自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第872話 シュウゲン 55 移転陣発見の報告&移転陣の意外な移動方法

 儂が火の精霊王と会う算段をつけていると、

「お義父さん。娘が発見したダンジョンの魔法陣ですが、冒険者ギルドへ発見の報告を代わりにしてもらえますか?」

 ひびき君に本題を振られ、道中で聞いた話を思い出す。

「おお、そうじゃったな。儂の知らぬ間にベヒモスを討伐するとは、優秀な孫達だ。摩天楼まてんろうダンジョン99階で発見した事にすれば問題なかろう。先程、判明した移転先も聞いておる」

 予想通り、父親不在の間に沙良達は別の階層で魔物を倒したあと、移転陣を見付けたらしい。
 儂の時はマクサルトの大型ダンジョンでホーンバッファローを討伐した際、移転陣が出現したな。
 
「じゃあ、今から摩天楼の冒険者ギルドへ向かいましょう」

 響君がそう言うと、沙良は儂らを異世界に送る。
 30分後、冒険者ギルドで待ち合わせの約束をして別れた。
 受付嬢にギルドマスターとの面会を申し込むと直ぐに受理され、案内される。
 部屋に入ると、片膝を突き頭を下げたギルドマスターの姿が見えたので、肩を叩き立ち上がらせた。
 儂をドワーフ王と知るギルドマスターのヒューは、相変わらず礼儀正しい青年のようだ。
 だが、あまりうやうやしい態度を取られては困る。
 
「そうかしこまるな。前回も言ったが、普通に接してくれて構わんよ。今日は、移転陣発見の報告にまいった」

 そう言って、空いてるソファーに座る。
 儂の用件を聞いたヒューは、移転陣発見の報告に立ったまま固まってしまった。

「今……移転陣を発見したとおっしゃいましたか?」

「うむ。前回ダンジョンを潜った際に見付けたのだが、呪具の発見を報告するほうが重要だったのでな。報告するのを忘れておった」

 ダンジョンの入場料を一度しか払っていない事に気付き、あわててそう言い直す。
 まぁ、それでもダンジョンに居た滞在時間を考えれば辻褄つじつまが合わぬであろうが……。
 沙良をエルフの王族と思っているヒューなら、同じパーティーメンバーである儂の行動には目をつぶるじゃろう。

「そうですか……。では、移転陣を発見した経緯をお話し下さい」

 ヒューは報告が遅れた事に言及せず、執務机から羊皮紙とペンを手に取り儂の前に座った。

「地下99階のベヒモスを倒したあと小屋が現れての。中に入ったら移転陣があったのだ。移転先は101階から200階ある」

「ベヒモスですか!? それを、お1人で倒されたとは……」

 さらりと移転陣の出現条件を言った心算つもりだったが、魔物の名前を聞いたヒューが驚愕きょうがくして目をみはる。
 やはり、そこに引っ掛かったか……。
 ベヒモスのような超大型魔物を、いくら特級冒険者といえども1人で倒す事は不可能だわな。
 ありゃ、沙良がマッピング能力を使用し、遠距離から魔法で倒したのだろう。
 接近戦で倒すには、冒険者が少なくとも3パーティーは必要な魔物だ。

「儂にとっても簡単だったわけではない。それはもう大変じゃった」

 いかにも苦労しかたのように、大袈裟おおげさな溜息を吐いておく。

「そっ、それで換金のほうは……」

「悪いが、記念に取っておこうと思ってな。金には困っとらんで、換金はせんよ」

「それは非常に残念です」

 儂がベヒモスを換金すれば、冒険者ギルドはかなりのもうけが期待出来る。
 ヒューはギルドマスターとして利益を確保したかったろうな。
 魔石だけでも、相当な高額になるはずだ。
 しかし倒したベヒモスは沙良のアイテムBOXに入っているため、ここで換金するのは無理だった。
 
「これが、現時点で判明している移転陣の行き先じゃ」

 事前に沙良から手渡された移転先が書かれた羊皮紙をヒューへ渡し、話の矛先ほこさきを変える。
 それによると、101階~110階は北大陸にある国、111階は北大陸の上にある玄武げんぶが住む島、112階~130階は中央大陸にある国、131階は南大陸にあるケスラーの民が暮らす集落らしい。
 132階からの情報がないのは、まだ調べておらんのだろう。

「報告ありがとうございます。132階以上の階層の移転先が分かった時は、またご連絡下さい」

「そうするとしよう」

 席を立ち、ヒューに手をヒラヒラと振り部屋をあとにした。
 待ち合わせの時間ぴったりに沙良達が迎えにくる。

「ギルドマスターに話しておいたぞ」

「大丈夫でしたか?」

 実際に移転陣を出現させたのは孫娘なので気になるのだろう。

「おう、何も問題なく受理された」

 儂は安心させるよう鷹揚おうよううなずいた。

「シュウゲンさん。これから、隠し部屋のある場所へ行きますね」

「儂もベヒモスを倒して条件を満たしたいが、もう出現せんとは残念だな」

「また出てくれたらいいんですけど……」

 沙良がマッピングを使い、ダンジョンの99階にある隠し部屋の前まで移動する。

「ここです。何か見えますか?」

 そう言われても条件を満たしていない儂には見えず、首を振った。
 何のために、ここまで連れて来られたのかの?
 そう思っていたが次の瞬間、見覚えのある景色に変わった。
 この懐かしい風景は儂の故郷か?

「あぁ確かに、この方法なら俺達も移転先へ同行出来るな」

 驚いた様子も見せず、響君が淡々たんたんと言った。
 何の説明もなく連れて来られた場所は、移転陣につながる先であったらしい。

「アイテムBOXに入っている間の記憶はないんだ……。簡単に人を誘拐出来そうな能力だね!」

 一体どうやって……と思っていると、いつき君がその方法を口にする。
 なんと! 儂らは沙良のアイテムBOXに入れられ移動したのか!?

あかねと旭に、お母さんも持ってますよ?」

「アイテムBOX持ちが4人って、考えたら怖いなぁ」

 生きたまま魔物を収納出来るのは知っているが、人を入れるとは思わなんだ。
 そんな方法で、条件を満たしていない儂らを移転先に連れてくるとは……。
 
「シュウゲンさん。ドワーフの国に少し寄りますか?」

 唖然あぜんとしている儂に向かって、沙良が問いかける。
 ドワーフの国には何度も里帰りをしていたため、王の姿を知っている者が多い。

「いや……、儂は自分で行けるから今度でよい」

 今更、ドワーフ王だと明かすのは少々ばつが悪いので断った。

「分かりました。お父さん、次は隠し部屋の扉が開かなかった場所に行くね」

「扉が開かないなら、行けないだろう?」

「マッピングで外に出られるよ」

「……お前の能力は規格外過ぎる」

 儂が発見した移転陣にも扉が開かない階層が幾つかあったが、沙良はマッピングで外に出られるのか……。
 次に目を開いた時は、ダンジョンの最終階層のようだった。

「112~130階は、直接ダンジョンに繋がっているみたい。中央大陸にある国なんだけど、名前がややこしいのよ」   

「あぁ、獣人の種族だけ国があるからの。国と言っても国土は狭い。治めるのは、それぞれの族長だ。本当に獣人を束ねているのは獅子しし族の王でア・フォン王国じゃな。フォンの前に付くのは、種族を表す言葉らしいぞ?」

 以前、獣人に教えてもらった知識を披露すると沙良は納得したらしい。

「そうなんですね。位置関係が、さっぱり分からないので困ります。シュウゲンさんが見付けた魔法陣にも、行けない場所がありますか?」

「あぁ、移転先のダンジョンにある条件を満たしてないから扉が開かんかった。こんな方法で出られるとは、予想外じゃ。しかし、ダンジョンの最終階層なら外に出るのも一苦労だの」

「そこはまぁ、マッピングで簡単に出られるんですけど」

「……」

 孫娘の更なる非常識な発言に儂らは無言になった。
 あ~、それではギルドマスターに渡した移転先に齟齬そごが生じるではないか。
 本来であれば、扉が開かない先のダンジョンで条件を満たし、移転陣を出現させる必要がある。
 まぁ、確認しようにも茜が召喚したベヒモスは既に倒され、今後現れる事はない。
 冒険者ギルドは調査出来んじゃろうて……。

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