自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 96 迷宮都市 地下12階 ミルフィーユ鍋&大人達への支援

 月曜日。
 ダンジョンに向かい、地下12階で大きなみかんを採取後、安全地帯に戻るとテント前に怪我人が2人いたので俺と旭が治療し、お金を受け取る。
 昼食を食べにホーム内へ移動して、弁当を開けた。
 肉じゃが、蓮根れんこんのはさみ揚げ、オクラのバター焼きが入っている。
 肉じゃがは肉とじゃが芋の比率が3対1になっており、肉を多目に入れてくれたようだ。
 蓮根のはさみ揚げには海老しんじょが挟んである。
 ネギとワカメとえのきの味噌汁、ほうじ茶を飲んで食事を楽しんだ。
 
「沙良、マジックキノコばかり倒していたのは何故なぜだ?」

 薬草採取の合間に、換金額が高くないマジックキノコをやたら狩っていた妹を疑問に思いたずねてみる。

「干し椎茸にするためだよ。切れば沢山作れるでしょ?」

 また節約好きが発揮されたらしい。
 マジックキノコに食材としての価値を見出し、地下12階を攻略中になるべく多く集めておきたいんだろう。
 沙良の意識がホブゴブリンから離れてくれれば、魔石取りの回数が減るから俺と旭は助かるな。

「そうか、じゃあ俺も見かけたら倒しておくよ」

 みかんを採取している時、移動速度が遅いマジックキノコは無視していたが、これからは妹のために倒しておいてやろう。

 午後から2回の攻略を終え安全地帯に戻ると、沙良がまた新しい料理を作り出し、シチューの代わりに白菜とファングボアの肉を交互に挟んだミルフィーユ鍋を、アマンダさんとダンクさんのパーティーへ披露ひろうする。
 調理担当のケンさんとリリーさんに作り方を教えているようだ。
 見た目が綺麗な鍋だし、今まで野菜スープばかり飲んでいた彼らの目には新鮮に映ったようで、2人は真剣な表情でレシピを覚えていた。
 まぁ、これなら塩のみの味付けでも美味しく食べられるだろう。
 俺達は沙良が用意したポン酢に付けて、さっぱりと食べたが……。
 「今まで白菜をダンジョン内で扱う食材として見てなかった」と言い、リリーさんが感心していた。

「サラちゃん、肉うどんが最近お昼前に売り切れるらしいぞ」

「あぁ、王都から来た連中だろ? 珍しい食べ物だから、浅い階層を拠点にしてるやつらが食べに来るそうだ」

 食事の最中にダンクさんとアマンダさんが、そう言って愚痴ぐちこぼす。

「俺のクランメンバーが昼に行ったら売り切れでなげいてたよ」

「私のところは、シチューを食べる前に店が終了してたらしい」
 
 どうやら、王都から来た新しいクランのメンバーが肉うどん店に通っているため、1日100食限定の肉うどんが早く無くなってしまうみたいだ。
 だが言われた沙良も、これ以上、肉うどんの数量を増やす訳にはいかない。
 材料に乾麺を使用しているので袋を破る俺達の手間が掛かるし、従業員の仕事も増える。

「朝6時開店だから早朝に行ってもらうしかないです。量は、これ以上増やせませんよ~」

「まぁ、そうだろうな。今度は朝早く行くと言ってたから大丈夫だろう」  

 そんな沙良の答えが分かっていたのだろう。
 ダンクさんは苦笑して、配ったみかんの皮をきだした。
 沙良は腕を組み、何かを考え込んでいる様子だったが、解決策でも思い付いたんだろうか?

 安全地帯での食事を終え家に着くなり、

「鍋の締めは、雑炊とうどんのどっちがいい?」

「焼きそばが食べたいな」

 沙良に聞かれたので今食べたい物を素直に答えたら、あきれた顔をされた。
 いやミルフィーユ鍋は、さっぱりしすぎて腹に溜まらない。
 もっと味の濃い物が食べたくなったんだよ。
 
「賛成!」

 旭も同じだったのか、俺の意見に同意する。
 それを聞いた沙良は溜め息を吐きながら、イカと豚肉を入れた焼きそばを作ってくれた。
 なんだかもう一度、食事を作らせたようで悪いな。
 
 翌日から沙良は天気が続く日を調べるために、毎日TVを見て天気予報をチェックしていた。
 干し椎茸を作るには、雨が降らないほうがいいらしい。
 天候の良い日が続く時を選び、適度な大きさに切ったマジックキノコを幾つもの大きな竹ザルに並べ、ベランダで干していた。
 ベランダにあふれ返るその量に驚きつつ沙良を見ると、笑いが止まらないといった様子で満足気にしている。
 干し椎茸は高いと言っていたから、これからも大量に作りそうだ。
 どうせ俺達が食べるんだし、好きにさせておこう。

 土曜日。
 沙良が話があると言って俺と旭を起こしにきた。
 昨日遅くまで酒を飲んだ俺達は、少々眠たい目をこすりながら目覚ましのコーヒーをれてもらい席に着く。

「あのね、アマンダさんとダンクさんに肉うどんが昼前に売り切れて食べられないと言われたでしょ? お客さんの要望もあるし、うどんを乾麺じゃなく製麺して数を増やしたらどうかと思うの。製麺店には怪我で冒険者が出来なくなった大人を雇おうと思うんだけど、どうかな?」

 あれから沙良は、肉うどんが売り切れる問題について悩んでいたらしい。
 その解決案として意外な方法を提案され、少し考えてみた。
 乾麺の袋を破らなくて済むなら、俺達の手間が省ける。
 子供達だけじゃなく、教会の炊き出しに並ぶ大人は多い。 
 中には高齢でダンジョンに入れず稼げない人もいるだろう。
 肉うどん店の母親達の仕事は少し増えるだろうが、それでも売り切れたら営業を終了するのは変わらない。
 製麺する方法は俺達に話すくらいだから、妹が事前に調べてあるはずだ。
 大人達の支援も視野に入れて製麺店を運営する心算つもりか……。

「いいんじゃないか? やってみろ」

「乾麺より生麺のほうが美味しいし、この世界で作れるようになったほうがいいと思うよ」

 俺と旭の言葉を受け、ほっとした顔を見せた沙良は、

「ありがとう。じゃあ、これから店を探しに行こう!」

 笑顔で服を着替えに行った。
 
 商業ギルドの受付嬢に店を購入したい旨を告げると、また別室へ案内される。
 前も思ったが、この貴賓きひん室のような部屋に俺達が入っていいのか?
 しばらく待つと職員が扉を開ける。
 担当者は、前回と同じカマラさんだった。彼は妙に沙良に対して腰が低い。

「本日のご用件を承ります」

 今日も非常に丁寧な言葉遣いで、90度のお辞儀をする。
 
「お店を1店舗購入しにきました。住み込みの従業員を雇うので、部屋数の多い所を紹介してもらえませんか?」

「またお店を営業なさるのですか? 従業員の人数は、どれくらいをお考えでしょう?」

 カマラさんは店を購入したいと言う沙良に目をみはり、驚いた様子を見せた事をあわてて取りつくろい、条件を確認していく。
 その後、条件に合う3店舗を見てまわり、大通りから少し外れた場所にある部屋数の多い店に決めた。
 飲食店ではなく製麺店なので、集客を考える必要がない。
 製麺したうどんは、肉うどん店で使用する物だからだ。
 従業員用の部屋が2階に4部屋、1階に1部屋あり、裏庭には井戸と水場がある。
 商業ギルド会員の割引を受け金貨44枚(4千4百万円)支払ったあとは、必要になる物を買い出しに行き、沙良がパン用の小麦粉しかないと残念がっていた。
 うどんには中力粉が必要らしい。

 ホームに戻ってからも、まだ買う物があるからとホームセンターまで運転させられる。
 そこでは松葉杖と厚手の透明なビニール袋を購入していた。
 更に製粉所で25kg入りの中力粉10袋を買う。
 大量の買い物に付き合わされた俺と旭は少し休みたかったが、沙良に問答無用で再び異世界へ移動させられたのだった。

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