1 / 1
01(完)
二人が別れることは始めからわかりきったことだった。
実際俺は何日で別れるのか数えていたくらいだ。
(だから言ったんだ。不純交遊を着て歩くようなやつとはつき合うなって)
幼なじみの隼斗(はやと)に、同じクラスの宏茂(ひろしげ)を紹介したのは俺だった。
それが気づかぬうちに、友情から恋に発展したという。
男同士の恋愛の上、ましてや学校中に浮名を馳せていた宏茂だ。それを知ったとき、大事な幼なじみを泣かすなよと何度も釘を刺した。だから、幼なじみと友人の間で俺が置いてけぼりにされても隼斗が笑うのなら……と、そう思っていたのに。
ある日、隼斗が宏茂とはもう友達に戻れないと俺の家にきて泣いた。
「よくもあいつを泣かせたな」
俺は宏茂を屋上に呼び出して殴ってやった。つき合うときに散々言い聞かせたはずだった。こいつが今まで相手をとっかえひっかえしようと構いはしなかったが、身内同然の隼斗となると話は別だ。
「お前、よく言うぜ……」
向けられた表情に驚いた。宏茂はこんな笑い方をする奴だっただろうか。なんだか含みのある嘲笑だった。
そのせいで訊きたかった宏茂の浮気の理由も、二人が別れる理由も……俺は聞き出せなかった。
■ ■ ■
放課後の学校帰りに、恋愛ひいては人間関係に臆病になってしまった隼斗の家に行き、しょげている彼を慰めていた。
「耕輔(こうすけ)はずっと一緒にいてくれる?」
「ああ、ずっと友達だ。なにがあっても。今までも喧嘩しながらもやってきただろう」
「……こうちゃん」
懐いてくる隼斗はかわいい。身長差はあまりなくとも、甘いアイドル系の容姿のためどこかしら過保護な気分にさせる。
「そうだよね。こうちゃんが裏切るわけないよね」
「ああ、……って、へ?」
ドサリと隼斗のベッドに押し倒され、ネクタイをぐいと引っ張られる。
「こうちゃん、僕を慰めてよ」
「はやと? 何を……」
「ナニをし損なったんだ。せっかく堕ちたと思ったのにさ」
見上げた隼斗の顔はいつもと違った男前で、いたずらするのが待ち遠しいという風にぺろりと唇を舐めた。
「こうちゃん、心の準備は良い?」
――――あの日は、嵐のように過ぎ去っていった。来ると知っていたら雨戸をきちんと閉めたり、屋根が飛ばないようにしたりしたのに。天気予報とはその知識のない人間にとって、実にお手軽に手に入る情報だったのだとようやく気がづいた。
いや、そんなことはどうでもいい。正直、宏茂の気持ちがわかった。しかし俺の方は未遂では済まなかった。
「お前、恨むぞ」
「ははっ、してやったりだな。ずっと猫被ってたんだろあいつは」
痛む腰をかばいながら、宏茂と昼ご飯を食べる。
宏茂はさっぱりした気分屋だから、問題が解決すればわだかまりもなくつき合える。むしゃくしゃした気持ちを押しつけても、この間殴ったこともすべて笑い飛ばして今では俺をバカにしている。
「こうちゃん、浮気は許さないよ」
呼んでもいないのに、ひょっこりとお弁当を引っ提げてヤツはやってきた。
宏茂と俺の間を割くように入ってくる。
「宏茂はダチだ……」
「なに? 満足してないなら、僕にも考えがあるけど」
ビクリと肩を揺らす俺を見てまた宏茂は笑う。
「一件落着だな」
食べ終わった弁当を手に持つと、つき合ってられんと俺たちに手を振った。
「てめ、俺を置いていくなっ、友達だろうが!」
俺の悲痛の叫びは、青い空に吸い込まれていったのだった。
終
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
病弱の花
雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です