デッドフラワーズ

narieline

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 小雨が私の赤い傘のナイロン生地を叩く。街は生ゴミのすえた匂いと人々が行き交うホコリが混じった匂いで、週末へと向かっていく。私はスナックの表看板に寄りかかってその人物を探す。夜は既に深い。タバコの持ち合わせが僅かなのに舌打ちしながら、私は人混みを覗くために首を真っ直ぐに固定する。
 程なくして「青年」は現れる。カーキ色のくたびれたコートをまとい、片手にはヴィニール袋をぶら下げて歩いてくる。その中身はほとんどジュースみたいなチューハイが2本、どこの産地か分からない唐揚げのパックと言ったところか。 
 私は彼が通り過ぎるのを待って声をかける「お兄さん、退屈そうじゃん」
 すると彼は長い前髪から覗く一重まぶたをチラつかせて言う。
 「悪いけど。俺そういうの興味ないから」何度とない勧誘を全てその一言で断って来たかのように、当然のごとく言う。
 私は素早く彼のコートのポケットに指を差し入れて彼を引き止める。
 「アラーム鳴ってる」
 彼は一瞬たじろいで、ポケットの中のスマホを手に取る。
 「あぁ、俺起きなくちゃ」
 「そうね、行きたくない会社に出勤しないとね」
 「どうして」彼は動揺する。
 「どうして俺が今起きて出勤しなきゃ行けない事を知っている?」

 そこで彼はアラーム音がけたたましく耳に流れ込むのを体感する。
 武咲佑斗は初めて気づいたかのように目を恐る恐る開く。そして今見た風景が夢なのだと知る。起きてしばらく朝の空気に身体を馴染ませてからゆっくり起き上がる。月曜の朝というものは人を憂鬱にさせるものだ。佑斗の場合尚更だ。
 アラームを止め、前髪を後ろに流し、よろよろと布団を出る。

 それにしてもあの夢。最近あればかり見る。俺はどこかを歩いていて、気づけば彼女は俺を待ち伏せしている。

 「あーあ、現実では朝なのかぁ。アイツ会社行けるのかな?」彼女は目の前から消えた彼を惜しみつつ、大きく伸びをする。
 80年代の古臭い、レザーでできたワンピース、赤い羽の首飾りを身につけ、同じく羽でできた扇子を口元に当てる。髪はダークレッドに染めて、前髪は下ろしたのと同じ分量で立ち上げている。ルブタンのヒールが幾度となく訪れた街の回数分、裏は擦り切れて彼女の足を痛める。
 「ちょっとは話を聞けってーの」

 彼女はそうつぶやくと、その場をターンするように街から出ていった。

彼女こそがシスター・レイだ。全てを貫くX光線。売春婦のような出で立ちで街に立ち、佑斗の行方を追っている。
彼女は佑斗の夢の中に棲む。
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