あなたの悪魔とわたしの天使

鈴森心桜

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私はだァれ

第九話 夢想の彼女

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「……魔女を知っている?」

鈴を転がしたような声が聞こえた。
もう何度も耳にして
聞き慣れてしまったその声は、
少しだけ悲しそうだった。
目を開けようと試みるが、何故か開けない。
ならば口を開こうと試みるも、
此方も全く動かない。
嗚呼、また夢を見ているのか、
と自分で納得した。
真っ暗闇な視界の中、
彼女が居るであろう箇所だけ光って見える。
其処に彼女が居る、と言う確信は持てた。

「魔女はね、嘘が得意なのよ。だから、彼女達の創る領域は幻だらけ。…真実なんて、何処にも無い。」

その光は、もやもやと弱々しく光る。
まるで消えかけの蝋燭のように、
何処か儚い雰囲気を放っている。

「今回、貴女の敗因は無知だったこと。魔女について知らなかったことで、貴女は罠に嵌った。」

彼女は、屹度最初から全部見ていたのだろう。
だが敗因とは一体何のことか。
私達は穴から領域外へと脱出した筈だ。
ハールートとマールートも、もう居ない。
だのに彼女は私達が「負けた」と言う。

「白鳥だってそうでしょう?美しく優雅な振りをして、自分の領域に入れば有無を言わさず執拗に攻撃してくる。貴女は、白鳥に捕まった小夜啼鳥。」

"小夜啼鳥"
双子魔女も、
私やルシファーのことをそう呼んでいた。
囀る声も、羽ばたく翼も持ち合わせていないのに
彼女達は私達をそう呼ぶ。
けれど、囀る声は要らないが、
羽ばたく翼は欲しいと思う。
私やルシファーは浮遊魔法を
覚えることが出来ないから。

「貴女は呪いをかけられた。"縁を切る魔法のろい"を。だからあの子達を救えなかった。」

何なんだ。
一体何のことを言っているんだ。
呪いってどういうことだ。
誰がそんなものを私にかけたんだ。
"あの子達"って誰のことだ。
私は、誰を救えなかったんだ。
考えれば考えるほど
彼女の言葉が理解出来ない。
理解しようと頭を働かせても、
本能がそれを放棄するようにストップをかける。

「そしてもう一つ。神の気紛れによって"貴女達"は選ばれた。退屈しない為に、神はまた駒を動かす。」

天使や悪魔の次は神か。
そんな上昇の人物達は、
私達とは遠い存在だと思っていた。
だがどうだろう。
今になっては、こんなにも近しく感じる。
一体今喋っている彼女は誰なのか。
もしかしたら、声は同じでも
全く別の誰かかもしれない。
何故神のことや、
私にかけられたと言う呪いについて
それほど知っているのか。
彼女は、一体何者なのか。

「このことで貴女は沢山の困難に巻き込まれ、何度も諦めたくなるかもしれない。けれど、生きるのを諦めないでほしい。忘れないで。"私達"が見守っているわ。」

その一言に、何故かとても安心した。
頭の中に何度も木霊する。
"彼女達"が、見守ってくれていると言う事実が、
私をとても強くし、安心させる。
何故かはわからないが、"そう"だと思った。

「彼女と街のバーロンの井戸へ向かって頂戴。そうすれば、屹度分かる。貴女は賢い子だから。」

声がだんだんと遠のいていく。
自然と、私が夢から
覚めようとしているのだと分かった。
目覚めたくはないのに、体は起きようとする。
まるで何かを早く知りたがっているような、
急かすように目覚めようとする。
双子魔女との関係や、彼女の名前や素顔、
「ガブリエル」とは一体誰なのか、
まだ彼女に聞きたいことが沢山あるのに、
口も目も動こうとしない。
彼女の光はどんどん薄くなっていく。







「………貴女が良ければ、光の巡りから外された彼等も、救ってほしい。」
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