3-days love story.

田丸哲二

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第一章・イースター(復活祭)

恋のパワー

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「全員、その場を動くな」

 靴を履いて喜ぶマリアの表情が一変し、膝に靴を置いて履かせる賢士のパフォーマンスに合わせたオルガン演奏と子供達のコーラスが途切れ、悲鳴と息を呑む恐怖で人々は凍り付いた。

「騒ぐと神父を殺すぞ」

 ステージの上から恫喝する乱入者を賢士が「何者ですか?」とマリアに聴き、『悪質なストーカーです。大学の先輩に付き纏われ、父も警告してくれたのですが』と答える。

「お前こそ、何者だ?」
「君に質問した訳じゃないけど、僕はマリアの友人であり守護者」
「ふざけるな。マリアは神父と宗教のせいで死んだ。俺はその恨みを晴らしに来た」
「いえ、マリアは此処で貴方の行為を悲しんでいる。そのナイフを仕舞ってください」
「馬鹿か。マヌケな守護者め。そっちで観戦してろ」

 藤倉秀太の目は血走り、頬は痩せこけて唇は乾いてズル剥け、顎をしゃくらせて賢士にステージから降りろと指図し、神父を盾にして聖書台へ歩み寄る。

「やめなさい。私を恨むなら、関係のない人々は逃してください。マリアの魂を血で汚すなどあってはならない」

 しかし藤倉秀太は神父を前に突き出してナイフを持つ手に力を入れ、「犠牲者は多い方が面白い」と、リュックの中の時限爆弾・C4爆薬を聖書の上に置き、スイッチを入れてタイマーを起動させた。

「地獄の復活祭へようこそ」

 両手を広げて叫び、液晶タイマー01:00が作動するのを見た前列の者が「爆発するぞ」と逃げ出し、合唱団の子供達が台上から降ろされ、大勢の人々が通路と出口に殺到して聖堂内はパニックに陥った。

「教会が吹っ飛ぶ。皆殺しだ」

 天使は背中の翼を開いてバランスを取り、柱の梁から屈み込んで死の宣言をする藤倉を見下ろし、マリアと賢士がこの危機を乗り越えるか見守る。

 病院で鈴木悠太に天使が近付いのは自分のミスで時が狂い、安野麻里子はこの日この教会で狂気を秘めた藤倉秀太に殺される予定が狂った修正でもあった。

 皮肉な事に藤倉秀太が『地獄の復活祭』と叫んだのは、事故のニュースでイースターの飾り付が飛び散った店内の惨状を見たからだ。

 賢士は一旦ステージから降りたが、逃げ惑う人々を見て歓喜する藤倉秀太の背後から襲いかかり、ナイフの刃が神父の首筋を掻き切るが、腕を押さえてナイフを叩き落とす。

 マリアは首から鮮血を垂らして倒れ込む神父に駆け寄り、『お父様』と抱き締めるが触れられない。

 賢士は藤倉の顔面を殴り、蹴り飛ばして立ち塞がるが、棺にもたれた藤倉は「時間切れだ」と鼻血を拭って嘲笑う。

『お父様、逃げて』と十字を切って祈るマリアへ駆け寄る賢士。神父をステージ下に逃すが、聖書台の時限爆弾の液晶タイマーは00:03を示し、賢士は時限爆弾を祭壇の奥へ放り投げ、マリアと手を繋いでステージからジャンプした。

『奇跡は恋のパワーと、時の混沌カオスで巻き起こる……』

 天使は聖堂に激しい爆発音が轟き、空中で抱き合う賢士とマリアが爆風で飛ばされるが、時空が割れて球体が急速に膨張し、二人がその中へ包み込まれるのを両手を翳して天井の柱の梁から眺めた。
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