ゴーストに恋して

田丸哲二

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第十章・学園での決戦

決戦前夜・江国の思惑

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 江国は司祭が死体安置所で休養している間も、部屋に舞う黒い蛾に指示を受け、明日の儀式の準備をつつがなく進め、学園の教師や生徒の洗脳者も増えて暗黒のマスクは外している。

「最後は学園長らしく、威厳を持って振る舞って欲しいわね」
「はい。お任せください」

 高台の豪邸に江国が田代を連れて訪問すると、黒い蛾がリビングの空間に舞い始め、司祭も現れて江国と田代の真ん中に立ち、香奈江と祖父母がこうべを垂れてうなじに魔文字が覗く。

 香奈江は江国に「命令通りの働きをしないと祖父母も貴方も死ぬ」と脅され、魔文字の意思に従い、学園の教師を洗脳する事に協力した。その教師が生徒に『禁断の書』を読ませている事も知っていたが、魔文字の告げ口を恐れて従っている。

 この時、四人のゴースト。カズ、シュン、タク、マリが屋根裏からリビングを透視していたが、黒い蛾が天井に張り付き、司祭が上を見上げたので一斉に飛び去った。

「司祭の眼は回復した……」

 夜空を飛びながらクルミに連絡し、眼下の豪邸を一度振り返り工房へ向かう。

「気付かれたよな?」
「でも、追って来ない」
「オレたちなんて、眼中にないんだ」
「明日、まとめて始末するつもりよ」

 司祭は敵対する者を学園に招待し、暗黒の儀式を見せつけて絶望感に震えさせ、暗黒の底ブラックホールへ落とし込もうと考えている。

 四人のゴーストが危惧したように、司祭は右眼に人間の死者の目を埋め込み、傷も癒えて復調した事を見せつけるべく活動し始めた。

「明日の儀式は完璧に行う。期待感、希望、夢、鮮やかな色、光の輝き、ラブソング、全てが無になり、世界のモノクローム化が始まる」

 香奈江は祖父母と革張りのソファにちょこんと座り、司祭のスピーチを聴きながら、何故この者が見えるのか不思議に思った。

『私は誰?そして何をしている?』

 その時、隣の母の手が香奈江の肘に触れ、その温かみが肌に伝わって、ふと孫の顔が一瞬脳裏に蘇る。

 数十分後、香奈江は解放されて寝室へ行き、パジャマに着替えてベッドに入ったが、すぐに起き出して棚の引き出しからスマホを出して電源を入れ、壁紙の孫の写真を眺めた。

「まったく……」

 江国がドアを少し開けて通路から覗き、手に魔文字が浮き出て香奈江はスマホを床に落とし、江国が入って来て拾い上げて叱る。

「使ったら没収するって言ったよね。家族に逢いたければ、私が呼んであげるわよ」

 江国は司祭の教えを忠実に実行し、実家に逃げ出した長男夫婦を明日の儀式に誘い出し、学園長に絶望を与えようと考えた。

 そしてゲストルームへ向かい、田代がピールを飲んでTVでバラエティ番組を観ているのを覗き、呆れた表情でリビングへ行き司祭に進言した。

「明日、田代がダメだったら、私、江国則子の体を魔王の為に使ってください」

 テーブルの上に『禁断の書』を開き、牢獄の中のMOMOEを覗き込み、ソファに両足を広げて座る司祭に江国が跪き、こうべを垂れて申し出た。
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