17 / 23
第4章・ズンビの恐怖
母は生きていた
しおりを挟む
善三は装置の位置を通り側に固定し、コントロールパネルとハンドルを操作してチョコ型の屋根から円筒状の望遠鏡を空高く伸ばし、ファインダーを覗いて街の様子を偵察した。
潜水艦の潜望鏡を改良した装置であるが、角度と位置を変えて半径3km範囲を捕捉し、先端は湾曲してレンズが雨に濡れないようになっている。
停電で街灯も信号機も消え、付近は静まり返っているが逆に嵐の前の不気味さを醸し出し、善三はゆっくりとハンドルを回して潜望鏡の角度を変え、屋根の上に佇む異様なシルエットを捉えたが距離が遠くてはっきりとは見えない。
操作パネルに小型モニターがあり、通りをパンした時に隼人が人間の頭部を見つけて声を上げ、善三がズームアップにした。
「通りに何か転がっているぞ」
数分前に真紀子が屋根の上から投げ捨てた頭部がアスファルトの水溜りで顔をこっちに向け、通り過ぎる車のライトに照らされて隼人が中島家の奥さんだと教えた。
「隣のおばさんじゃないか?」
直太と善三が窪んだ目と萎れた感じで、脳アメーバを吸われたと指摘して顔を見合わせる。
「ズンビに吸われたな?」
「おじいちゃん。もう、始まっているんだね」
「ああ、街の屋根に不気味な影が見えたが、想像以上に感染は広まっているぞ」
「あ、アレは?俺の部屋に誰かいる」
善三が望遠鏡のハンドルを離した時、レンズが上を向いて水野家の二階の窓を映し、真紀子が佇んでいる姿がチラッと見えた。
「んむ?」
二階の窓に潜望鏡のピントを合わせ、善三が感嘆ともとれる呻き声を漏らし、窓枠に手と足を掛けて屈伸運動をする真紀子の体型とファッションに驚く。
「センスを感じるぞ」
コカコーラの旧ガラス瓶をデフォルメしたグラマラスのボディにブルーのスポーツブラとパープルの巻きスカートを身に付け、コンバースのシューズを履き、真っ赤なルージュで髪はポニーテールにしている。
「ア……アレって、俺の母なのか?」
小型モニターを見て驚く隼人に善三が望遠鏡を覗くように指示し、隼人は複雑な感情を湧き立てて真紀子を覗き見る。
『まるで、アマゾネスの戦士……』
隼人はバスルームで見た皮膚と肉が崩れた化け物から、新たな変貌を遂げた母親を古い映画で観たアマゾンの女戦士に例えたが、かなり美化した感想だった。
真紀子は『肉塊で作られた獣』であり、本能で戦いを好む殺戮者である。しかし善三は想像力のあるズンビと捉え、顎髭を触りながら「間違いない……」と意味深な発言をした。
それには隼人の母親という意味合いと、人間の記憶『母性』があるという希望的観測が含まれた。
「母親の想いが残っているかもな」
「隼人くん。僕にも見せて」
直太が善三の言葉に反応して、隼人に代わって潜望鏡を覗いたが、真紀子は部屋の窓から消えて、向きを変えて探すと屋根に上がって付近を見渡し、偶然にも直太は真紀子と目が合ってビクッとしたが、視線を下げて通りに投げ捨てた頭部を見ている事に気付く。
「きっと脳アメーバを吸って、隣のおばさんの知識を取り込んだんじゃない?」
潜水艦の潜望鏡を改良した装置であるが、角度と位置を変えて半径3km範囲を捕捉し、先端は湾曲してレンズが雨に濡れないようになっている。
停電で街灯も信号機も消え、付近は静まり返っているが逆に嵐の前の不気味さを醸し出し、善三はゆっくりとハンドルを回して潜望鏡の角度を変え、屋根の上に佇む異様なシルエットを捉えたが距離が遠くてはっきりとは見えない。
操作パネルに小型モニターがあり、通りをパンした時に隼人が人間の頭部を見つけて声を上げ、善三がズームアップにした。
「通りに何か転がっているぞ」
数分前に真紀子が屋根の上から投げ捨てた頭部がアスファルトの水溜りで顔をこっちに向け、通り過ぎる車のライトに照らされて隼人が中島家の奥さんだと教えた。
「隣のおばさんじゃないか?」
直太と善三が窪んだ目と萎れた感じで、脳アメーバを吸われたと指摘して顔を見合わせる。
「ズンビに吸われたな?」
「おじいちゃん。もう、始まっているんだね」
「ああ、街の屋根に不気味な影が見えたが、想像以上に感染は広まっているぞ」
「あ、アレは?俺の部屋に誰かいる」
善三が望遠鏡のハンドルを離した時、レンズが上を向いて水野家の二階の窓を映し、真紀子が佇んでいる姿がチラッと見えた。
「んむ?」
二階の窓に潜望鏡のピントを合わせ、善三が感嘆ともとれる呻き声を漏らし、窓枠に手と足を掛けて屈伸運動をする真紀子の体型とファッションに驚く。
「センスを感じるぞ」
コカコーラの旧ガラス瓶をデフォルメしたグラマラスのボディにブルーのスポーツブラとパープルの巻きスカートを身に付け、コンバースのシューズを履き、真っ赤なルージュで髪はポニーテールにしている。
「ア……アレって、俺の母なのか?」
小型モニターを見て驚く隼人に善三が望遠鏡を覗くように指示し、隼人は複雑な感情を湧き立てて真紀子を覗き見る。
『まるで、アマゾネスの戦士……』
隼人はバスルームで見た皮膚と肉が崩れた化け物から、新たな変貌を遂げた母親を古い映画で観たアマゾンの女戦士に例えたが、かなり美化した感想だった。
真紀子は『肉塊で作られた獣』であり、本能で戦いを好む殺戮者である。しかし善三は想像力のあるズンビと捉え、顎髭を触りながら「間違いない……」と意味深な発言をした。
それには隼人の母親という意味合いと、人間の記憶『母性』があるという希望的観測が含まれた。
「母親の想いが残っているかもな」
「隼人くん。僕にも見せて」
直太が善三の言葉に反応して、隼人に代わって潜望鏡を覗いたが、真紀子は部屋の窓から消えて、向きを変えて探すと屋根に上がって付近を見渡し、偶然にも直太は真紀子と目が合ってビクッとしたが、視線を下げて通りに投げ捨てた頭部を見ている事に気付く。
「きっと脳アメーバを吸って、隣のおばさんの知識を取り込んだんじゃない?」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる