自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 84 迷宮都市 地下11階 ダンジョンの森で薬草採取

 月曜日。
 地下11階の安全地帯に到着すると、挨拶に来た7人のリーダー達に沙良が子供達の話を伝えていた。

「皆さん、クランに入っているのに階層を移動しても大丈夫なんですか?」

 地下10階の配送担当が居なくなるのを心配した沙良が尋ねると、

「あぁ、俺達は地下11階のパーティーと交代したんだ」

 5人のリーダーは顔を見合わせながら、そう答える。

「私はクランリーダーだからね。元々地下18階を攻略していたし、サラちゃん達が拠点を移動するのはいい機会だったんだよ」

 アマンダさんの言葉に、沙良は目を点にしていた。
 彼女がクランリーダーだと知らなかったらしい。
 初対面の時、地下18階を攻略していたと言ってた事を覚えてないのか?
 ダンクさんのパーティーは、クランが解散したのを忘れていた。
 今は、どこのクランにも所属してないんだろう。
 しかし、配送料は拠点によって変わると聞いた。
 地下11階の配送を請け負っているパーティーが、よく承諾しょうだくしたな。
 そう思っていると、配送料はそのままでいいから代わってほしいと交渉したようだ。
 金より安全性を重視したのか……。
 一度ホームへ休憩しに戻った際、俺はそれとなく話題を振る。

「沙良、森のダンジョンにベアがいただろう? もしかしたら、ローリエがあるんじゃないか?」

「あっ、そうだよ! ミリオネの森にはローリエがあったもんね。探してみよう!」

 節約好きの沙良が話に食いついた。
 よし! これでゴブリンの魔石取りは回避出来るな。
 テントから出ると、肩を大きく引き裂かれた怪我人が運ばれてくるところだった。
 これはフォレストベアの爪にやられた傷だろう。
 旭が駆け寄り、助けがいるか確認してから鎧を脱がせる。
 傷口にウォーターボールで水を掛け、状態を見てヒールを唱えていた。
 治療自体は一瞬で終わり、治療代の金貨13枚(1千3百万円)を受け取り戻ってくる。
 それから俺達は安全地帯を出て1回目の攻略に向かった。

 沙良が早速さっそくマッピングを使用して、ローリエを発見したようだ。

「お兄ちゃん、やっぱりローリエがあったよ!! それに、癒し草と魔力草も見付けたの。久し振りに皆で薬草の採取をしよう?」

「薬草採取はした事がないから、俺もやりたい!」

 沙良の提案に旭が乗っかる。当然、俺も賛成した。
 ゴブリンの魔石取りより余程いい。
 沙良が旭に癒し草と魔力草の特徴を教えて、採取に行く。
 旭が直ぐに魔力草を見付けると、それを見ていた沙良がポカンとした表情になる。
 俺は魔力草のある場所が、なんとなく分かるんだよな。
 きっと旭も同じじゃないかと思う。
 その後も次々と魔力草を発見する旭に、納得いかないと沙良がむくれていた。
 俺達がのんびり薬草採取をしている場所に、アマンダさんのパーティーが通り過ぎる。
 沙良が両手に癒し草を持っている姿を、あきれた顔で見ていたが……。
 ダンジョン内で、常設依頼にない薬草採取をしている冒険者はいないんだろうな。
 
「お兄ちゃん! りんごがってるよ!!」

 沙良が突然大声を上げる。
 おいっ、耳元で叫ぶな! それにしても、りんごだと?
 沙良が指差す方へ視線を向けると、5m程の高さの木に生っていた。
 森のダンジョンには果物も生るのか……。
 薬草採取を中止して、りんごの採取に切り替えよう。
 どうせなら食べられる物がいい。
  
「俺がりんごを採るから薬草採取は、お前達に任せる!」

 そう言いながら、生っているりんごを枝から慎重にライトボールの魔法で切り離した。
 Lvが上がったおかげで視力が良くなったため、高い所に生っているりんごがはっきり見えるのは便利だな。
 俺はりんごが地面に落ちないよう、しっかりと受け止め沙良が持つのを嫌がった使用者登録付きのマジックバッグに入れた。
 魔物を入れなければ、大容量のマジックバッグに小さなりんごが沢山入る。
 1本の木に生っている、全てのりんごを収穫しても大丈夫だ。
 100個程収穫して、りんごが生っている他の木を探す。
 すると、近くの木にも生っていた。
 沙良達が薬草採取をしている間、近付いてきた魔物を倒しながら俺はりんご狩りを楽しんだ。

 3時間後、安全地帯に戻りホームで昼食を食べる。
 今日は豚の生姜しょうが焼き、きんぴら、卵焼きが入った、おにぎり弁当だった。
 おにぎりの中身は作った本人も分からないらしく、何が入っているかは、お楽しみだと言う。
 同じ具材が入っている可能性があるのか?
 俺のは梅、たらこ、昆布と全部違っていたが、沙良は両方鮭が当たってしまったらしい。

「ロシアンルーレットにしないほうが良かった……」

 あぁ、食事に遊び心は必要ないと俺も思うぞ?
 妹が、思い付きを直ぐに実行するのは悪い癖だ。
 その思い付きが良い時もあるが、大抵失敗するからな。
 沙良のおにぎりが2個目も鮭だったと知った旭が、「自分の分と交換してあげるよ」と言って食べかけの梅が入った物を渡す。
 おいっ、間接キスとか狙ってないよな?
 沙良は気持ちだけ受け取ると言い断っていたが、代わりに俺が食べていた昆布のおにぎりと交換させられた。
 旭の視線が痛い……、こんな事で恨むなよ。

 食事を済ませてテントから出ると、7パーティーが昼食を取っているところだった。
 俺達は、お昼をホーム内で食べる。
 既に作ってある弁当なので、料理の時間が掛からず他の冒険者より早く食べ終わるのだ。
 沙良がアマンダさんのパーティーで料理を担当しているケンさんに、午前中に採ったローリエを渡していた。
 ちなみにアマンダさんのパーティーが食べているメニューは、野菜スープ・ミノタウロスのステーキ・パンだった。
 オーク肉は豚肉の味だったが、ミノタウロスは牛肉の味がするんだろうか?
 沙良が興味を持っているようなので、近い内に食べる事が出来そうだ。
 そういえば、リースナーのダンジョンで肉を引き取っていたな。
 ステーキもいいが牛肉に近い味なら、すき焼きで食べてみたい。

 午後から、またゴブリンの魔石取りをさせられる。
 そんなに石化魔法のLvを上げたいのか?
 この分じゃ、3ヶ月間続きそうだ。
 旭もげんなりとした顔で、ゴブリンの死体から魔石を取り出していた。

 5日後の金曜日。
 冒険者ギルドで換金する際、午前中に毎日採取した癒し草と魔力草を沙良が提出したので、解体場のおじさんが困っていた。

「常設依頼にない物だから、受付嬢に確認してくれ」

 と言われて、沙良が意気揚々と受付嬢へ会いに行く。
 買い取ってもらえると思っているみたいだ。
 沙良の申し出に受付嬢は苦笑しながら、「今回から常設依頼に追加しておきます」と言ってくれる。
 無理を通したみたいで申し訳ない。
 まぁ常設依頼に追加したところで、ダンジョン内で薬草採取をするのは俺達だけだろう。
 量もそんなに多くないし、冒険者ギルドは困らないか……。
 冒険者ギルドを出て肉屋に寄る。
 案の定、沙良がミノタウロス肉の解体をお願いしていた。
 食べるのが楽しみだ。

 日曜日の炊き出しには、子供達にダンジョンで大量に採取したりんごを渡した。
 滅多に食べられない果物をもらって、子供達が嬉しそうにしている。
 ダンジョンの森のりんごは翌日にまた生っていたため、毎日採取していたのだ。
 売る程あるので、これからは毎回子供達のお土産にしよう。

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