
「タイプですね、分かりました。しばらくお待ちください」
「お前、センスが良いな。あのタイプを選ぶとは良いじゃないか」
「直感で選んだだけですよ、何か未来に繋げられれば良いです」
「未来?将来きっといいバイク乗りになるよ」
「おじさんから車?とかバイクの運転見てたけど覚えていい?」
「あぁ!見て盗んでみろ!ハハハ!」
場は和み、お会計へと進む。どちらも買い物を終えて集合場所へ向かう。
「これは私のメモです。大きくなったら取りに来てください」
「これがおじさんの住所と電話番号かな、大事に取っとくよ、ありがとう」
「失くさないようにな、このバイクとお前のヘルメットを保管してるから」
「ねぇおじさん、何で後ろにパイプ三本着いてるの?」
「これはマフラーと言って、エンジンから出た空気を出すものなんだ。ここのパーツが変わればエンジン音や燃費など良くなるよ」
「じゃあ、左のレバーは?右のレバーばかり使ってるけど」
「これはクラッチ、エンジンとギアを繋げるものだ。このバイクはマニュアル車と言って自分でギアを変えれるんだ。一定数の回転になると次のギアに変えなければいけない。信号で止まる時はスピードを緩めながら、ギアも落としていくんだ」
「マニュアル車……面白そう……」
「興味を持つことは良いことだ。何でも質問してくれよ」
「分かった、じゃあこの部品は何?」
「それはね……」
主人公はすっかりバイクや車に興味をそそられた。地上に出てから色んなものに興味をもったがこれだけは離せなかった。
「俺の今月の所持金が……」
「来週、給料日じゃないの、大体飲み会とかで使いすぎなのよ」
「お前みたいな飲めない奴に言われたかねぇよ」
「私だって飲むわよ、ただ無駄遣いはしないだけ」
「コイツめ!」
「話変わるけどあの子は?」
「あぁコンビニで飲み物買ってこいってお金渡しといたよ」
「あの子一人で?可哀想に」
「アイツはしっかりしてるから問題ねぇ、問題はあの少年のほうだ。何だか署を走り回って彼女の元へ行ったとか言ってたぜ、管理はどうしてるんだ?」
「私とあの子の所に来たわ、でも何故場所がわかったのかしら」
「俺の方が聞きてぇよ、これに関しては俺の責任らしいからよ」
「あの子が帰ってきたら聞いてみましょう」
「あの子と関係あんのか?」
「……分からないわ」
「だったら!」
「今、戻ったよ!はいこれ」
彼女は二人に渡したのはボトルのコーヒー二つだった
「何買ったの?」
「ミルクティーだよ。地下では飲めなくて、飲んでみたいと思ってたミルクティーしたの」
「ブラックか……」
「悪かった?」
「いいや、今日、同僚からもコーヒー貰ってよ、三本目だ」
「いくらなんでも飲み過ぎ、その穢れた顔がもっと酷くなるわよ」
「穢れだと?この道五年を舐めるな」
「あら五年しても昇格出来なかったの?」
「お前だって同じだろうが!」
「私は人員確保のために三年で上がってきたのよ」
「それにしては腕は無さそうだな」
「留年して留まっているヤツには言われたくはないわ」
「ねぇ警部さん、集合場所へ行かないと」
「集合場所はここだぞ」
「え!?でも観光処って?」
「地名は知らなかったのか?ここは浅草といって有名なところだぞ」
「あさくさ?あの?」
「そうよ、浅草寺だったり、雷門とか色々あるわよ」
「へぇー!面白そうですね」
「そうね、あと近くの映画館予約しといたから二人で行ってらっしゃい!」
「映画?」
「そうよ、ロマンス系のやつよ、二人には知ってほしくてね」
「警部さんと貴方はどうするの?」
「そこら辺でも歩いてるわ、映画が終わったらお金渡すから二人で食べ歩きとか楽しみなさいね!」
「二人きりってことですか!?」
「当たり前じゃない、チャンスよチャンス!」
「で、でも……心の準備が……」
「しっかりしなさいよ、綺麗な服と綺麗なお顔が台無しよ。ほら、あの子来たよ!元気出しなさいね」
「え!?もしかしてあれなの?」
「あの運転手め、アイツをバイク乗りにさせやがって!」
そこへやって来たのは、牛革製のジャケットにゴツい作業着のようなしっかりとしているズボンに、大きめのショルダーバッグを背負っている主人公の姿だった。
「あちゃーこれは駄目だな……」
近付くにつれて手を振ってくる。彼の表情はとても賑やかなだった。
「待たせたね!彼女、綺麗になったじゃないか!結構似合ってるよ」
彼女は顔が照りながらも主人公の方をチラチラ見る。
「貴方こそ、凄く変わったじゃない。まるでおじさんみたいになっちゃってるけどね」
「おじさんだって!?これでも動きやすくて良いんだよ」
「貴方がそれで良いなら良いけど……私達、まだ中学ちょっとなんだよ」
「中学?そんな事よりも何処か行こうぜ」
警部は運転手に近付き、脅す。ポケットから領収書を渡し、警部は腰を抜かしそうになる。
「運転手さん、この子にはもっと他の服が似合うんじゃない?この子はまるで八十年代、九十年代みたいになっちゃって、可哀想よ」
「ちゃんと話はしましたよ、でも彼はこれが良いと言うんです。たまたまそうなっちゃっただけだと思いますね」
「まぁ、大変ね」
「それにしても、良い上品ではないか!似合ってるぞ」
「じゃあ、これからの流れを話すわ。君と彼はこのあと映画館に行って見たあとに二人で観光しなさいね、お金は渡すわ」
「うん、ありがとう」
「担当の人……こんなにいいの?」
「貴方がリードしていきなさいよ」
「私とポンコツ警部は何処か歩いてるわ、何かあったらこれに電話してね」
「でも電話機無いよ、どうするの?」
「近くにある公衆電話から連絡して、使い方分かるでしょ」
「はい、ありがとうございます。」
「映画館はこの道を真っ直ぐ行って左角を曲がれば看板見えるからそこよ。チケットはこれね」
担当の人からチケットが渡され、彼女には二人分のお金が入った財布を渡された。
「じゃあね、楽しんでね」
「はい、ありがとうございました!」
「俺達の事は気にすんな、楽しめよ」
「ありがとう。警部さん」
「彼女と仲良くな!」
「運転手さん、今までありがとう。!」
「いえいえ、楽しんで貰えば大丈夫だ」
警部さん、担当の人、運転手の人とは別れ、夜の街に二人は投げ出された。
「じゃあ、行こうか!」
「待って!何か感じるわ」
「感じるって何?」
彼女は何かを感じ、頭の中の現実と同じ空間を生成し、大まかな位置を特定した。
「もしかして……あの助手の人!?」
「どうした?助手の人がどうしたっていうんだ?」
「あの人達はもう行ったわね、ここで、話しましょう」
彼女は頭を指差し、主人公は合図した。二人は映画館へ歩いて行く。
「私の感が正しければ約三百メートル先に車から降りた助手とその手下と思われる人物が居るわ」
「あの助手が!?手下って何だよ」
「貴方、アイツは助手なんかじゃないわ、国独自の特殊部隊、又は上位クラスの研究員でもあるヤツよ、最初から私達を狙って動いているのよ、それで今私達を捕らえようとしてくるわ」
「何だと!?僕らを捕まえに来たと言うのか!」
「そうね、手下というよりは仲間かもしれないわ」
「逃げなければ!」
「その心配はまだ分からないわ」
「だとしても奴等は僕らを本気出して来るんだろ!国の奴等だぞ!」
「逃げれないのよ、何処へ行こうと……」
「どうゆうことだ?」
「貴方は知らないだろうけど、全ては計画どおり、全てはコントロール、プログラムされてある」
「一体何を言い出すんだ?君は……?」
「……。」
「正気になれ!大丈夫かよ」
主人公は彼女の前に立ち、肩を揺さぶる。
「君は生きてもらわなければいけないんだよ!僕もだけど大切な友達なんだぞ!しっかりしてくれよ……」
彼女はハッと気が戻り、主人公に謝る。ホッとした主人公は背中を擦り、映画館へ一緒に導いた。
「何をしようと敵わないが君の味方だからな、何でも頼ってくれ」
「ごめんなさい……私、変な事ばかり……」
「全然大丈夫さ、なーに、心配要らないよ」
「貴方を困らせてるんじゃないかと……」
「全然だよ、君以外相棒的な存在は居ないから頼らせてね。」
「君以外って……私しか居ないの?」
「当たり前じゃねぇか、君以外誰が居るっていうのさ……」
「それじゃあ、付き合ってよ!」
「付き合ってって……友達として付き合えば良いのか?ならとっくに長い付き合いじゃねぇのか?ペア組まれてからよ」
「そうゆう解釈!?もっと別にあるんじゃないの?」
「別?それしか僕には無いよ」
「積極的だけど「恋愛」とか無いの?」
「恋愛?いつかはしてみたいよ……でもあまり分からない」
「してみたいの?じゃあ私としようよ」
「君と?」
「そうよ、友達同士よりも良いけど友達よりも上の関係になろうよ!」
「友達より上?友以上に仲が良い関係ってこと?」
「そうよ、良いでしょ?」
「確かに……君と友達以上の仲なら良いかも」
「それじゃ、決定ね!」
「こんな感じで良いのかな?」
「どんな感じにしても良いじゃないの」
「改めてこれからも宜しくね、彼女!」
「こちらこそ宜しくね主人公君!!」
主人公は段々と彼女を理解していき、仲がこれまで以上に深まっていく。 彼女はとてもの緊張が解けて行く感じがして、心救われた。自然と距離は近付いていく、手が触れようとなるが何故か近付いたり遠退いたりする。
「ここが映画館か……!!」
「そうみたいね、とても大きいね」
「中へ行こうか」
映画館の扉を開けるとそこは甘いポップコーンの香りと共に大迫力の宣伝で流れるスクリーンがあり、二人はとても心踊らされる。
「私は小学生の頃が来たのが最後かな?貴方は?」
「これを言うのは残念だがあの施設より前の記憶無いんだ。すまない」
「そうだったね、ごめんなさい……」
「いやいや、買ってくれたチケットというのはどの映画かな?」
「そうね……あのゲートの近くの人に聞いてみようよ」
「確かに、言ってみよう!」
ゲートと言うのはチケットの確認をする店員さんだ。二人共、余り分からず知識もこれに関しては無かった。聞いてみるとあと十五分程で上映らしい。ポップコーンやジュースの存在を聞かされ、興味津々だった。
「この子達……もしかして田舎っ子なのか……?」
二人は受け付けに向かい、ポップコーンやジュースを購入した。
「これがポップコーン!とてもいい匂いがするよ!」
「キャラメル味だってさ、美味しそうだね」
「一つだけでも大丈夫かな?」
「平気平気、家族でも行ったけど余ったから」
「でもこんな量……」
「何とかなるよ」
「そうだといいけどね」
タッチパネルで座る席を決め、チケットを握りしめて向かった。
「ひろーい!迫力あるね」
「音が凄いね、音質も良いし、大きなスクリーンがある」
二人の選んだ座席は結構後ろの方で、自分達よりも後ろには人は居なかった
「耳大丈夫か?鼓膜を破れないようにね」
「どっちの耳の事言ってるの?今隠してるんだからそんな事言わないで」
「はいよ」
「ったく……あ!」
「どうした?」
「貴方、注射打たれてから六時間経ったけど何か異変無い?大丈夫?」
「大丈夫だ!問題ないよ」
「良かった、私の場合は六時間後に緊急で抑え込まれたらしいけど、貴方は大丈夫なのね……」
「変化か異変ね……そういえばだけど何か敏感になったというか、小さな変化とか、空気が分かるようになった気がするよ」
「それよそれ、異変っていうのはそのことよ」
「でもこれは能力じゃあるまい……どうせ僕の鈍感だよ」
「そうなの?それじゃあ今、奴等は何処ら辺に居るの?」
「奴等ってさっき君が言ってた助手か誰かだろう……?」
目を瞑り考える。彼女よりも広範囲で展開し、奴等と思われる人間を探る。道という道が頭に入り込み、記憶していく。その導き出した答えは!?
「多分だけど商店街の方で聞き込みをしているね、僕と君の顔の写真を見せてるよ。場所はここより北西の六百メートル先だ」
「正解!良く分かったわね」
「当たったの?これが能力なの?」
「具体的に言えばそうなるね、些細なことでも何でも分かれば自然と出て来ると思うよ」
「自然と?環境に合わせていくから?」
「まぁそんな感じよ、詳しいことは分からないけどね……」
「君は一体?」
「知らないわよ……ただの人間よ」
「なら良かった!僕も同じだね」
「そうね……」
(あの出来事は幻だったというのかしら……)
「どうしたの?後ろ向いて」
「何でも無い。もうすぐで映画始まるよ、ポップコーン開けるね」
彼女は膝上にポップコーンを置いてゆっくりと容器を開けた。
「おー!良い香りだ!」
「……!!何だか懐かしい感じがするなぁ」
「昔の記憶かい?」
「そうね、懐かしい……」
付近の電気が消えて、スクリーンに大きく映し出される。
「映画泥棒?変なキャラも居るもんだな」
「日本の映画はほぼあれから始まるのよ、ルールだからね」
二人はポップコーンを摘みながら、約一時間半となるドラマ映画を観た。
「西映?波の表現、かっこいいな」
「こら、そんなこと言っちゃだめよ。何かに倒されるわ」
「そうだったな。関わっちゃいけないところに手を出しそうになったよ」
「もうとっくに出してますけどね……」
その映画はとてもロマンチックで二人の男女が離れ離れになり、また再会しようとするも会えないという遠い日を描いたドラマ映画だ。(作、筆者)
「多分だけどこのあと、後ろからナンパされるわ」
「映画の先を読んでも楽しくないだろ……あ!ホントだった」
「ね、言ったでしょ?」
「楽しくなくなるようなこと言わないでくれよ、ネタバレじゃないか」
「ヘヘー!じゃああの男の人の行方も分かるよ」
「やめてくれ、聞きたくない」
「分かった、やめるよ」
二人の時間は長く思われたがとても短いひと時だった。
「これが、ずっと続けば良いのにな……」
彼の姿を見ながらそう心で思った。
「え、そうなの?私もいいと思います」
店員さんに誉められ、担当の人も驚いている。
「とっても似合うじゃない、これ羽織ってみてよ」
コートを手に取り、着てみるとすっかり大人のようになってしまった。
「とても素敵ね!似合うじゃない?」
「そうですか……!私にもぴったりでいいと思うんです!」
「店員さん、今のところの彼女が身に付けている服でおいくらぐらいですか?」
「えーとですね、ざっとですが三万円を越えていていると思います」
「とほほ……給料日までの辛抱だな」
ガックリと肩が落ちる警部とウキウキする二人
「お嬢さん、とてもお似合いですよ。このあと何かあるんですか?」
「彼氏とのデートするんだって言うんです……」
「デート?それは愛でたいですね。では少しだけ割引しましようか?」
「ぜひ、お願いする!」
「貴方が財布係なのね、少しだけなら出来ます。ほんの少しだけですよ」
「私はデートなんかじゃないです!!彼とは……」
「こんな感じなんですよ。素直になれない子ですね」
「彼と頑張ってくださいね!」
「だから……そんなんじゃ……」
「お会計に進みましょ!」
「ちょっと!?」
クレアモールの町内、明るく外灯は光る。場面は変わって主人公は
「少年、これが良いだろう!きっとピッタリだ」
「革ジャン?デザインも良いけど……」
渡されたとおり、腕を通しチャックやベルトを締める。
「鏡を見てごらん」
「これが……自分!?」
「そうだ。男になっただろう?」
「体にフィットするし、動かしやすいですね!」
全身を見渡すと、牛革の渋い革ジャン、ズボンには動きやすく軽い膝や足を守るプロテクターのようなものが内部に備わっている。まさに「高校生」を通り過ぎたような格好だが、主人公はとても気に入った。
「これにするよ!おじちゃん」
「そうか、気に入ってくれたのか……良かった!」
「せっかくなんだから、俺の次に乗る時のヘルメット買いに行くぞ」
「それだと時間が無くなりますよ!」
「時間に間に合わせるようにするよ、お会計を済まして二件目行くぞ」
「二件目って、一つ一つの事であってもそんな言い方しないでくださいよー」
お会計は彼女達よりも下回ったが、ヘルメットを買うと彼女を上回った。
「どんな感じのがいい?」
「普通なタイプや、尖った面白いもの、コルクはお勧めしない。フルフェイスで視界が良く見えて、夜間及び光や暗闇に強いものを選ぶんだ。 自分に合うものを見つけるのが大事だぞ!」
「こんなにお金使わせてスミマセン……」
「問題ない……心配いらないよ」
「分かりました……ではこれで、視界の所を交換して見やすくお願いします……」
「色々と種類ありますが、カラーとかどうします?」
「それじゃあ、外側黄色で内側黒色で視界が綺麗なもので」
「タイプですね、分かりました。しばらくお待ちください」
「お前、センスが良いな。あのタイプを選ぶとは良いじゃないか」
「直感で選んだだけですよ、何か未来に繋げられれば良いです」
「未来?将来きっといいバイク乗りになるよ」
「おじさんから車?とかバイクの運転見てたけど覚えていい?」
「あぁ!見て盗んでみろ!ハハハ!」
場は和み、お会計へと進む。どちらも買い物を終えて集合場所へ向かう。
「これは私のメモです。大きくなったら取りに来てください」
「これがおじさんの住所と電話番号かな、大事に取っとくよ、ありがとう」
「失くさないようにな、このバイクとお前のヘルメットを保管してるから」
「ねぇおじさん、何で後ろにパイプ三本着いてるの?」
「これはマフラーと言って、エンジンから出た空気を出すものなんだ。ここのパーツが変わればエンジン音や燃費など良くなるよ」
「じゃあ、左のレバーは?右のレバーばかり使ってるけど」
「これはクラッチ、エンジンとギアを繋げるものだ。このバイクはマニュアル車と言って自分でギアを変えれるんだ。一定数の回転になると次のギアに変えなければいけない。信号で止まる時はスピードを緩めながら、ギアも落としていくんだ」
「マニュアル車……面白そう……」
「興味を持つことは良いことだ。何でも質問してくれよ」
「分かった、じゃあこの部品は何?」
「それはね……」
主人公はすっかりバイクや車に興味をそそられた。地上に出てから色んなものに興味をもったがこれだけは離せなかった。
「俺の今月の所持金が……」
「来週、給料日じゃないの、大体飲み会とかで使いすぎなのよ」
「お前みたいな飲めない奴に言われたかねぇよ」
「私だって飲むわよ、ただ無駄遣いはしないだけ」
「コイツめ!」
「話変わるけどあの子は?」
「あぁコンビニで飲み物買ってこいってお金渡しといたよ」
「あの子一人で?可哀想に」
「アイツはしっかりしてるから問題ねぇ、問題はあの少年のほうだ。何だか署を走り回って彼女の元へ行ったとか言ってたぜ、管理はどうしてるんだ?」
「私とあの子の所に来たわ、でも何故場所がわかったのかしら」
「俺の方が聞きてぇよ、これに関しては俺の責任らしいからよ」
「あの子が帰ってきたら聞いてみましょう」
「あの子と関係あんのか?」
「……分からないわ」
「だったら!」
「今、戻ったよ!はいこれ」
彼女は二人に渡したのはボトルのコーヒー二つだった
「何買ったの?」
「ミルクティーだよ。地下では飲めなくて、飲んでみたいと思ってたミルクティーしたの」
「ブラックか……」
「悪かった?」
「いいや、今日、同僚からもコーヒー貰ってよ、三本目だ」
「いくらなんでも飲み過ぎ、その穢れた顔がもっと酷くなるわよ」
「穢れだと?この道五年を舐めるな」
「あら五年しても昇格出来なかったの?」
「お前だって同じだろうが!」
「私は人員確保のために三年で上がってきたのよ」
「それにしては腕は無さそうだな」
「留年して留まっているヤツには言われたくはないわ」
「ねぇ警部さん、集合場所へ行かないと」
「集合場所はここだぞ」
「え!?でも観光処って?」
「地名は知らなかったのか?ここは浅草といって有名なところだぞ」
「あさくさ?あの?」
「そうよ、浅草寺だったり、雷門とか色々あるわよ」
「へぇー!面白そうですね」
「そうね、あと近くの映画館予約しといたから二人で行ってらっしゃい!」
「映画?」
「そうよ、ロマンス系のやつよ、二人には知ってほしくてね」
「警部さんと貴方はどうするの?」
「そこら辺でも歩いてるわ、映画が終わったらお金渡すから二人で食べ歩きとか楽しみなさいね!」
「二人きりってことですか!?」
「当たり前じゃない、チャンスよチャンス!」
「で、でも……心の準備が……」
「しっかりしなさいよ、綺麗な服と綺麗なお顔が台無しよ。ほら、あの子来たよ!元気出しなさいね」
「え!?もしかしてあれなの?」
「あの運転手め、アイツをバイク乗りにさせやがって!」
そこへやって来たのは、牛革製のジャケットにゴツい作業着のようなしっかりとしているズボンに、大きめのショルダーバッグを背負っている主人公の姿だった。
「あちゃーこれは駄目だな……」
近付くにつれて手を振ってくる。彼の表情はとても賑やかなだった。
「待たせたね!彼女、綺麗になったじゃないか!結構似合ってるよ」
彼女は顔が照りながらも主人公の方をチラチラ見る。
「貴方こそ、凄く変わったじゃない。まるでおじさんみたいになっちゃってるけどね」
「おじさんだって!?これでも動きやすくて良いんだよ」
「貴方がそれで良いなら良いけど……私達、まだ中学ちょっとなんだよ」
「中学?そんな事よりも何処か行こうぜ」
警部は運転手に近付き、脅す。ポケットから領収書を渡し、警部は腰を抜かしそうになる。
「運転手さん、この子にはもっと他の服が似合うんじゃない?この子はまるで八十年代、九十年代みたいになっちゃって、可哀想よ」
「ちゃんと話はしましたよ、でも彼はこれが良いと言うんです。たまたまそうなっちゃっただけだと思いますね」
「まぁ、大変ね」
「それにしても、良い上品ではないか!似合ってるぞ」
「じゃあ、これからの流れを話すわ。君と彼はこのあと映画館に行って見たあとに二人で観光しなさいね、お金は渡すわ」
「うん、ありがとう」
「担当の人……こんなにいいの?」
「貴方がリードしていきなさいよ」
「私とポンコツ警部は何処か歩いてるわ、何かあったらこれに電話してね」
「でも電話機無いよ、どうするの?」
「近くにある公衆電話から連絡して、使い方分かるでしょ」
「はい、ありがとうございます。」
「映画館はこの道を真っ直ぐ行って左角を曲がれば看板見えるからそこよ。チケットはこれね」
担当の人からチケットが渡され、彼女には二人分のお金が入った財布を渡された。
「じゃあね、楽しんでね」
「はい、ありがとうございました!」
「俺達の事は気にすんな、楽しめよ」
「ありがとう。警部さん」
「彼女と仲良くな!」
「運転手さん、今までありがとう。!」
「いえいえ、楽しんで貰えば大丈夫だ」
警部さん、担当の人、運転手の人とは別れ、夜の街に二人は投げ出された。
「じゃあ、行こうか!」
「待って!何か感じるわ」
「感じるって何?」
彼女は何かを感じ、頭の中の現実と同じ空間を生成し、大まかな位置を特定した。
「もしかして……あの助手の人!?」
「どうした?助手の人がどうしたっていうんだ?」
「あの人達はもう行ったわね、ここで、話しましょう」
彼女は頭を指差し、主人公は合図した。二人は映画館へ歩いて行く。
「私の感が正しければ約三百メートル先に車から降りた助手とその手下と思われる人物が居るわ」
「あの助手が!?手下って何だよ」
「貴方、アイツは助手なんかじゃないわ、国独自の特殊部隊、又は上位クラスの研究員でもあるヤツよ、最初から私達を狙って動いているのよ、それで今私達を捕らえようとしてくるわ」
「何だと!?僕らを捕まえに来たと言うのか!」
「そうね、手下というよりは仲間かもしれないわ」
「逃げなければ!」
「その心配はまだ分からないわ」
「だとしても奴等は僕らを本気出して来るんだろ!国の奴等だぞ!」
「逃げれないのよ、何処へ行こうと……」
「どうゆうことだ?」
「貴方は知らないだろうけど、全ては計画どおり、全てはコントロール、プログラムされてある」
「一体何を言い出すんだ?君は……?」
「……。」
「正気になれ!大丈夫かよ」
主人公は彼女の前に立ち、肩を揺さぶる。
「君は生きてもらわなければいけないんだよ!僕もだけど大切な友達なんだぞ!しっかりしてくれよ……」
彼女はハッと気が戻り、主人公に謝る。ホッとした主人公は背中を擦り、映画館へ一緒に導いた。
「何をしようと敵わないが君の味方だからな、何でも頼ってくれ」
「ごめんなさい……私、変な事ばかり……」
「全然大丈夫さ、なーに、心配要らないよ」
「貴方を困らせてるんじゃないかと……」
「全然だよ、君以外相棒的な存在は居ないから頼らせてね。」
「君以外って……私しか居ないの?」
「当たり前じゃねぇか、君以外誰が居るっていうのさ……」
「それじゃあ、付き合ってよ!」
「付き合ってって……友達として付き合えば良いのか?ならとっくに長い付き合いじゃねぇのか?ペア組まれてからよ」
「そうゆう解釈!?もっと別にあるんじゃないの?」
「別?それしか僕には無いよ」
「積極的だけど「恋愛」とか無いの?」
「恋愛?いつかはしてみたいよ……でもあまり分からない」
「してみたいの?じゃあ私としようよ」
「君と?」
「そうよ、友達同士よりも良いけど友達よりも上の関係になろうよ!」
「友達より上?友以上に仲が良い関係ってこと?」
「そうよ、良いでしょ?」
「確かに……君と友達以上の仲なら良いかも」
「それじゃ、決定ね!」
「こんな感じで良いのかな?」
「どんな感じにしても良いじゃないの」
「改めてこれからも宜しくね、彼女!」
「こちらこそ宜しくね主人公君!!」
主人公は段々と彼女を理解していき、仲がこれまで以上に深まっていく。 彼女はとてもの緊張が解けて行く感じがして、心救われた。自然と距離は近付いていく、手が触れようとなるが何故か近付いたり遠退いたりする。
「ここが映画館か……!!」
「そうみたいね、とても大きいね」
「中へ行こうか」
映画館の扉を開けるとそこは甘いポップコーンの香りと共に大迫力の宣伝で流れるスクリーンがあり、二人はとても心踊らされる。
「私は小学生の頃が来たのが最後かな?貴方は?」
「これを言うのは残念だがあの施設より前の記憶無いんだ。すまない」
「そうだったね、ごめんなさい……」
「いやいや、買ってくれたチケットというのはどの映画かな?」
「そうね……あのゲートの近くの人に聞いてみようよ」
「確かに、言ってみよう!」
ゲートと言うのはチケットの確認をする店員さんだ。二人共、余り分からず知識もこれに関しては無かった。聞いてみるとあと十五分程で上映らしい。ポップコーンやジュースの存在を聞かされ、興味津々だった。
「この子達……もしかして田舎っ子なのか……?」
二人は受け付けに向かい、ポップコーンやジュースを購入した。
「これがポップコーン!とてもいい匂いがするよ!」
「キャラメル味だってさ、美味しそうだね」
「一つだけでも大丈夫かな?」
「平気平気、家族でも行ったけど余ったから」
「でもこんな量……」
「何とかなるよ」
「そうだといいけどね」
タッチパネルで座る席を決め、チケットを握りしめて向かった。
「ひろーい!迫力あるね」
「音が凄いね、音質も良いし、大きなスクリーンがある」
二人の選んだ座席は結構後ろの方で、自分達よりも後ろには人は居なかった
「耳大丈夫か?鼓膜を破れないようにね」
「どっちの耳の事言ってるの?今隠してるんだからそんな事言わないで」
「はいよ」
「ったく……あ!」
「どうした?」
「貴方、注射打たれてから六時間経ったけど何か異変無い?大丈夫?」
「大丈夫だ!問題ないよ」
「良かった、私の場合は六時間後に緊急で抑え込まれたらしいけど、貴方は大丈夫なのね……」
「変化か異変ね……そういえばだけど何か敏感になったというか、小さな変化とか、空気が分かるようになった気がするよ」
「それよそれ、異変っていうのはそのことよ」
「でもこれは能力じゃあるまい……どうせ僕の鈍感だよ」
「そうなの?それじゃあ今、奴等は何処ら辺に居るの?」
「奴等ってさっき君が言ってた助手か誰かだろう……?」
目を瞑り考える。彼女よりも広範囲で展開し、奴等と思われる人間を探る。道という道が頭に入り込み、記憶していく。その導き出した答えは!?
「多分だけど商店街の方で聞き込みをしているね、僕と君の顔の写真を見せてるよ。場所はここより北西の六百メートル先だ」
「正解!良く分かったわね」
「当たったの?これが能力なの?」
「具体的に言えばそうなるね、些細なことでも何でも分かれば自然と出て来ると思うよ」
「自然と?環境に合わせていくから?」
「まぁそんな感じよ、詳しいことは分からないけどね……」
「君は一体?」
「知らないわよ……ただの人間よ」
「なら良かった!僕も同じだね」
「そうね……」
(あの出来事は幻だったというのかしら……)
「どうしたの?後ろ向いて」
「何でも無い。もうすぐで映画始まるよ、ポップコーン開けるね」
彼女は膝上にポップコーンを置いてゆっくりと容器を開けた。
「おー!良い香りだ!」
「……!!何だか懐かしい感じがするなぁ」
「昔の記憶かい?」
「そうね、懐かしい……」
付近の電気が消えて、スクリーンに大きく映し出される。
「映画泥棒?変なキャラも居るもんだな」
「日本の映画はほぼあれから始まるのよ、ルールだからね」
二人はポップコーンを摘みながら、約一時間半となるドラマ映画を観た。
「西映?波の表現、かっこいいな」
「こら、そんなこと言っちゃだめよ。何かに倒されるわ」
「そうだったな。関わっちゃいけないところに手を出しそうになったよ」
「もうとっくに出してますけどね……」
その映画はとてもロマンチックで二人の男女が離れ離れになり、また再会しようとするも会えないという遠い日を描いたドラマ映画だ。(作、筆者)
「多分だけどこのあと、後ろからナンパされるわ」
「映画の先を読んでも楽しくないだろ……あ!ホントだった」
「ね、言ったでしょ?」
「楽しくなくなるようなこと言わないでくれよ、ネタバレじゃないか」
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彼の姿を見ながらそう心で思った。
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