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第一章・イースター(復活祭)
地獄の使者
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数十分前[19:00]に教会の鐘が鳴り、金髪の天使は空から路地裏を歩く若者が教会裏の垣根を越えて裏口から侵入し、パトロール中のパトカーがメイン通りを通り過ぎるのを偵察し、教会の屋根に舞い降りて十字架の横に立ち、マリアと賢士が教会へ現れるのを待った。
『メインキャストは揃った』
警察は昨日のカフェの事故で目撃された不審者を警戒し、青葉台と藤が丘付近をパトカーで巡回していたが、時の流れは殺戮者の味方をしている。
ヤンキースのキャップにグレーのパーカーを着た若者は教会の薄暗い通路から小部屋に入り、背中のリュックを棚に置き、時限爆弾にコードを接続して時刻を設定し、無差別テロの準備を始めた。
藤倉秀太はマリアがカフェで死んだショックで、腐った神を信じる偽善者たちを地獄に堕として自分も死ぬつもりだった。
マリアのストーカーになり、老夫婦を脅かして事故を引き起こす原因を作ったが、全ての責任はマリアとの恋を引き裂いた神父と宗教にあると転嫁した。
メイン通りを裸足で走って来たマリアが教会の門の前で立ち止まり、身を整えて参列者と一緒に教会へ入り、賢士は離れていたが着実にこっちへ迫っている。
『時間通りですね』
天使は左腕のクラシックウォッチ・ブレゲを覗き見て微笑み、屋根の上から沈み込むように建物の中へ消えた。
マリアは玄関ホールの扉が開き、聖堂から聴こえるオルガン演奏と賛美歌に心を震わせ、参列者をすり抜けて身廊を進み、歌っている東南アジア系の子供達を眺めてステージへ上がる。
『美しいハーモニーが私を天国へと誘う』
祭壇の前に献花台があり、マリアは棺の前に立って丁寧に頭を下げ、大勢の参列者が祈りを捧げ、白い花をお供えするのに感謝を述べた。
『忙し中、ありがとうございます』
壇上では神父が聖書を朗読して神に祈りを捧げ、藤倉秀太は聖堂脇の司祭館に忍び込み、リュックからナイフを取り出して扉の小窓から聖堂を覗き込む。
その一部始終を金髪の天使は天窓のステンドグラスの下の柱の梁に立って見下ろし、賢士の登場が僅かに遅れていると不安になり、『急がないと救えませんよ』と呟くと、扉が開いて聖堂に光が差し込んだ。
「マリア」
賢士は出入り口からステージを見上げてマリアの名を呼び、両手に持った靴を掲げて前へ突き進み、マリアも『ケンジ』と呟いて視線を向けたが、参列者と神父は賢士を止めようとした。
「君、神聖な場所ですよ」
「静かにしなさい」
「そこに上がってはいけません」
「忘れ物を届けに来たんだ」
賢士は席を飛び越えてステージへ駆け上がり、マリアに近寄り両手の靴を見せて微笑みかける。
『こ、困ります。さよならと言いましたよね』
「でも、僕は別れを告げてない』
小窓から覗く藤倉秀太も喪服を着た者が一人芝居を始めたと驚き、壇上の神父が聖書を閉じてその男に近寄るのを静観した。
「何ですか君は?祭壇から降りなさい」
「神父さま、三分の猶予をください」
『お父様、許してあげて。この人は私の友だち。いえ、それ以上の存在なのです』
賢士は神父がマリアの父と知り、丁寧に礼をしてマリアに向き直り、跪いて騎士のように靴を差し出す。
「マリアさんに靴を履かせたら去ります。神聖な場所でお嬢様が裸足ではいけません」
神父は賢士の真摯な態度と言動に戸惑い、十字架の首飾りに触れて天を仰ぐと、天井に微かな発光を感じて神かと驚嘆したが、すぐに現実へ引き戻す者が神父の背後から登場し、首にナイフを突き付けた。
『メインキャストは揃った』
警察は昨日のカフェの事故で目撃された不審者を警戒し、青葉台と藤が丘付近をパトカーで巡回していたが、時の流れは殺戮者の味方をしている。
ヤンキースのキャップにグレーのパーカーを着た若者は教会の薄暗い通路から小部屋に入り、背中のリュックを棚に置き、時限爆弾にコードを接続して時刻を設定し、無差別テロの準備を始めた。
藤倉秀太はマリアがカフェで死んだショックで、腐った神を信じる偽善者たちを地獄に堕として自分も死ぬつもりだった。
マリアのストーカーになり、老夫婦を脅かして事故を引き起こす原因を作ったが、全ての責任はマリアとの恋を引き裂いた神父と宗教にあると転嫁した。
メイン通りを裸足で走って来たマリアが教会の門の前で立ち止まり、身を整えて参列者と一緒に教会へ入り、賢士は離れていたが着実にこっちへ迫っている。
『時間通りですね』
天使は左腕のクラシックウォッチ・ブレゲを覗き見て微笑み、屋根の上から沈み込むように建物の中へ消えた。
マリアは玄関ホールの扉が開き、聖堂から聴こえるオルガン演奏と賛美歌に心を震わせ、参列者をすり抜けて身廊を進み、歌っている東南アジア系の子供達を眺めてステージへ上がる。
『美しいハーモニーが私を天国へと誘う』
祭壇の前に献花台があり、マリアは棺の前に立って丁寧に頭を下げ、大勢の参列者が祈りを捧げ、白い花をお供えするのに感謝を述べた。
『忙し中、ありがとうございます』
壇上では神父が聖書を朗読して神に祈りを捧げ、藤倉秀太は聖堂脇の司祭館に忍び込み、リュックからナイフを取り出して扉の小窓から聖堂を覗き込む。
その一部始終を金髪の天使は天窓のステンドグラスの下の柱の梁に立って見下ろし、賢士の登場が僅かに遅れていると不安になり、『急がないと救えませんよ』と呟くと、扉が開いて聖堂に光が差し込んだ。
「マリア」
賢士は出入り口からステージを見上げてマリアの名を呼び、両手に持った靴を掲げて前へ突き進み、マリアも『ケンジ』と呟いて視線を向けたが、参列者と神父は賢士を止めようとした。
「君、神聖な場所ですよ」
「静かにしなさい」
「そこに上がってはいけません」
「忘れ物を届けに来たんだ」
賢士は席を飛び越えてステージへ駆け上がり、マリアに近寄り両手の靴を見せて微笑みかける。
『こ、困ります。さよならと言いましたよね』
「でも、僕は別れを告げてない』
小窓から覗く藤倉秀太も喪服を着た者が一人芝居を始めたと驚き、壇上の神父が聖書を閉じてその男に近寄るのを静観した。
「何ですか君は?祭壇から降りなさい」
「神父さま、三分の猶予をください」
『お父様、許してあげて。この人は私の友だち。いえ、それ以上の存在なのです』
賢士は神父がマリアの父と知り、丁寧に礼をしてマリアに向き直り、跪いて騎士のように靴を差し出す。
「マリアさんに靴を履かせたら去ります。神聖な場所でお嬢様が裸足ではいけません」
神父は賢士の真摯な態度と言動に戸惑い、十字架の首飾りに触れて天を仰ぐと、天井に微かな発光を感じて神かと驚嘆したが、すぐに現実へ引き戻す者が神父の背後から登場し、首にナイフを突き付けた。
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