ゴーストに恋して

田丸哲二

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第七章・洗脳された信者

波長を合わせて

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 文子は坂道を下りて連から見えなくなると全速力で家に帰り、なんであんな真似をしてしまったのかと、洗面所に行き火照った顔を洗って反省した。

「クリームって、最悪の誤魔化し」

 文子と連は幼馴染で親友でもあったが、中学生の時に男女を意識せずに『ベストフレンド』でいようと連に言われ、文子もベタベタできるタイプではなく賛成したが、ライバル視して何かと連に厳しくなった。

「しっかりしろ。文子」

 以前、Bi-húnで作戦会議をした時に文子は久美子と順也に『連はゴーストに恋してる』と平然と言ったが、今日エディバーの会議ルームで『MOMOE』の存在を感じ、連を異性として意識した。

「友だちとして、レンを守るんだよ」

 そう呟いて文子は鏡の前で頬を両手で叩き、手ぬぐいを頭に巻いて気合を入れ、連と同じように階段を駆け上がって二階の部屋に入った。

 この時、連は部屋の隅に立て掛けてあったギターを構え、文子は剣道着を着て竹刀を上段に構えた。

 ギャイーン、というビックで奏でる音。
「メーン」という声に風を切る竹刀の素振り。

 そして久美子と順也から窓側の机の上に置いた連のiPhoneにメッセージが送信される。

[僕らもMOMOEと一緒に戦う。]

[みんなで力を合わせてゴーストを守ろう。]

 文子のスマホの画面・グループLINEにも同じコメントが表示され、MOMOEはゴーストと人間の世界の為に戦っているのだと共有した。

 連がiPhoneの画面を見ながら、机の上に二冊の手引書を置いて椅子に座り、意識を集中して両手を上に翳すと、二冊の手引書がカタカタと動き出す。

 MOMOEは江国の家から少し離れたビルの屋上に舞い降りて、フクロウのペンを望遠鏡にして江国の様子を偵察した。

「司祭の姿は見えないわ」

 フクロウのまん丸の目がレンズになり、図書館の工房にも映像が送信され、クルミがモニターの前でヘッドセットをしてMOMOEと交信する。

「MOMOE、気を付けて。魔文字が活発になり、闇のエネルギーがアップしてる」

 ユカが暗黒レベルのゲージが上がっているのを不安な表情でノートにメモし、ミチとアキとナホは異次元プリンターのエネルギーを調整して作動させ、ポエムとカンナはMac Classicで『エディバー』のサイトの復旧作業の協力に励む。

「きっと、司祭は魔王を蘇らせるつもりだよ」

「わかってる。それだけは阻止しないとね」

 MOMOEはクルミにそう答え、江国の家の窓辺に江国の姿が映り、赤い王冠を被った魔物の形相とダブって見えた。

 数十分前、江国則子のマスクをした香奈江は床に倒れて気絶していたが、黒い蛾が部屋に湧き上がり、身体をコントロールされて操り人形のように立たされ、グキグキと関節が曲がって窓側のデスクへ向かう。

 部屋の奥の暗がりで、司祭が糸を引くように江国に見せかけた香奈江を操り、MOMOEに魔王の幻影を見せている。

「魔王だ。ドングリの霊弾を撃てる?」

「一発だけなら用意できる。でも、憑依した人間の精神に損傷を与えるわよ」

 クルミがそう言って、ミチとアキとナホと一緒に異次元プリンターに視線を向け、ポエムとカンナも駆け寄って四角いボックスに製造された銀色ドングリ型の霊弾を見つめた。
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