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23. 10月26日 王立博物館の秘密の部屋
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博物館にある秘密の展示。そこへたどり着く入口は、魔力がある者にしか感知できない。ああ、なんてどきどきする仕掛けなんだろう。
その秘密の空間は照明が最小限しかない代わりに、めずらしい魔法植物の明かりが一面を控えめに照らしていた。
「初めて見るものばかりよ。このタンポポみたいな魔法植物は幻想的ね。ホタルみたいだわ」
「流されてたどり着いた最初の島で見つけたんだ。飛翔船に持ち込んで育ててみたら、ほらこの通りさ」
魔法海洋生物や魔法植物のスケッチやサンプル、先ほどの船内をイメージした部屋よりも貴重なお宝が展示されているようだ。未知の魔法世界がすぐそこにある。
魔法を学んだ者なら興味を持たないはずがない。
「アリー、これを見て」
ヘンリーが手招きする方へ行くと、ひと際美しい展示があった。キャプションに目を通すと、思わず心が躍った。
「人魚のうろこに、フェニックスの尾羽?ヘンリー、こんな伝説にしか出てこないような貴重なものをどうやって見つけたの?」
「色々な場所を巡っているうちにね。アリーに見せたかったんだ」
「ヘンリー、すごいわ。本当にきれい。ずっと見ていたいくらいよ」
角度によってきらめきが違う人魚のうろこは、宝石よりも美しい。フェニックスの尾羽は黄金に浸したようにきらめき、それでいて繊細そうだ。
ふとヘンリーの目線に気がつき、わたしたちは目が合った。
「ヘンリーは見ないの?わたしなんて、あまりに美しくて目が離せないのに」
「僕は散々見たからね。そんなことより、アリーが気に入ってくれてよかったよ」
「それもそうね。連れてきてくれてありがとう。きっとアスリエル王国中の人が見に来るわ」
ヘンリーもミスター・ベネットも、満足そうに頷いた。
ヘンリーとわたしはミスター・ベネットに別れを告げ、王立博物館を出た。
博物館に隣接するペニーパークの秋色に染まった木々の自然が、夕暮れの空に映える。
「どうだった?」
博物館の正面玄関の階段を降りながら、ヘンリーに感想を求められた。
「もう、すっごくよかったわ!開催したら何度も通ってしまいそう。ヘンリーの発見のおかげで、魔法技術は大幅に躍進するでしょうね」
ヘンリーの横顔を見上げるが、ちょうど日差しが顔にかかっている。でもそれでちょうどいい。ヘンリーがまぶしくて、どうせ直視できない。
わたしたちは無言のままペニーパークの中を進む。わたしが乗ってきたペガサスをヘンリーが引き、舗装された道なりに歩く。
芝生でボール遊びをしている少年たちのくしゃくしゃとした髪には青い芝草や黄色い落ち葉が絡まっている。まるで絵葉書みたいに、完璧な秋の風景だ。
それにしてもペニーパークをヘンリーと歩くとは、妙な気分だ。四十年前の賭け事でクラーク公爵は一ペニーでホームズ男爵に先祖代々の土地を奪われたのだから。
「僕たちにとっては因縁深い公園だ。特に、クラーク家にとってはね」
ヘンリーは感慨深そうにあたりを見渡す。
「初めてちゃんとこの公園に来たけど、ここは素晴らしいね。市民にとってもかけがえのない場所なんだ。この土地が僕たちに縁をもたらしてくれた。もし帰還できたらアリーと来てみたかった」
ヘンリーは立ち止まると、わたしを見た。一歩分の距離をゆっくりと縮め、一瞬の沈黙のち告げた。
「アリー、好きだよ」
かすれるような声で、ヘンリーの顔はやけに真剣だ。
まっすぐにわたしを見つめる深く青い瞳は、わたしの心の中を探そうとしているかのようだ。
魔法にかけられて動けなくなってしまったように、わたしはヘンリーから視線をそらせない。
教会の鐘が夕刻の時を告げる。その鐘の音が魔法を解く合図だったと言わんばかりに、わたしは「あっ」と小さく声を漏らした。
今夜のディナーの予定を思い出し、その時間が迫っていると気づいた。
わたしは思わず下唇を噛んだ。
「ディナーの約束があったんだわ。どうしよう」
ヘンリーは意表をつかれたような顔になり、しかし次の瞬間には懐中時計を取り出していた。
「ホームズ家の屋敷なら急げば二十分で着くはずだよ。さあ、早くペガサスに乗って」
その秘密の空間は照明が最小限しかない代わりに、めずらしい魔法植物の明かりが一面を控えめに照らしていた。
「初めて見るものばかりよ。このタンポポみたいな魔法植物は幻想的ね。ホタルみたいだわ」
「流されてたどり着いた最初の島で見つけたんだ。飛翔船に持ち込んで育ててみたら、ほらこの通りさ」
魔法海洋生物や魔法植物のスケッチやサンプル、先ほどの船内をイメージした部屋よりも貴重なお宝が展示されているようだ。未知の魔法世界がすぐそこにある。
魔法を学んだ者なら興味を持たないはずがない。
「アリー、これを見て」
ヘンリーが手招きする方へ行くと、ひと際美しい展示があった。キャプションに目を通すと、思わず心が躍った。
「人魚のうろこに、フェニックスの尾羽?ヘンリー、こんな伝説にしか出てこないような貴重なものをどうやって見つけたの?」
「色々な場所を巡っているうちにね。アリーに見せたかったんだ」
「ヘンリー、すごいわ。本当にきれい。ずっと見ていたいくらいよ」
角度によってきらめきが違う人魚のうろこは、宝石よりも美しい。フェニックスの尾羽は黄金に浸したようにきらめき、それでいて繊細そうだ。
ふとヘンリーの目線に気がつき、わたしたちは目が合った。
「ヘンリーは見ないの?わたしなんて、あまりに美しくて目が離せないのに」
「僕は散々見たからね。そんなことより、アリーが気に入ってくれてよかったよ」
「それもそうね。連れてきてくれてありがとう。きっとアスリエル王国中の人が見に来るわ」
ヘンリーもミスター・ベネットも、満足そうに頷いた。
ヘンリーとわたしはミスター・ベネットに別れを告げ、王立博物館を出た。
博物館に隣接するペニーパークの秋色に染まった木々の自然が、夕暮れの空に映える。
「どうだった?」
博物館の正面玄関の階段を降りながら、ヘンリーに感想を求められた。
「もう、すっごくよかったわ!開催したら何度も通ってしまいそう。ヘンリーの発見のおかげで、魔法技術は大幅に躍進するでしょうね」
ヘンリーの横顔を見上げるが、ちょうど日差しが顔にかかっている。でもそれでちょうどいい。ヘンリーがまぶしくて、どうせ直視できない。
わたしたちは無言のままペニーパークの中を進む。わたしが乗ってきたペガサスをヘンリーが引き、舗装された道なりに歩く。
芝生でボール遊びをしている少年たちのくしゃくしゃとした髪には青い芝草や黄色い落ち葉が絡まっている。まるで絵葉書みたいに、完璧な秋の風景だ。
それにしてもペニーパークをヘンリーと歩くとは、妙な気分だ。四十年前の賭け事でクラーク公爵は一ペニーでホームズ男爵に先祖代々の土地を奪われたのだから。
「僕たちにとっては因縁深い公園だ。特に、クラーク家にとってはね」
ヘンリーは感慨深そうにあたりを見渡す。
「初めてちゃんとこの公園に来たけど、ここは素晴らしいね。市民にとってもかけがえのない場所なんだ。この土地が僕たちに縁をもたらしてくれた。もし帰還できたらアリーと来てみたかった」
ヘンリーは立ち止まると、わたしを見た。一歩分の距離をゆっくりと縮め、一瞬の沈黙のち告げた。
「アリー、好きだよ」
かすれるような声で、ヘンリーの顔はやけに真剣だ。
まっすぐにわたしを見つめる深く青い瞳は、わたしの心の中を探そうとしているかのようだ。
魔法にかけられて動けなくなってしまったように、わたしはヘンリーから視線をそらせない。
教会の鐘が夕刻の時を告げる。その鐘の音が魔法を解く合図だったと言わんばかりに、わたしは「あっ」と小さく声を漏らした。
今夜のディナーの予定を思い出し、その時間が迫っていると気づいた。
わたしは思わず下唇を噛んだ。
「ディナーの約束があったんだわ。どうしよう」
ヘンリーは意表をつかれたような顔になり、しかし次の瞬間には懐中時計を取り出していた。
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2024年12月追記
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