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46. 1月11日 まだパーティーの控え室
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突然のヘンリーの声に、わたしは弾かれるように身を伏せた。その直後ヘンリーがわたしに覆いかぶさったせいで視界がヘンリーに奪われ、何が起こっているのか確認することができない。断末魔のような叫び声が聞こえたのも一瞬、静寂が訪れた。
「セレナーデが出て行くときに魔法生物を放ったみたいだ」
ヘンリーは起き上がると、わたしに手を貸した。
部屋を見渡すと、部屋の一画に意識を失った魔法生物が魔法のロープでがんじがらめにされていた。それは黒くてぬめぬめとしているが、ごつごつと硬そうだ。気のせいでなければ、所々に苔が生えているようにみえる。
「アリー、怪我はない?」
ヘンリーはわたしに怪我がないか確認しながら尋ねた。
「ええ、大丈夫。守ってくれたのね。ありがとう」
「無事でよかった」
わたしの存在を確かめるように強く抱きしめた。
セレナーデからわたしの元に返ってきたことを実感するように、わたしもヘンリーを力いっぱい抱きしめ返した。
ヘンリーはやっとわたしを解放すると、ため息をついた。
「どういうことか、説明してくれって顔だね」
「そうね。一体どういうことなの。まず、あれは何か知ってる?」
わたしは転がっている魔法生物を指差した。長細く醜い見た目で、どこに顔があるのかもわからない。そもそも顔はあるのだろうか。
「あれはマーメイドが使う魔法生物だよ。人魚の入り江を通ったときに見かけたことがある」
「じゃあ、セレナーデはマーメイドということなのかしら。ヘンリーもセレナーデの姿を見た?というか、ヘンリーは知っていたの?」
「まさか。僕は彼女の正体を知らなかったよ。彼女は消えかけていたけど、僕もマーメイド姿のセレナーデを目撃したよ」
「ここで何が起こったのか説明してくれる?」
わたしは思いきって聞いた。
「主催者にこの部屋を案内されて、噴水に落ちたセレナーデを連れてきたんだ。僕はここで着替えをしたらいいと言って出ようとした。そうしたら、その……」
言いにくそうな顔をした。
「君、怒らない?」
「怒られるようなことをしたの?」
わたしは軽蔑を込めて言った。
「いや、まさか。そうじゃないよ。だけど、言いにくいことではある。でも、先に進まないから言うよ。僕が部屋を出ようとしたら、セレナーデが僕に抱きついてきたんだ」
だからヘンリーの服がやけに濡れているのか。
「きっとここで僕を襲おうとしたんだな。そこでアリーが入ってきた」
「わたしは、ヘンリーがなかなか帰ってこなくて心配になって、その、様子を見に来たのよ。そうしたら、セレナーデがあなたに……」
「人魚は人を誘惑して、用済みになったとたんに食ってしまうんだ」
恐ろしい魔法生物なんだと、ヘンリーは続けた。
「ええ、そうでしょうね。でもわたしの見間違いじゃなければ、彼女は涙を流していたわ。人魚が失恋して涙を流すと泡となって消えるという言い伝えは、本当なのかしら」
「どうだろう。僕は彼女に好かれるようなことは何もしていないけど」
セレナーデはヘンリーを見て一目惚れしたのかもしれない。
「ありがたいことではあるけど、だからといって彼女のしたことが正当化されるわけではない。魔法生物を放って、君を襲おうとしたんだ。性根が腐っているよ」
ヘンリーの手はわなわなと震えている。
わたしはヘンリーの手を取った。
「ヘンリーは魅力あふれる人魚にも魅了されずにわたしを守ってくれたもの。どんなときでも助けてくれるのね」
わたしは視界の端に光るものが映った。その方向に目を向けると、一粒のきれいな珠が落ちていた。
「ねえ、ヘンリー。あれはなんだと思う?真珠みたいだわ」
セレナーデが身につけていたのだろうか。でも彼女がつけていたのは真っ赤なルビーだった。そうだ、忘れていた。ヘンリーに問いたださなくてはいけないことがあった。
「ヘンリー、あなたセレナーデに真っ赤なルビーの首飾りをプレゼントしたの?」
「なんでそんなことを僕がするの?」
ヘンリーはきょとんとした顔をわたしに向けた。
「今朝、彼女がわたしに自慢してきたのよ。ヘンリーにもらったって」
「僕じゃないよ。まあ、今朝手渡したのは僕だけど。王子が贈り物をしたいというので、代わりに王子からの贈り物だと言って渡したんだよ」
わたしはどんな顔をしていたのだろう。ヘンリーが慌てて「本当だよ」と言って、目をそむけた。
「僕はそんな気の利いたプレゼントなんてできる男じゃないよ」
別にプレゼントがほしいわけではないけど、そう言われると落ち込む。
「これは真珠じゃないな。どうやら《人魚の涙》だ」
「セレナーデの涙?」
ヘンリーは顔をわずかに赤くしながら、観念したように先を続けた。
「アリーの言った通り、たしかにセレナーデは僕に好意を持っていたみたいだ。《人魚の涙》は人魚の涙が結晶化したもので、叶わない恋をしたときに流すものなんだ。
その相手の男は人魚の誘惑に打ち勝った証としてその男の妻や恋人にそれを贈るんだ。贈られた側は名誉なことみたいだよ」
部屋の外から男の叫び声がしたので、思わず外に出て声がした方向を探す。
「この魔法生物たち、外に出てこないかしら」
わたしはセレナーデが放った恐ろしい魔法生物の存在を思い出した。
ヘンリーは少しの間、考え込んで言った。
「その通りだね。念のためにこの部屋から出られないように結界を張っておこう」
ヘンリーとわたしは簡易的な結界を作った。
再び悲鳴がしたので、ヘンリーと目を合わせて駆け出した。先に足の速いヘンリーが声がした部屋に駆けつけて室内にスペルを放っていた。わたしは走りながら、使えそうなスペルをいくつか準備してすぐに出せるようにした。紫色の閃光が辺りを包んだと思った瞬間、部屋から突風が吹いた。
ヘンリーに続いて部屋に飛び込んで中を見渡すと、王子が人魚に襲われていて食べられる寸前だった。
セレナーデはさっきとは違って恐ろしい顔をしていた。目は血走り、避けた口から牙があらわになっている。王子は隙をついて、逃げ出そうと身をかがめた。
セレナーデはわたしを横目で捉えると、出入り口に立っているわたしにむかって突進してきた。
わたしたちはもみ合いになった。
「アリー!」
ヘンリーはスペルを放とうとするもわたしに当たる可能性があるからか、躊躇しているようだ。
セレナーデは水掻きの付いた鋭い爪でわたしの顔を引っかこうとしてくる。寸前のところで顔を背けて、腕に全力を込めてセレナーデの腕を遠ざける。
真近に見るセレナーデの顔は見れば見るほど恐ろしく、牙の隙間から獰猛なうなり声を上げている。
腕力ではセレナーデに敵いそうにない。このままではやられる。わたしの体力はもう限界だった。
残りの力を絞って、セレナーデの手首を押さえつけている右手の差し指をずらしてスペースを作り、一音ずつはっきり発音しながら右手の人差し指をわずかに動かした。
わたしは魔術の起動を感じた。体内に取り込んで変換された空中の魔法の粒子は、魔力となってわたしの体内を駆け巡り、今まさに人差し指から溢れ出ようとしている。
それは一瞬の出来事だったかもしれない。だけどわたしにとっては永遠にも感じられるほど長い一瞬だった。
セレナーデはわたしが放ったスペルによって、体が麻痺したようだ。苦悶の叫び声を上げてわたしの上から転げ落ちた。
それでも起き上がろうとしているセレナーデから顔をそらさずに、わたしは叫んだ。
「ヘンリー!」
ヘンリーはスペルをちょうど唱え終え、セレナーデに向かって放った。彼女の体が不可視の紐のようなもので縛り上げられた。
セレナーデは体力の続く限り抵抗していたが、逃れられないことを悟ると次第に抵抗をやめた。
「セレナーデが出て行くときに魔法生物を放ったみたいだ」
ヘンリーは起き上がると、わたしに手を貸した。
部屋を見渡すと、部屋の一画に意識を失った魔法生物が魔法のロープでがんじがらめにされていた。それは黒くてぬめぬめとしているが、ごつごつと硬そうだ。気のせいでなければ、所々に苔が生えているようにみえる。
「アリー、怪我はない?」
ヘンリーはわたしに怪我がないか確認しながら尋ねた。
「ええ、大丈夫。守ってくれたのね。ありがとう」
「無事でよかった」
わたしの存在を確かめるように強く抱きしめた。
セレナーデからわたしの元に返ってきたことを実感するように、わたしもヘンリーを力いっぱい抱きしめ返した。
ヘンリーはやっとわたしを解放すると、ため息をついた。
「どういうことか、説明してくれって顔だね」
「そうね。一体どういうことなの。まず、あれは何か知ってる?」
わたしは転がっている魔法生物を指差した。長細く醜い見た目で、どこに顔があるのかもわからない。そもそも顔はあるのだろうか。
「あれはマーメイドが使う魔法生物だよ。人魚の入り江を通ったときに見かけたことがある」
「じゃあ、セレナーデはマーメイドということなのかしら。ヘンリーもセレナーデの姿を見た?というか、ヘンリーは知っていたの?」
「まさか。僕は彼女の正体を知らなかったよ。彼女は消えかけていたけど、僕もマーメイド姿のセレナーデを目撃したよ」
「ここで何が起こったのか説明してくれる?」
わたしは思いきって聞いた。
「主催者にこの部屋を案内されて、噴水に落ちたセレナーデを連れてきたんだ。僕はここで着替えをしたらいいと言って出ようとした。そうしたら、その……」
言いにくそうな顔をした。
「君、怒らない?」
「怒られるようなことをしたの?」
わたしは軽蔑を込めて言った。
「いや、まさか。そうじゃないよ。だけど、言いにくいことではある。でも、先に進まないから言うよ。僕が部屋を出ようとしたら、セレナーデが僕に抱きついてきたんだ」
だからヘンリーの服がやけに濡れているのか。
「きっとここで僕を襲おうとしたんだな。そこでアリーが入ってきた」
「わたしは、ヘンリーがなかなか帰ってこなくて心配になって、その、様子を見に来たのよ。そうしたら、セレナーデがあなたに……」
「人魚は人を誘惑して、用済みになったとたんに食ってしまうんだ」
恐ろしい魔法生物なんだと、ヘンリーは続けた。
「ええ、そうでしょうね。でもわたしの見間違いじゃなければ、彼女は涙を流していたわ。人魚が失恋して涙を流すと泡となって消えるという言い伝えは、本当なのかしら」
「どうだろう。僕は彼女に好かれるようなことは何もしていないけど」
セレナーデはヘンリーを見て一目惚れしたのかもしれない。
「ありがたいことではあるけど、だからといって彼女のしたことが正当化されるわけではない。魔法生物を放って、君を襲おうとしたんだ。性根が腐っているよ」
ヘンリーの手はわなわなと震えている。
わたしはヘンリーの手を取った。
「ヘンリーは魅力あふれる人魚にも魅了されずにわたしを守ってくれたもの。どんなときでも助けてくれるのね」
わたしは視界の端に光るものが映った。その方向に目を向けると、一粒のきれいな珠が落ちていた。
「ねえ、ヘンリー。あれはなんだと思う?真珠みたいだわ」
セレナーデが身につけていたのだろうか。でも彼女がつけていたのは真っ赤なルビーだった。そうだ、忘れていた。ヘンリーに問いたださなくてはいけないことがあった。
「ヘンリー、あなたセレナーデに真っ赤なルビーの首飾りをプレゼントしたの?」
「なんでそんなことを僕がするの?」
ヘンリーはきょとんとした顔をわたしに向けた。
「今朝、彼女がわたしに自慢してきたのよ。ヘンリーにもらったって」
「僕じゃないよ。まあ、今朝手渡したのは僕だけど。王子が贈り物をしたいというので、代わりに王子からの贈り物だと言って渡したんだよ」
わたしはどんな顔をしていたのだろう。ヘンリーが慌てて「本当だよ」と言って、目をそむけた。
「僕はそんな気の利いたプレゼントなんてできる男じゃないよ」
別にプレゼントがほしいわけではないけど、そう言われると落ち込む。
「これは真珠じゃないな。どうやら《人魚の涙》だ」
「セレナーデの涙?」
ヘンリーは顔をわずかに赤くしながら、観念したように先を続けた。
「アリーの言った通り、たしかにセレナーデは僕に好意を持っていたみたいだ。《人魚の涙》は人魚の涙が結晶化したもので、叶わない恋をしたときに流すものなんだ。
その相手の男は人魚の誘惑に打ち勝った証としてその男の妻や恋人にそれを贈るんだ。贈られた側は名誉なことみたいだよ」
部屋の外から男の叫び声がしたので、思わず外に出て声がした方向を探す。
「この魔法生物たち、外に出てこないかしら」
わたしはセレナーデが放った恐ろしい魔法生物の存在を思い出した。
ヘンリーは少しの間、考え込んで言った。
「その通りだね。念のためにこの部屋から出られないように結界を張っておこう」
ヘンリーとわたしは簡易的な結界を作った。
再び悲鳴がしたので、ヘンリーと目を合わせて駆け出した。先に足の速いヘンリーが声がした部屋に駆けつけて室内にスペルを放っていた。わたしは走りながら、使えそうなスペルをいくつか準備してすぐに出せるようにした。紫色の閃光が辺りを包んだと思った瞬間、部屋から突風が吹いた。
ヘンリーに続いて部屋に飛び込んで中を見渡すと、王子が人魚に襲われていて食べられる寸前だった。
セレナーデはさっきとは違って恐ろしい顔をしていた。目は血走り、避けた口から牙があらわになっている。王子は隙をついて、逃げ出そうと身をかがめた。
セレナーデはわたしを横目で捉えると、出入り口に立っているわたしにむかって突進してきた。
わたしたちはもみ合いになった。
「アリー!」
ヘンリーはスペルを放とうとするもわたしに当たる可能性があるからか、躊躇しているようだ。
セレナーデは水掻きの付いた鋭い爪でわたしの顔を引っかこうとしてくる。寸前のところで顔を背けて、腕に全力を込めてセレナーデの腕を遠ざける。
真近に見るセレナーデの顔は見れば見るほど恐ろしく、牙の隙間から獰猛なうなり声を上げている。
腕力ではセレナーデに敵いそうにない。このままではやられる。わたしの体力はもう限界だった。
残りの力を絞って、セレナーデの手首を押さえつけている右手の差し指をずらしてスペースを作り、一音ずつはっきり発音しながら右手の人差し指をわずかに動かした。
わたしは魔術の起動を感じた。体内に取り込んで変換された空中の魔法の粒子は、魔力となってわたしの体内を駆け巡り、今まさに人差し指から溢れ出ようとしている。
それは一瞬の出来事だったかもしれない。だけどわたしにとっては永遠にも感じられるほど長い一瞬だった。
セレナーデはわたしが放ったスペルによって、体が麻痺したようだ。苦悶の叫び声を上げてわたしの上から転げ落ちた。
それでも起き上がろうとしているセレナーデから顔をそらさずに、わたしは叫んだ。
「ヘンリー!」
ヘンリーはスペルをちょうど唱え終え、セレナーデに向かって放った。彼女の体が不可視の紐のようなもので縛り上げられた。
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