自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第869話 シュウゲン 52 沙良達の発見&帰ってきた3人

 月曜日。
 ひびき君達が、いつ戻ってくるか分からぬため、沙良達は普段通りダンジョンの攻略をするようだ。
 昨日セイから連絡がなかった所為せいか、美佐子みさこはいつもより元気がない。
 まったく、妊娠中の妻にはストレスが厳禁だというに、響君も何を考えておるのかの?
 かなではそんな妹の様子を気遣い、安心させるような言葉を掛けておるが、効果はあまりないようじゃ。

 異世界に行く沙良達を見送り、儂と美佐子は畑へ向かう。
 すると娘は袋から何かの種を取り出して畑に植え、成長魔法を掛けた。
 ぴょこんと双葉が顔を出し、みるみる内に苗が育っていく。
 緑の実がると、それがピーマンである事が分かった。
 しかし、その量が尋常じんじょうじゃない。
 目の前に何百個とあるピーマンを見て、美佐子が微笑んでいる。
 儂も収穫を手伝ったが、そんなにピーマンばかりを成長させる理由は何だ?
 その後、水魔法で畑全体に水をき家へ帰った。

 昼食を食べに戻ってきた結花ゆかさんと沙良へ、美佐子がピーマンをお裾分すそわけし、残った分を沙良のアイテムBOXに保管するよう頼んでいる。
 その際、美佐子と結花さんが視線を交わし握手をしておった。
 母親から渡されたピーマンの量に沙良は驚いていたが、何かに気付いたのか納得したよううなずいていた。
 てっきり昼食にはピーマンを使った料理が出てくると思っていた儂は、直ぐに食べられんのを残念に思う。苦労して収穫したのになぁ~。ピーマンの肉詰めが食べたかった……。
 料理が出て来ると、いつになく尚人なおと君が食欲旺盛おうせいな態度を見せる。
 昨夜実家に泊まり、2食続けて母親の料理を食べたのが原因か?

「誰も取らないから、落ち着いて食べろ」

 それを見た賢也けんやが、尚人君の背中を優しくポンポンと叩いておった。
 こうして世話を焼いている姿を見ると、兄弟同然に育った事がよく分かるな。
 父親同士が親友で近所に住んでいるため、子供の頃から付き合いがあったのだろう。

 食事を終え、摩天楼まてんろうのダンジョンに向かう。
 単独で洞窟の発掘作業をして安全地帯に戻ると、やけに機嫌のいい孫娘に気付いた賢也が理由を聞いていた。
 あかねは土曜日に外出する予定があるからだと返事をしていたが、どうにも胡散うさん臭い。
 父親の響君が不在なのをいい事に、また別の階層を攻略していたんじゃろう。

 その日の夜。
 ダンジョンで夕食を食べたはずの沙良と茜が美佐子の家に来た。

「おや? こんな時間にどうしたんじゃ」

 2人に気付いた儂が声を掛けると、

「少し話があって……。ドワーフの国は北大陸にありますよね? シュウゲンさんは、カルドサリ王国にどうやって来たんですか?」

 突然、移動手段を聞かれ一瞬正直に話すかどうか迷った。
 しかし沙良の機嫌が良かった事に思い当たり、鎌をかける心算つもりで素直に話してみた。

「そうだの……。ダンジョンから他国へつながる魔法陣がある。これは100階以上を超える大型ダンジョンにしかないが、ある条件を達成すると利用可能になるんじゃよ」

「それは、例えばボスのような魔物を倒したりとかですか?」 

 やはり、沙良達は隠し部屋を発見したようだな。

「ふむ、まぁ似たようなものだ。儂は、ドワーフの国にあるダンジョンから直接カルドサリ王国へ来たでな。特級冒険者は、ダンジョンの魔法陣で移転可能な者だけがなれる。守秘義務もあるが、時空魔法を持つ沙良ちゃんに内緒にしたところで意味はなかろう。アシュカナ帝国へ行った父親が心配なのか?」
 
 もしや、アシュカナ帝国に行ける移転陣だったのかと思い尋ねると、

「ええ、それもありますが……。ちなみにドワーフの王は、どんな方ですか?」

 思いもよらない質問が返ってくる。
 あぁ、発見したのは北大陸に繋がる移転陣だったのか……。
 既に移転してドワーフの国へ行ったのじゃろう。そこで儂の名前を聞いたに違いない。

「……国一番の鍛冶師じゃの。世襲制ではなく、火竜が認めた者が王になる」

 だが儂は自分が王だと言わず、すっとぼけて話題を変えた。

「ではドワーフの国は、ケスラーの民達をイフリートが守っていたように、火竜が守護しているんですね」

 エルフの血を受け継ぐ体に憑依ひょういした沙良は、あの場に出現したイフリートの姿が見えておったらしい。
 茜が初耳だという様子を見る限り、冒険者達には見えておらんかったようだ。

「ドワーフ王は火の精霊王から加護を貰っておる。そろそろ、代替わりしていい頃だがの。まだ奉納の儀で認められた者がおらんみたいでな、ずっと変わらぬままじゃ」

「鍛冶の腕なら、シュウゲンさんが王になれそうですね!」

「そうか、嬉しい事を言ってくれるの」

 探るような視線を向けられ笑顔で答えると、

「ダンジョンから行ける魔法陣の移転先は、どれくらいあるんですか?」

 沙良はそれ以上追及せず別の質問に変えた。

「見つけたダンジョンの階層により変化するようだが、儂が移動出来るのは20ヶ国ある」

「南大陸も含まれてますか?」

「いや、中央大陸と北大陸に西大陸だけだの」

「そうですか、教えて下さりありがとうございます」

 知りたい内容は聞き終えたとばかりに、2人は一度頭を下げ帰っていった。
 うむ、どうやら摩天楼のダンジョンで発見した移転陣は、まだ全部調べておらんようだな。
 ダンジョン攻略中はいいが、土曜日に茜と2人でアシュカナ帝国へ行く予定じゃ……。
 そんな心配は杞憂きゆうに終わり、金曜日に響君とヒルダちゃんとセイが無事戻ってきた。

 家に戻った響君は戻った早々、

「おかえりなさい。あなた、ちょっと話があるわ」

 美佐子に2階へ連れていかれた。
 それを見た儂と奏は肩をすくめ、2人が下りてくるのを待つ。
 今頃、響君は美佐子に淡々とお説教をされておるじゃろう。
 1時間後。げっそりした顔の響君と、すっきりした顔の美佐子がリビングに顔を出す。
 2人の表情が対照的だな。
 夕食には、これでもかというくらいピーマンくしの料理が並んだ。
 青椒肉絲チンジャオロース、ピーマンの肉詰め、ピーマンだけの回鍋肉ホイコーロー、ピーマンとじゃが芋いため、ピーマンのそぼろ煮、ピーマンの佃煮つくだに、ピーマンサラダ。
 
「沢山作ったから、全部残さず食べてね」

 ここまでくれば嫌でも美佐子の意図が理解出来る。
 響君はピーマンが苦手なんじゃろう。
 儂も、小夜に春菊しゅんぎくだらけの料理を食べさせられた事があるからの。
 響君はテーブルの上に並べられた料理を見て顔を引きらせると、覚悟を決めたようにはしを手に取った。
 そして、無言で取り分けられたピーマン料理を攻略すべく口を開き一口食べたあと、うっとなり急いでご飯を詰め込んでいる。
 それからは、無言でただひたすら料理を流し込んでいた。
 儂は、その姿を横目に見ながら美味しく頂いたがな。
 やっとピーマンの肉詰めが食べられて嬉しいわい。

 食後、憔悴しょうすいしきった響君は肩を落としながら部屋へ戻っていった。
 これにりて、自分勝手な行動はつつしむようにするべきじゃ。
 妻は怒らせると非常に怖い存在だからの。
 美佐子の態度がこれなら、ヒルダちゃんは大丈夫だろうか?
 結花さんの料理は、普段がアレなだけに食べ慣れておると思うが……。
 握手をしていたのは、ヒルダちゃんもピーマンが苦手と見た。
 料理のレパートリーが少なそうな結花さんでは、ピーマンを丸ごと焼いた物が出てきそうだ。
 それも黒焦げの……。とばっちりを受けるしずくちゃんは可哀想かわいそうに……。

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