魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ

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何者でもない少年

再会

 ジーク達がギルドに入ると中にいる冒険者が三人に視線を集める。とはいえ、スタンピード直後と比べればかなり減った。
 一番多かったのはジークの玉の輿に乗ろうとする女性冒険者。英雄と呼ばれたジークの彼女になろうとする者が後を立たなかったのだが、大体がレイラとライラの前に敗れて行った。

 やはり、幼馴染のガードは硬くつけ入る隙はなかった。そもそも、ジークには自分がハニートラップをかけられているという自覚がなかったので、意味はなかったのかもしれない。

 他にはレイラ達に恋をした可哀想な冒険者もいた。こちらはレイラ達が無視したりジークと腕を組んだり「好きな人がいるの」と言って撃退した。ときたま襲いかかってくる冒険者もいたが、そこはしっかりとジークが守るので逆に引き立て役にされたりなど可哀想な者達である。

 残るは「ハーレム野郎…‥爆発しろ」という視線くらいだ。直接的には何もしてこない無害な視線だ。

 そんな視線達を気に留めず、ジークはギルドの掲示板付近にいた白髪の人物の元に駆け寄った。

「久しぶりだな、ロベド!今まで何処で何やってたんだ?」
「色々と、な。それよりこんな時間にお前がいるの珍しいな」
「今日は休みなんだ、ほら今日はレイラ達の誕生日だから」

 今日はレイラ達が誕生日でありそれを祝う為に買い出しをする為に出掛けていた。そんな時、ロベドの出没情報を聞いてギルドにやって来ていた。
 ジークの後にレイラ達も小走りで合流した。

「そうなの、だからロベドも今日一緒にどう?私たちの家に招待したいのだけど」

 レイラがロベドを自身の誕生日会に誘った時、四人の元に少年が歩いて来た。

「ロベドさん、依頼完了してきた。………あれ、邪魔だったかな」

 依頼金を袋に詰めて歩いて来た少年はジーク達を見てタイミングをミスったと思いロベドの様子を伺う。

「いや、ちょうど良い。アル、今日はこいつらの飯を預かるとしよう。豪勢な飯があるらしいからな。その依頼金で酒でも買おうぜ」
「えぇ……これ全部酒に変えるの嫌なんだけど」

 ロベドとアル、と呼ばれた少年の言い合いはジーク達を固まらせるには余りあるほどに衝撃的な光景だった。

「あのロベドが……子供と普通に喋ってる!?槍が降るぞ!」
「お前なぁ、俺だってガキくらい普通に喋れるぞ」
「その子がロベドさんが最近弟子にしたって子?」
「弟子じゃねぇ。泊まるとこがねぇから俺の家に泊めてるだけだ」

 心底嫌そうな顔をしながらそう答えたロベドはアルにジーク達を紹介する。

「そこの馬鹿っぽい奴が英雄なんて持ち上げられてるジークだ。突撃バカだから真似するとこはほぼねぇからな」
「誰が突撃バカだ!」

 ロベドがジークを紹介したのを見たレイラは下手な事を言われる前に、と自分から自己紹介を始める。

「私はレイラ。こっちのライラとは双子よ。ジークとは幼馴染で冒険者をやっているわ、よろしくね」
「ライラ、ジークは昨日も1人で突っ込んだ。突撃バカ」

 幼馴染二人に裏切られたジークは信じていた仲間が実は黒幕だったと言わんばかりの表情で驚き落ち込む。すぐに復帰するが。

「アルベルトです。アルって読んでください。ロベドさんの家に居候させてもらってます、あのちょっと近いな」

 アルの近くに寄ってレイラは顔などを観察する。そして、思いついたようにジークに向かって声をかける。

「うーん、やっぱり似てるわね。ジーク、ちょっと横に並んでよ」
「え、まぁ良いけど」

 ジークがアルの隣に並ぶと兄弟のようにそっくりだった。髪型から顔のパーツまで生き別れた兄弟にすら見える。

「うん、昔のジークそっくり!あの時は可愛かったのになぁ」
「昔はレイラちゃんとか言って可愛かった」
「おい、昔の話だろ!?こんなとこでやめてくれぇ!」
「へぇ、俺が会った時にはもうクソガキだったがレイラもっとねぇのか?コイツの恥ずかしい話」
「だぁあああああ!もう、買い物しに行こう!ロベド、夜俺たちの家に来いよ!」

 ジークはこれ以上レイラ達に言わせない為に大声で断ち切って、レイラとライラの口を塞ぎながらギルドの外に連れ出して行った。

「よし、じゃあ俺たちも行くか」
「酒は程々にしてください。昨日なんて酒臭くて寝れなかったんだから」

 珍しくロベドの笑い声と共に二人もギルドを後にする。

◇◇◇

「ハハハハ!もっと飲め飲めェ!」
「ぐっきつい……」
「だから程々にって……誰だ、この人に酒瓶渡したの」

 既にジーク達の家は誕生日会というより宴会場と化した。最初は普通に祝っていたのだがジークが悪酔いして「どっちが飲めるか勝負だ!」などと言ったことからお猪口《歯車》が狂った。ロベドのからみ酒に絡まれて辛そうなジークは自業自得ではある。

 レイラはちょびちょびとお酒を飲み、ライラは果汁酒をグビグビと何杯も飲んでいる。二人とも全く顔は赤くなっていない。

「あれ、じーくがふたりいるぅ。かわいいっ」
「ちょ、僕はジークさんじゃないです!力強っ」

 シラフのように見えるレイラがアルにしなだれかかるように抱きつく。酔いが回ってジークとアルの区別がついていないらしい。
 アルはライラの甘い香りと感触に目を回すが妹の姿を思い出してバッと離れる。

「はい、お水!」
「ありがとぉ、やさしいね」

 レイラはふにゃっとした普段は見せない笑顔でアルに感謝を述べる。そんなレイラに咄嗟に顔を赤くするアル。

 そんな時、不意に家の玄関からノックする音が聞こえて来た。

「自分が出ますね」
「あ、俺も行く!」

 ロベドのからみ酒から逃げたかったジークはアル共に玄関へと向かう。

「今出ますー」

 アルが玄関の取っ手に手をかけ開けるとそこには火の灯りを反射する灰色の髪、自分より小さな背丈で見覚えのある人物が立っていた。

「姉上ぇ!?」
『あ、ライルだ』

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