百色学園高等部

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体育祭イベント

先輩GW2

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物音がしたのは、生物実験室の方からだった。



「先輩かな」


急いでドアを開けると、



「先輩っ大丈夫ですか!!」

大量のプリントや本をぶちまけて転がってる白衣の明海先輩がいた。

俺は、手にもって荷物をおいて、ぶちまけられた書類を拾って整理する。

「ああ、桜河君ですか。ちょっと実験でわからない事ができてしまったので、前の実験記録を探してるうちに転んでしまったんですよ……ふふ」
確かに、机の上には名前もよくわからないような実験器具が乗っている。

「ふふ、じゃないですよ~気を付けてください~」



「それもそうですね。確かに危ない薬品もありますし、うっかりその瓶を割ってしまったら体が溶けてしまったりしてしまいますね……」

それは、怖い。
薬品管理には気を付けてください。


そこでふと先輩を見ると、まだ寝っ転がってる先輩がいる。

ちょっと首をかしげて、座ったまま手を差しのべると、

手をとって起き上がってくれた。
しかし、立たせようとすると、先輩はグラッと傾いて俺の肩に寄りかかってしまった。



「先輩!?」


少し焦る。頬に、先輩のさらさらの髪の毛が触れ、いい香りがする。

ドキドキがおさまらない

だが、




ぐぅぅぅぅ~



どこかで音が鳴った。


先輩の顔を見る。
ちょっと顔が赤い。そしてお腹に手をおく。



「お腹の音……ですか???」



「ばれてしまいましたか。実をいうと、昨日から実験に夢中で寮に帰ってなくって……食事をとるのを忘れてしまいました。ふふふ」



「先輩!?何してるんですか」

それは驚きだ。でも、寮長が食べ物の袋を持っていけって言った理由がわかった。


ゴールデンウィーク中に明海先輩が食事もしないで実験に没頭することを予想していたんだろう。
毎年こんなことをしているのだろうか


寮長に渡された書類と、食料を明海先輩に渡す。

「ありがとうございます。会計の書類ですね。体育祭の予算についての話ですね。後で実験の合間にやります」
そっか。明海先輩は副寮長だけど、生徒会会計でもあるのか。ゴールデンウィーク中でも仕事がいっぱいあって忙しそうだ。

せっかくだから一緒に食べましょうと誘われてしまった。断る理由もなく、その誘いを受ける。袋にゼリーとかもあって美味しそうだったし。


「この部屋の横に、ミニプラネタリウムがあるんですよ。雲のようなふわふわのカーペットに座って星を見ながら食べましょう。」


確かに、部屋の横にカーテンがひいてあって、そこに入ると天井がドーム状になっていた。

先輩が機械を操作して、天井に星たちをうつす。

すごく綺麗だった。朝がきて昼がきて町の様子が見えると思ったら、夕焼けになって夜になり星がキラキラと輝く




食べ終わって、なんとなく大の字になってなんループも空を眺めるうちに、俺は寝てしまった。








起きたら夕方になり、明海先輩は実験をしていた。
寮に帰りませんかと誘うと、
「私は一時間ごとにこの生物の分裂の様子を記録しなくてはならないので、今日はここにとまります」

そう言われると、強要はできなかった。
明海先輩は、今年三年生で受験生だし、このゴールデンウィーク中の今しか集中して実験できないのかもしれない。



だから、俺は食べ物を持ってこの第三理科実験棟に毎日来ることにした。
たまに明海先輩への会計関係の書類を預かり、ついでに先輩が仕事できるようにノートパソコンを持っていく。


先輩の実験を手伝ったり、会計の仕事を手伝って計算したりした。
実験の合間に先輩から生命の誕生や、宇宙の始まりの話を聞くのは面白かった。
先輩が実験している間も、他の部屋をまわって展示品を見て動かして遊んで見てまわった。
たまに暇すぎて掃除もしたけど、逆に面白いものを見つけて夢中になってしまう。



朝、パンを持って教室に入ると、疲れて寝てしまった先輩がいて、俺はそっと上着をかける。

まあ、先輩が実験してる最中は逆に俺が昼寝してるんだけどね。



植木鉢に水をやり、
熱帯魚たちに餌をやり。


ほのぼのとした毎日。
幸せだった。



ゴールデンウィークラストの日、先輩と一緒に寮に帰った。


先輩と一緒に実験結果を記した資料を持って歩く。
本物の星は、もっと綺麗だった。

最後に、先輩はあの第三理科実験棟について話してくれた。




「先生に個人的な実験をやりたい、と頼んだことがあったんです。そしたら、最初は先生はしぶってたんですが、夜中生物室に忍び込んで実験してたら、あの第三理科実験棟でやっていいと許可をくれたんです」

夜中に忍びこむとは、先輩も以外と強引なところもある。




「あそこは、少し前まで、理科研究部がおもに使ってたんですよ。私が入学した時には廃部になってしまいましたが」

先輩なら絶対入部してそうだ。

「理科の力を使って、生活に使える便利な物やユニークなおもちゃにしようという活動をしてたんです。でも、それにはお金がかかるでしょう。結局つぶれちゃったんですね。今では、ほぼ実験器具や装置を置く物置小屋になってます」

たまに授業で使う事もありますが、ほとんどないです、と先輩は付け加える。



確かに、展示品のほかに、特殊なふりこや、使い方がわからないような複雑な電気回路があった。普通の授業ではなかなか使わないから、普段使ってる実験室においておくと邪魔なのかもしれない。
そしてたまに、ネジを巻くと水槽の中で泳ぎ出す魚や、電気をいれると雨音や川のせせらぎが4Dのように聞こえる装置があった。それが理科研究部の作品なのだと思う。
おもしろかったし、楽しめた。廃部したのは正直もったいないと思う。
しかし、部活になるほどの人数を集め、経費を調達し、活動を維持するのは容易いことではないのかもしれない。






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