1 / 12
プロローグ
しおりを挟む
「何かがおかしい」と、心から思うようになったのは一体いつからなのか。
物心がついた時から暮らしている伊勢会津市は、何かがおかしかった。
いや、『何かがおかしいと昔は思っていなかった』と言った方が正しいのだろうか。
つまるところ、歳を重ねる毎におかしさに気づいたと言うべきかもしれない。
サンタは実在するかと問えば、大体の人は「そりゃオメーの親御さんだぞ」とさらっと子供の夢をぶち壊すところだろうが、この都市では『誰もそれを疑わない』のである。正確には『俺以外』誰も疑っていない…というか、いる。
…誰が? サンタが、である。
クリスマスイブの夜に、トナカイが牽いているソリに乗って、紅白の防寒着とナイトキャップのようなものを被った、空を駆けるひげもじゃのおじいさんが、確実に視認できるのだ。
マンガやアニメの世界で見るように「フォッフォッフォ」と笑ってすらいる。なんだったらこのおじいさん、俺の家から5軒ほど離れたところに一軒家を構えて住んでいる。
表札には三田と書いているが、どうあがいてもサンタとしか読めない。でも誰もこのお方がサンタだとは思っていない。定年後の余生をのんびり過ごす、どこにでもいるご老人…それが周囲の認識。
これだけではない。うちのお隣さんに江風さんというそれはそれは美男美女のご夫婦がお住まいなのだが、こっちはもう疑いようもなく二次元の世界にいるエルフである。
商店街に精肉店を構える大貝さんは、日本人とは思えない程筋骨隆々で身の丈2mは超えている。お分かりいただけただろうか、こちらはオーガである。多分。
街の郊外にひっそりと佇む伊勢会津稲荷神社、そこの娘さんで俺の同級生だった玉藻曜子。…最早ここまで来ると隠す気は一切無いとお見受けします。逆に潔い。
…とまぁこんな感じで、風貌と名前で何もかも察せるイージー仕様になっているにも関わらず、だーれも変だとは思ってないのである。
…というかこの口調疲れるんで普通に戻すよ? いいね?
とにかくこの『名は体を表す』辺りから始まった違和感は、最終的に街全体に対して抱いてしまう。
まず学校が小中高大とエスカレーター式になっている。…あ、高校卒業すればそのエスカレーターは降りていいんだけども。まぁこれは割と無くはないシステムではある。
何がおかしいのか、それはここが『特例を除き、他都市からの編入を認めていない』という事だ。ぶっちゃけて言うとここの学生は全て伊勢会津市民だけで構成されている…だけならまだしも、教職員に至るまで自給自足。
これは完全に閉鎖空間ですねぇ…と、某限定的超能力者のような事も言いたくなるだろこんなもん。
あと基本的に伊勢会津市から出る場合は許可が必要になる。学校のはもちろん、市役所にもだ。出身市から出て観光をしたいと思ってもこのめんどくさい手順が待ってると思うだけで避けたくなる。
そして過去に一度だけ中学生の時に、このめんどくさい手順をがっつり踏んだ上でよその街へと家族と1泊旅行をキメた時、俺は運悪く街の人混みの中で同い年ぐらいの人と肩がぶつかってしまった。
中学生と言えばイキりたい盛りと言うかオラオラしたいと言うか、まぁヤンチャ故にこういうド定番な文句吹っ掛けてくるじゃないっすか。
「オメェどこ中だよ?!」って。
んで普通に返すじゃないっすか、『どこって伊勢示現中だよ』って。
なんで伊勢会津市なのに伊勢会津中じゃないんだって疑問は俺にも解決できないから諦めてくれ。
…まぁ話の腰を折ってしまったけど、結果として少年とそのお仲間が平謝りしてきました。もう意味わかんないよね!
一緒にいた俺の姉に『なんであんなめっちゃ謝ってくるん?』って聞くよね普通に。
でも返ってくる答えは、俺が今まで親から、学校から、市役所から、ありとあらゆるところで質問して返ってくるものと一緒だった。
『いやーこれはしょうがないからねぇ』
…この言葉の意味するところを知ったのはもう5年も前の話になるけども、これを見ている人にとっては、明日以降に理解の追いつくものとなるだろう…と、どっかで聞いたような〆でこの物語は始まっていくゾ!
物心がついた時から暮らしている伊勢会津市は、何かがおかしかった。
いや、『何かがおかしいと昔は思っていなかった』と言った方が正しいのだろうか。
つまるところ、歳を重ねる毎におかしさに気づいたと言うべきかもしれない。
サンタは実在するかと問えば、大体の人は「そりゃオメーの親御さんだぞ」とさらっと子供の夢をぶち壊すところだろうが、この都市では『誰もそれを疑わない』のである。正確には『俺以外』誰も疑っていない…というか、いる。
…誰が? サンタが、である。
クリスマスイブの夜に、トナカイが牽いているソリに乗って、紅白の防寒着とナイトキャップのようなものを被った、空を駆けるひげもじゃのおじいさんが、確実に視認できるのだ。
マンガやアニメの世界で見るように「フォッフォッフォ」と笑ってすらいる。なんだったらこのおじいさん、俺の家から5軒ほど離れたところに一軒家を構えて住んでいる。
表札には三田と書いているが、どうあがいてもサンタとしか読めない。でも誰もこのお方がサンタだとは思っていない。定年後の余生をのんびり過ごす、どこにでもいるご老人…それが周囲の認識。
これだけではない。うちのお隣さんに江風さんというそれはそれは美男美女のご夫婦がお住まいなのだが、こっちはもう疑いようもなく二次元の世界にいるエルフである。
商店街に精肉店を構える大貝さんは、日本人とは思えない程筋骨隆々で身の丈2mは超えている。お分かりいただけただろうか、こちらはオーガである。多分。
街の郊外にひっそりと佇む伊勢会津稲荷神社、そこの娘さんで俺の同級生だった玉藻曜子。…最早ここまで来ると隠す気は一切無いとお見受けします。逆に潔い。
…とまぁこんな感じで、風貌と名前で何もかも察せるイージー仕様になっているにも関わらず、だーれも変だとは思ってないのである。
…というかこの口調疲れるんで普通に戻すよ? いいね?
とにかくこの『名は体を表す』辺りから始まった違和感は、最終的に街全体に対して抱いてしまう。
まず学校が小中高大とエスカレーター式になっている。…あ、高校卒業すればそのエスカレーターは降りていいんだけども。まぁこれは割と無くはないシステムではある。
何がおかしいのか、それはここが『特例を除き、他都市からの編入を認めていない』という事だ。ぶっちゃけて言うとここの学生は全て伊勢会津市民だけで構成されている…だけならまだしも、教職員に至るまで自給自足。
これは完全に閉鎖空間ですねぇ…と、某限定的超能力者のような事も言いたくなるだろこんなもん。
あと基本的に伊勢会津市から出る場合は許可が必要になる。学校のはもちろん、市役所にもだ。出身市から出て観光をしたいと思ってもこのめんどくさい手順が待ってると思うだけで避けたくなる。
そして過去に一度だけ中学生の時に、このめんどくさい手順をがっつり踏んだ上でよその街へと家族と1泊旅行をキメた時、俺は運悪く街の人混みの中で同い年ぐらいの人と肩がぶつかってしまった。
中学生と言えばイキりたい盛りと言うかオラオラしたいと言うか、まぁヤンチャ故にこういうド定番な文句吹っ掛けてくるじゃないっすか。
「オメェどこ中だよ?!」って。
んで普通に返すじゃないっすか、『どこって伊勢示現中だよ』って。
なんで伊勢会津市なのに伊勢会津中じゃないんだって疑問は俺にも解決できないから諦めてくれ。
…まぁ話の腰を折ってしまったけど、結果として少年とそのお仲間が平謝りしてきました。もう意味わかんないよね!
一緒にいた俺の姉に『なんであんなめっちゃ謝ってくるん?』って聞くよね普通に。
でも返ってくる答えは、俺が今まで親から、学校から、市役所から、ありとあらゆるところで質問して返ってくるものと一緒だった。
『いやーこれはしょうがないからねぇ』
…この言葉の意味するところを知ったのはもう5年も前の話になるけども、これを見ている人にとっては、明日以降に理解の追いつくものとなるだろう…と、どっかで聞いたような〆でこの物語は始まっていくゾ!
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ペット(老猫)と異世界転生
童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女神様、もっと早く祝福が欲しかった。
しゃーりん
ファンタジー
アルーサル王国には、女神様からの祝福を授かる者がいる。…ごくたまに。
今回、授かったのは6歳の王女であり、血縁の判定ができる魔力だった。
女神様は国に役立つ魔力を授けてくれる。ということは、血縁が乱れてるってことか?
一人の倫理観が異常な男によって、国中の貴族が混乱するお話です。ご注意下さい。
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
コンバット
サクラ近衛将監
ファンタジー
藤堂 忍は、10歳の頃に難病に指定されているALS(amyotrophic lateral sclerosis:筋萎縮性側索硬化症)を発症した。
ALSは発症してから平均3年半で死に至るが、遅いケースでは10年以上にわたり闘病する場合もある。
忍は、不屈の闘志で最後まで運命に抗った。
担当医師の見立てでは、精々5年以内という余命期間を大幅に延長し、12年間の壮絶な闘病生活の果てについに力尽きて亡くなった。
その陰で家族の献身的な助力があったことは間違いないが、何よりも忍自身の生きようとする意志の力が大いに働いていたのである。
その超人的な精神の強靭さゆえに忍の生き様は、天上界の神々の心も揺り動かしていた。
かくして天上界でも類稀な神々の総意に依り、忍の魂は異なる世界への転生という形で蘇ることが許されたのである。
この物語は、地球世界に生を受けながらも、その生を満喫できないまま死に至った一人の若い女性の魂が、神々の助力により異世界で新たな生を受け、神々の加護を受けつつ新たな人生を歩む姿を描いたものである。
しかしながら、神々の意向とは裏腹に、転生した魂は、新たな闘いの場に身を投じることになった。
この物語は「カクヨム様」にも同時投稿します。
一応不定期なのですが、土曜の午後8時に投稿するよう努力いたします。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる