自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 91 迷宮都市 地下11階 ドレイン魔法の検証

 それからダンジョン攻略終了日の金曜まで、沙良はドレインの魔法を使用し続けていた。
 ゴブリンは妹のドレインと石化のLv上げに使われ、その後の魔石取りが少なくなる事はなく、遠距離からドレインを掛ける所為せいで、止めを刺すために俺達は倒れた魔物の場所まで走る必要にられた。
 安全を第一に考えれば、この方法が理にかなっていると思うが、魔物相手に戦う冒険者の経験は積めないだろう。
 まっ、接近戦をしない時点で今更か……。
 俺と旭は四属性魔法のLv上げを優先するため、ドレイン魔法は使わず倒す事にした。

 冒険者ギルドで換金を済ませ、ホームに戻り旭と飲みに出かける。
 
「あの人達、クランを立ち上げたって聞いたけど、何か理由があるのかな?」

 注文した生ビールに口もつけず、旭が心配そうに話しだす。

「エンダ達の狙いはシルバーウルフの皮だと思うが、態々わざわざクランを結成する必要があるとは思えん。いまだに、傷を付けず倒せないようだしな。捕らぬ狸の皮算用で、これから大量に狩る心算つもりなら理解出来なくもないが……」

「それって、本格的に迷宮都市で活動する気だよね? やだなぁ~、直ぐに居なくなると思ってたのに」

 魔物寄せを使用するような奴らが同じダンジョンを攻略し続けると分かり、旭は溜め息を吐いて生ビールに口を付けた。
 それから枝豆に手を伸ばし、一つずつ豆を取り出している。
 
「俺達の事を知らない連中が増えるんだ。今まで以上に周囲を警戒しておかないと、沙良が巻き込まれるかもしれない」

「そうだよね! あ~もう、何であんなに綺麗になっちゃったんだろう。余計な虫が付かないよう、見張っておかなくちゃ!!」

 旭の心配は、妹に色目を使う人間が増える事らしい。
 見た目が幼い分、そっち方面のいざこざは当分起きないと思うがな。
 言えば旭のやる気が失せそうなので、俺は黙ったまま注文した料理を片付けた。

 月曜日。
 ダンジョン地下11階で、りんごの収穫をしていると、

「お兄ちゃん。ゴーストにドレインを掛けたらどうなるのか、すごく興味があるんだけど」

 突然、沙良が思い付いた事を口に出す。
 
「お前は変なところが気になるんだな。帰り道の地下8階で、ホーリーを掛ける前に試してみればいいんじゃないか?」

 妹は何に興味を持つか分からない。
 
「うん、そうしてみる。あとスケルトンが、どう倒れるのか見てみたい」

「沙良ちゃんは、これからドレインを使いまくりそうだね~」

 ドレインの効果を知りたくてウズウズしている沙良を見ながら、旭がニコニコ笑っている。

「頼むから間違って俺達にするなよ!」

 そこだけは注意しておかないとまずいと思い、釘を刺しておいた。

「了解!」

 沙良はいい笑顔で答えるが、本当に大丈夫か不安になった。

 金曜日。
 地下11階から地下10階へ上がると沙良が早速さっそく、ナイトメア(男性体)にドレインを掛ける。
 実態のない魔物だが、その場で倒れ地面に伏しているように見える。
 
「お兄ちゃん、幽霊も寝るのかな?」

「さあな、納得したんならホーリーを掛けるぞ?」

「う~ん、ちょっと待って」

 そう言って沙良はナイトメア(男性体)に近付くと、何やらごそごそし出し、

「見て見て~、魔石取れた~!」

 振り返って俺と旭に魔石を見せる。

「沙良ちゃん、何してんの!?」

「だって、魔石を取ったら普通死ぬでしょ」

 驚いて声を上げた旭に、沙良があっけらかんと言う。

「ホーリー以外で倒す方法があったんだ……」

 旭が唖然あぜんとしながらつぶやいていた。
 流石さすがに俺も、その発想はなかった。
 アンデッドは浄化の魔法で倒すという先入観があり、魔石を抜き取る事につながらなかったからだ。
 たまには、妹の柔軟な考えが役に立ったと言えよう。
 沙良は実験が成功した事が嬉しいのか、満足気にうなずいている。
 
 地下8階では、ゴースト、リビングアーマー、リッチに沙良がドレインを掛け魔石を抜き取っていた。
 最後にスケルトンへドレインを掛けると、骨がバラバラになって倒れる。
 沙良は、その光景に驚いたようだが、直ぐには魔石を取らず考え込んでいるように見える。
 また、ろくでもない事を思い付いていそうだな。
 どうせ、朝になったら骨がくっついて動き出すのか検証したいんだろう?
 臭いがキツイ、アンデッド階層で一晩過ごすのは遠慮したい。その検証はあきらめてくれ。
 ドレインの効果が分かったところで、ダンジョンを出て冒険者ギルドに行き換金した。

 月曜日。
 午前中、ダンジョン地下11階でりんごを収穫してホームで昼食を取る。
 今日は久し振りにファーストフードが食べたいと言っておいたから、妹は弁当を作っていない。
 沙良がアイテムBOXから取り出した、熱々の状態のエビカツセットを受け取り袋から取り出すと、飲み物がホットコーヒーだった。

「コーラはないのか?」

「私は炭酸が飲めないの。ホットコーヒーで我慢して」

 いや、お前のアイテムBOX内には、他の住人が購入した分も入っているんじゃないのか?
 その中にはコーラもあるだろう。
 だが、そんな事を口にすれば自分で買ってきてと言いそうだ。
 子供の頃、母に炭酸を飲むと骨が溶けると言われた事を信じている妹に苦笑する。
 ファーストフードはコーラのほうが合うと思うんだがな。

「ポテトが美味しい~」

 熱々のポテトを食べて笑み崩れる妹が感想を言い、次のポテトに手を伸ばしていた。
 それには俺も同意する。やっぱり、フライドポテトは細いほうがいいよな!
 旭はエビカツバーガーにかじりつき、ポテトを口一杯に頬張ほおばっていた。 
 
「沙良ちゃん、次はダブルチーズバーガーをお願い!」

「俺は照り焼きバーガーを頼む」

 リクエストする旭に便乗して、俺も2個目のバーガーを頼んだ。
 1個じゃ食べた気がしない。
 若返ってよく食べるようになったが、その分消費カロリーも多いから太らないだろう。
 そもそも心臓外科医は立ちっぱなしで、長時間の手術をこなす必要がある。
 体力がないとやっていけない職業だ。
 そのために休日は旭とジム通いをして、体力が落ちないよう気を付けていた。
 今は毎日ダンジョン内を走り回っているし、土曜日はジムで汗を流しているから日本にいた頃より食べても問題ない。
 そんな事を思っていると、

「俺も、照り焼きバーガー追加で! それとナゲットもよろしく」

 旭が3個目のお願いを口にすると同時に、ナゲットまで頼んでいる。おいっ、流石にそれは食べすぎだ!
 まだ、午後からの攻略があるんだぞ?
 ゴブリンの魔石取りの最中に吐いたらどうするんだ……。
 俺の心配を他所よそに、旭は満面の笑みを浮かべて照り焼きバーガーを完食した。
 結果、「気持ち悪い……」倒れた魔物の場所まで行く間、胸を押さえてヨロヨロと歩く旭の姿があった。
 お願いだから吐かないでくれよ?

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