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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第876話 シュウゲン 59 魔族の青年 ルシファーとの契約
異世界の家に移動して沙良が庭に召喚陣を描くと、それを見た雫ちゃんが呪文を唱えたいと言う。
それに沙良は簡単にOKを出し、召喚呪文を教えた。
「魔族召喚!」
召喚者の名も、呼び出す魔族の名も言わずに召喚が可能なのか?
そう疑問に思っていると、召喚陣の上に見知らぬ青年が出現する。
側頭部の両側に羊の角のような物がある以外、背中に羽もなく人間と変わらぬようだ。
しかし、弱っちいな……。
初めて会う魔族だから、どれほど強い種族かと期待しておったのに拍子抜けじゃ。
「角がある!」
雫ちゃんが興奮して魔族に近づこうとしたところを、尚人君が引き留めていた。
いくら沙良と知り合いだからといっても、初めて会う男性を妹に不用意に近づけさせたくないんだろう。
その青年は周囲を見渡すと、ヒルダちゃんを見て嬉しそうに笑い、
「姫! 会いたかった!」
万感の想いを込めた声で駆け寄る。
なんだ? 綺麗なヒルダちゃんに惚れておるのか?
「樹、ちょっとこい」
それを見た響君は顔を顰め、低い声で言いながらヒルダちゃんの頭を片手で鷲掴み、その場を離れていく。
後を追いかけようとする魔族の青年はセイに前を塞がれ、睨まれておる。
自分が勝てる相手ではないと悟ったのか、青年はそれ以上動かず渋々立ち止まった。
ヒルダちゃんが響君に連行されている間、沙良が魔族の青年を紹介してくれた。
彼は現在男爵位にあるらしく、名はルシファー。魔族は貴族のように爵位がある種族で、その爵位は世襲制ではなく魔力の多さで変わるようだ。
悪魔のような名前に、召喚者のMP値を対価に願いを叶える事を思い出し納得する。
命までは取らぬようだが、それでも取られたMP値は戻ってこない。
Lvを上げる事でしか、減ったMP値を上げられないなら対価として相応の価値がある。
まさに一生に一度の願いとなるだろう。
それを、沙良は対価なしで非常識な方法を使い叶えるというのだ。
確かに儂らは損をせんが、魔族の爵位を上げる事に利はあるのかの?
沙良には爵位を上げた魔族に、何か叶えて欲しい願いがあるのだろうか?
その場に居た儂らの事を家族だと言わず、パーティーメンバーだと簡単に説明を終わらせた沙良が、
「ルシファー、お手玉を10回するのが私の願いよ」
早速、願い事を口にする。
「お手玉とは何だ?」
お手玉を知らないルシファーが怪訝な表情で聞き返すと、沙良は手本を見せてからお手玉を渡した。
一見、簡単そうに見えても2個のお手玉をスムーズに連続で10回続けるのは、やった事のない者には難しかったようで、ルシファーが成功したのは30分を過ぎてからだった。
ルシファーに払った対価はMP値100。
皆の対価も同じにするらしいが、割に合わんような気がする。
「エンハルト王国の女王になって」
次に結花さんが姿変えを願う。
一度見た者なら同じ姿になれるらしく、ルシファーは一瞬で女性になった。
これがエンハルト王国の女王か……、やはりアマンダ嬢に似たところがあるな。
結花さんは女性になったルシファーをしげしげと見つめたあと、女性らしい部分に手を触れる。
「こら、変なところを触るな!」
その行動にぎょっとした彼が思わず声を上げ、ペタペタと触れる結花さんの手を掴んだ。
「あら、ごめんなさい。ちゃんと女性の体になるのね。子供も産めるのかしら?」
「本体は異界にある。この世界の体は仮初にすぎないから、女性になっても子供は産めない」
では、今見えている姿は幻のようなものなのか?
魔族の不思議な生態を思いつつ異界と聞いて、儂らが住んでいる世界以外にもあるのだと知る。
そこには魔族しか居ないのだろうか……。
召喚陣からの移動しか異界との行き来は出来ないなら、魔族がこの世界に攻めてくる事はなさそうだな。
「へぇ~、変わった種族なのね」
悪びれもせずに感心した様子の結花さんを見て、儂は女性になれるならと真っ先に思い浮かんだ願い事を家族の前で言うのは止めようと諦めた。
2人だけなら願っても問題ないか?
ルシファーには軽蔑されるかも知れんが、同じ男同士理解してくれるじゃろう。
小夜と再会したからには、ああいった場所に行くのも憚られる。
儂だって、まだ枯れてはおらんのだよ。
ルシファーは続く願い事を次々と叶え、儂の番になった。
一番の望みは言えんので、この弱っちい魔族を鍛えてやろうと庭を100周させた。
儂の内容を聞いてか、奏は懸垂100回、早崎君が逆上がり100回、ヒルダちゃんと響君が縄跳び100回、茜はほふく前進を10往復、セイは腹筋100回を願う。
うむ、良い体力作りになったじゃろう。
儂ら全員の願いを叶えたルシファーは疲労困憊で倒れておったが、ヒルダちゃんに良いところを見せたいのか、最後まで出来ないとは言わず頑張った。
翌週から、沙良はダンジョンの攻略を中止してルシファーの爵位上げを優先させるという。
パーティーメンバーを連れガーグ老の工房で行うので、儂の願いは口に出せず彼の体力強化に専念した。
沙良の希望する侯爵になるまで、ルシファーは色々な願いを叶える羽目になったが、結花さんの手料理を食べさせられた時が一番大変だったらしく、その日は早々に異界へ帰ってしまった。
翌週、水曜日。侯爵になるために必要なMP値が溜まり、あとはLvを50に上げるだけとなる。
木曜日と金曜日に、セイが摩天楼のダンジョンで彼を召喚するそうだ。
その間、休みになった儂はヒルダちゃんを訪ねて、玄武の剣を渡した。
「俺が貰ってもいいんですか? ありがとうございます。大切に使いますね!」
喜んではくれたようだが、儂の望むお礼はなかった……。
その剣は世界に10本しかない貴重な物だから、もっとこう、全身を使った喜びの表現をしてくれても良かったんじゃよ?
「玄武の剣には水魔法を吸収する効果があり、ウォーターウォールを生成する事も出来るからな。忘れるでないぞ」
ガーグ老に渡した時は敢えて言わんかったが、ヒルダちゃんにはしっかり伝えておこう。
「そっ、そんな効果が!?」
剣に付随する効果を知ったヒルダちゃんは、目を見開き驚いて、
「ウォーターウォール!」
直ぐに、その効果を確かめた。
魔法名を唱えた途端、ヒルダちゃんの周囲に高さが5mはありそうな円状の水柱が湧き立つ。
これがウォーターウォールの魔法か……、厚みも1mくらいある。
玄武の守護があれば、大抵の火魔法は防げそうじゃ。
「凄いですね!! 娘は随分、玄武に好かれていたらしい」
自分の周囲に張り巡らされた水柱を見て感嘆の声を上げたヒルダちゃんは、にっこりと笑う。
玄武の甲羅を手に入れる機会など、滅多にない。沙良は幸運だな。
金曜日。ルシファーはLv50に上がり、無事に侯爵となった。
簡単な願いを叶えるばかりで、実力が伴っているかは大いに疑問が残るところじゃ。
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お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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それに沙良は簡単にOKを出し、召喚呪文を教えた。
「魔族召喚!」
召喚者の名も、呼び出す魔族の名も言わずに召喚が可能なのか?
そう疑問に思っていると、召喚陣の上に見知らぬ青年が出現する。
側頭部の両側に羊の角のような物がある以外、背中に羽もなく人間と変わらぬようだ。
しかし、弱っちいな……。
初めて会う魔族だから、どれほど強い種族かと期待しておったのに拍子抜けじゃ。
「角がある!」
雫ちゃんが興奮して魔族に近づこうとしたところを、尚人君が引き留めていた。
いくら沙良と知り合いだからといっても、初めて会う男性を妹に不用意に近づけさせたくないんだろう。
その青年は周囲を見渡すと、ヒルダちゃんを見て嬉しそうに笑い、
「姫! 会いたかった!」
万感の想いを込めた声で駆け寄る。
なんだ? 綺麗なヒルダちゃんに惚れておるのか?
「樹、ちょっとこい」
それを見た響君は顔を顰め、低い声で言いながらヒルダちゃんの頭を片手で鷲掴み、その場を離れていく。
後を追いかけようとする魔族の青年はセイに前を塞がれ、睨まれておる。
自分が勝てる相手ではないと悟ったのか、青年はそれ以上動かず渋々立ち止まった。
ヒルダちゃんが響君に連行されている間、沙良が魔族の青年を紹介してくれた。
彼は現在男爵位にあるらしく、名はルシファー。魔族は貴族のように爵位がある種族で、その爵位は世襲制ではなく魔力の多さで変わるようだ。
悪魔のような名前に、召喚者のMP値を対価に願いを叶える事を思い出し納得する。
命までは取らぬようだが、それでも取られたMP値は戻ってこない。
Lvを上げる事でしか、減ったMP値を上げられないなら対価として相応の価値がある。
まさに一生に一度の願いとなるだろう。
それを、沙良は対価なしで非常識な方法を使い叶えるというのだ。
確かに儂らは損をせんが、魔族の爵位を上げる事に利はあるのかの?
沙良には爵位を上げた魔族に、何か叶えて欲しい願いがあるのだろうか?
その場に居た儂らの事を家族だと言わず、パーティーメンバーだと簡単に説明を終わらせた沙良が、
「ルシファー、お手玉を10回するのが私の願いよ」
早速、願い事を口にする。
「お手玉とは何だ?」
お手玉を知らないルシファーが怪訝な表情で聞き返すと、沙良は手本を見せてからお手玉を渡した。
一見、簡単そうに見えても2個のお手玉をスムーズに連続で10回続けるのは、やった事のない者には難しかったようで、ルシファーが成功したのは30分を過ぎてからだった。
ルシファーに払った対価はMP値100。
皆の対価も同じにするらしいが、割に合わんような気がする。
「エンハルト王国の女王になって」
次に結花さんが姿変えを願う。
一度見た者なら同じ姿になれるらしく、ルシファーは一瞬で女性になった。
これがエンハルト王国の女王か……、やはりアマンダ嬢に似たところがあるな。
結花さんは女性になったルシファーをしげしげと見つめたあと、女性らしい部分に手を触れる。
「こら、変なところを触るな!」
その行動にぎょっとした彼が思わず声を上げ、ペタペタと触れる結花さんの手を掴んだ。
「あら、ごめんなさい。ちゃんと女性の体になるのね。子供も産めるのかしら?」
「本体は異界にある。この世界の体は仮初にすぎないから、女性になっても子供は産めない」
では、今見えている姿は幻のようなものなのか?
魔族の不思議な生態を思いつつ異界と聞いて、儂らが住んでいる世界以外にもあるのだと知る。
そこには魔族しか居ないのだろうか……。
召喚陣からの移動しか異界との行き来は出来ないなら、魔族がこの世界に攻めてくる事はなさそうだな。
「へぇ~、変わった種族なのね」
悪びれもせずに感心した様子の結花さんを見て、儂は女性になれるならと真っ先に思い浮かんだ願い事を家族の前で言うのは止めようと諦めた。
2人だけなら願っても問題ないか?
ルシファーには軽蔑されるかも知れんが、同じ男同士理解してくれるじゃろう。
小夜と再会したからには、ああいった場所に行くのも憚られる。
儂だって、まだ枯れてはおらんのだよ。
ルシファーは続く願い事を次々と叶え、儂の番になった。
一番の望みは言えんので、この弱っちい魔族を鍛えてやろうと庭を100周させた。
儂の内容を聞いてか、奏は懸垂100回、早崎君が逆上がり100回、ヒルダちゃんと響君が縄跳び100回、茜はほふく前進を10往復、セイは腹筋100回を願う。
うむ、良い体力作りになったじゃろう。
儂ら全員の願いを叶えたルシファーは疲労困憊で倒れておったが、ヒルダちゃんに良いところを見せたいのか、最後まで出来ないとは言わず頑張った。
翌週から、沙良はダンジョンの攻略を中止してルシファーの爵位上げを優先させるという。
パーティーメンバーを連れガーグ老の工房で行うので、儂の願いは口に出せず彼の体力強化に専念した。
沙良の希望する侯爵になるまで、ルシファーは色々な願いを叶える羽目になったが、結花さんの手料理を食べさせられた時が一番大変だったらしく、その日は早々に異界へ帰ってしまった。
翌週、水曜日。侯爵になるために必要なMP値が溜まり、あとはLvを50に上げるだけとなる。
木曜日と金曜日に、セイが摩天楼のダンジョンで彼を召喚するそうだ。
その間、休みになった儂はヒルダちゃんを訪ねて、玄武の剣を渡した。
「俺が貰ってもいいんですか? ありがとうございます。大切に使いますね!」
喜んではくれたようだが、儂の望むお礼はなかった……。
その剣は世界に10本しかない貴重な物だから、もっとこう、全身を使った喜びの表現をしてくれても良かったんじゃよ?
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ガーグ老に渡した時は敢えて言わんかったが、ヒルダちゃんにはしっかり伝えておこう。
「そっ、そんな効果が!?」
剣に付随する効果を知ったヒルダちゃんは、目を見開き驚いて、
「ウォーターウォール!」
直ぐに、その効果を確かめた。
魔法名を唱えた途端、ヒルダちゃんの周囲に高さが5mはありそうな円状の水柱が湧き立つ。
これがウォーターウォールの魔法か……、厚みも1mくらいある。
玄武の守護があれば、大抵の火魔法は防げそうじゃ。
「凄いですね!! 娘は随分、玄武に好かれていたらしい」
自分の周囲に張り巡らされた水柱を見て感嘆の声を上げたヒルダちゃんは、にっこりと笑う。
玄武の甲羅を手に入れる機会など、滅多にない。沙良は幸運だな。
金曜日。ルシファーはLv50に上がり、無事に侯爵となった。
簡単な願いを叶えるばかりで、実力が伴っているかは大いに疑問が残るところじゃ。
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇