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夏イベ
回顧録 Rucas視点
しおりを挟むリュカ視点
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そいつと最初に会ったのは日本だった。
こんな時期に学校休んで海外旅行するのだろうかと疑問に思いながら、
父と母に連れられて日本に行った。
日本についてそうそう、
最初によるところがあるからと、
小さな学校みたいな所に連れていった。
俺と同年代くらいの、子どもが沢山いた。
黒髪、黒目の集団の中に、
そいつは一人だけ、異様に目立っていた。
柔らかそうな薄い金髪。
透き通るような青い目。
滑らかな陶器のような、白い肌。
動くフランス人形だろうかと思いながら、そいつの一つ一つの言動に目が釘付けになった。
不意に、両親と話していた女の人がそいつの名前を呼んだ…………らしい。
そいつが、不思議そうな顔でやって来た。
父が、
そいつは今日から俺たちの家族になると言った。
そいつは、大きな目を見開いて、驚いた顔になった。
「Moi et toi sommes une famille…………???」
「C'est vrai.」
「C'est Lucas. Deviens ton frère」
そいつが、俺の目の前まで歩いてきて、下から見上げて俺の目を見たとき、俺の心臓が大きく跳ねた。
こいつが家族になる?
こんな可愛らしい、動くフランス人形が??
「Ravi de vous rencontrer…………」
見つめられて緊張した声で俺が挨拶をすると、
フランス人形は、パッと笑った。
まるで花が咲いたようだった。
絶対に幸せにする。
辛い思いなんかさせない。
そう、心に強く思った
のは、
ほんの短い間だった。
そいつは、俺の物を半分を分け与えられた。
俺の物になるはずだった、
おもちゃ。お菓子。子供部屋。等々。
さらに、
俺の父や母に異常に可愛がられていた。
俺がやったら怒るくせに、そいつがうっかり小麦粉をぶちまけたら、笑ってゆるされてた。
そいつがうっかり花瓶を割ったら、大丈夫?って心配される。
俺がやったら、また??って怒られるのに。
なんでこいつだけゆるされる?
俺は怒られてばっかりだ。
俺は学校の宿題をやるのに忙しい。
なのに、
こいつはフランス語はよく話せないからと言って学校にすら行ってない。
確かに、フランス語を途中まで話してると思ったら、
急に英語で話し始めるときがある。
俺らの家族は英語もフランス語もわかるけれど、フランス語しかわからない人がいるフランスの学校に行ったら、確かに不自由しそうだ。
そんなの俺の知ったこっちゃないけど。
なら、日本の学校に行ったら?って俺が言ったら、さらに否定された。両親に、だ。
日本語はもっと話せないらしい。
まあ、とうの本人はそれ以来、日本語を勉強をするようになったんだけど。ただ、方法が…………つまり、俺の母親と日本語を話すようになった。
俺より長く母親と一緒に会話してる。
俺が学校から帰ったら、
「唯利と一緒にレモンパイを焼いたの。唯利は料理が上手なのよ」
と母親が得意げにおやつのかわりのレモンパイを渡してきた。
そいつは、俺の母親の影に隠れてこっちをこっそり伺っているようだった。
自分の母親でもない人にくっつきやがって。
睨みつけたかったけれど、両親に怒られるだろうからやめた。
まあ、俺が睨まなくても、
そいつはびくびくしてるようだったしな。
おかしなやつだった。
最初に見た笑顔以来、一切笑顔を見なかった。
さらに、涙もだ。
まるで感情が欠落しているかのようだった。
転んで怪我したときも、泣きもしない。
そいつが膝を血だらけにしながら家に入ってきて、むしろ俺の方が驚いた。
さすがにほっとけなくて、傷口を水で洗ってやったけど、ほとんど声をださなかった。
目をつむって、唇を薄く噛んで、耐えてるようだった。
痛いなら痛いといえばいいのに。
だから、むしゃくしゃして、
わざとじゃぶじゃぶ洗ってやったんだけど。
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