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第四章・暗黒エネルギーの流出
ダーク司祭の誕生
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景子は教頭先生の指示で30分程早目に学校を退出し、江国先生の見舞いに行く事になった。学園長・湊香奈江も生真面目な江国の欠勤が気になり、教頭・矢島に指示があった。
「熱があっても休まない人でしたからね。誰か見舞いに行かせなさい」
学園長・湊香奈江は過去に江国が生徒に体罰を与えた問題で退職する事になったが、指導員として復職させている。
「学園長は江国先生の事を気遣っているのですね?」
「江国の母親も教師だったの。私の恩師とも言える人でしたわ」
学園長室で教頭・矢島が質問すると湊香奈江はそう答えた。理事長兼学園長である香奈江は教育界で絶大な権力を持つ成功者であるが、江国は教師としても挫折し、母親の思いを裏切っている。
香奈江はそんな江国則子を不憫に思い、問題を抱え嫌われているのを知りながらも辞めさせるつもりはなかった。
しかし、江国家の和室の仏壇が破壊され、則子が毎日拝んでいた母の写真は倒れてガラスにヒビが入り、足で踏み付けらた形跡がある。
江国則子はあの日から宗派を変え、暗黒の書物『禁断の書』の信者になり、闇の者の声を司祭として崇め、玄関のインターホンが鳴ると、キーボードを打つ手を止めてデスクに盛り上がった黒い蛾に視線を向けた。
『客を招き、信者に誘うのです』
黒い蛾が集合体となり、人の頭部の形になり江国にそう語りかける。その者こそが暗黒の書物をこの世界に甦らせた司祭であった。
玄関前でインターホンを押した藤枝景子の姿が室内の小さなモニター画面に映り、江国はその顔を見て苦々しい表情を浮かべたが、乱れた髪と身なりを整えて笑顔で応対した。
「景子先生ね?」
「はい。お体は大丈夫でしょうか?お見舞いに伺いました」
「今開けますので、暫しお待ち下さい」
江国は散らかった部屋を慌てて片付け、客用のスリッパを用意し、窓を閉め切ってドアも厳重に鍵をしていたのでチェーンと二重ロックを外すのに手間取る。
景子はインターホンの前で背後から冷気を感じ、ブワッと髪が浮き上がってドアの表面に結露の雫が垂れて文字が描かれ、首を傾げて消えゆく水滴を眺めた。
『Go back?』
しかしドアが開いて江国が顔を出して手招き、退散するタイミングを逃す。
「どうぞ。入ってください」
「無理しないでください。これ、教師一同からです」
景子は菓子折りを渡して玄関先で容体だけ聞いて帰ろうとしたが、腕を掴まれて中へ引っ張り込まれ、後ろ髪を引かれる感覚があったがゴーストのサインとは気付いてない。
『ダメだ。戻って』
MOMOEが景子の背中に張り付き、フクロウのペンと一緒に引き戻そうとしたが、景子は靴を脱いでスリッパに履き替え、江国に促されるまま居間に入った。
「そこに座ってください。すぐにお茶を入れますので」
「いえ、お構いなく。病気の方はいかがですか?」
「もう、元気なのよ。明日にも復帰しようと思ってたの」
江国はキッチンでお茶の用意をし、バスルームに黒い蛾が集結しているのをチラッと見た。洗面台の前で、人間の上半身の形状に変貌しているのを鏡に映している。
黒い蛾の重なり合う頬の一部が皮膚になり、暗い穴の眼窩と真っ赤な唇が再現され、景子と一緒に紛れ込んだゴーストの名を呟く。
『MOMOE……』
「熱があっても休まない人でしたからね。誰か見舞いに行かせなさい」
学園長・湊香奈江は過去に江国が生徒に体罰を与えた問題で退職する事になったが、指導員として復職させている。
「学園長は江国先生の事を気遣っているのですね?」
「江国の母親も教師だったの。私の恩師とも言える人でしたわ」
学園長室で教頭・矢島が質問すると湊香奈江はそう答えた。理事長兼学園長である香奈江は教育界で絶大な権力を持つ成功者であるが、江国は教師としても挫折し、母親の思いを裏切っている。
香奈江はそんな江国則子を不憫に思い、問題を抱え嫌われているのを知りながらも辞めさせるつもりはなかった。
しかし、江国家の和室の仏壇が破壊され、則子が毎日拝んでいた母の写真は倒れてガラスにヒビが入り、足で踏み付けらた形跡がある。
江国則子はあの日から宗派を変え、暗黒の書物『禁断の書』の信者になり、闇の者の声を司祭として崇め、玄関のインターホンが鳴ると、キーボードを打つ手を止めてデスクに盛り上がった黒い蛾に視線を向けた。
『客を招き、信者に誘うのです』
黒い蛾が集合体となり、人の頭部の形になり江国にそう語りかける。その者こそが暗黒の書物をこの世界に甦らせた司祭であった。
玄関前でインターホンを押した藤枝景子の姿が室内の小さなモニター画面に映り、江国はその顔を見て苦々しい表情を浮かべたが、乱れた髪と身なりを整えて笑顔で応対した。
「景子先生ね?」
「はい。お体は大丈夫でしょうか?お見舞いに伺いました」
「今開けますので、暫しお待ち下さい」
江国は散らかった部屋を慌てて片付け、客用のスリッパを用意し、窓を閉め切ってドアも厳重に鍵をしていたのでチェーンと二重ロックを外すのに手間取る。
景子はインターホンの前で背後から冷気を感じ、ブワッと髪が浮き上がってドアの表面に結露の雫が垂れて文字が描かれ、首を傾げて消えゆく水滴を眺めた。
『Go back?』
しかしドアが開いて江国が顔を出して手招き、退散するタイミングを逃す。
「どうぞ。入ってください」
「無理しないでください。これ、教師一同からです」
景子は菓子折りを渡して玄関先で容体だけ聞いて帰ろうとしたが、腕を掴まれて中へ引っ張り込まれ、後ろ髪を引かれる感覚があったがゴーストのサインとは気付いてない。
『ダメだ。戻って』
MOMOEが景子の背中に張り付き、フクロウのペンと一緒に引き戻そうとしたが、景子は靴を脱いでスリッパに履き替え、江国に促されるまま居間に入った。
「そこに座ってください。すぐにお茶を入れますので」
「いえ、お構いなく。病気の方はいかがですか?」
「もう、元気なのよ。明日にも復帰しようと思ってたの」
江国はキッチンでお茶の用意をし、バスルームに黒い蛾が集結しているのをチラッと見た。洗面台の前で、人間の上半身の形状に変貌しているのを鏡に映している。
黒い蛾の重なり合う頬の一部が皮膚になり、暗い穴の眼窩と真っ赤な唇が再現され、景子と一緒に紛れ込んだゴーストの名を呟く。
『MOMOE……』
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