自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
165 / 781
<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 101 迷宮都市 地下12階 沙良の魔石取りの練習&桃の賭け事

 月曜日。
 ダンジョン地下12階の安全地帯を出た途端とたん、「桃が俺を待っている~!」桃を探しに走り出す。
 この階層は、お宝探しのような体験が出来て面白い。
 あれから毎日違う場所に生る桃を発見するのが、楽しみになっていた。
 今日も勘を頼りに桃を見付け、全てを収穫し満足して沙良の下に戻り、アイテムBOXに収納してもらう。
 マジックバッグは時間停止の機能がないから、そのまま入れておくと腐ってしまうのだ。

「俺もアイテムBOXが欲しかった……」

 心底、うらやまし気に呟くと沙良にジロリとにらまれて頬をく。
 嫌、俺だって光魔法が使えるから充分チートだと分かっているんだけどな。
 旭も持っているのに、俺だけないのは寂しいじゃないか。
 その後、地下12階に生っているみかんも残らず採取して昼食を食べに戻った。
 沙良が作ってくれた味噌煮込みうどんを食べ、午後からの攻略を始めようとしたところで、妹が旭に声を掛ける。

「旭、余っている解体ナイフがあったら欲しいんだけど……」

「沢山あるから1本渡すよ」

 解体ナイフが欲しいと言われ、旭がダンジョンマスター時代に回収したマジックバッグの中身を取り出した。見た感じでは、鋼製の解体ナイフだな。

「何に使うんだ?」

 魔物から魔石を取る事もしないのに必要なのか疑問に思いたずねると、

「魔石取りの練習をしたいから、マジックキノコに使うんだよ」

「それ、食材を切るのとどう違うんだ?」

 その回答に思わず突っ込みを入れてしまう。
 沙良は俺が言った言葉を聞き、「全然違うもん!」顔をふくらませてプリプリ怒っていた。
 植物系の魔物で練習になると思うのかとあきれたが、何もしないよりはマシだろうと考え直す。
 B級冒険者の昇格試験では、どんな魔物を狩るか分からない。
 今から少しずつ慣らしていけば、哺乳類系の魔物から魔石を取れるようになるだろう。
 本人もやる気になっているし、少し様子を見るか……。

 旭から渡された解体ナイフを片手に沙良が走り出す。
 早速さっそく、練習相手の魔物を見付けたようだ。
 よちよち歩いてくるマジックキノコをドレインで昏倒させ、沙良が意気揚々と解体ナイフを上に掲げる。
 そして魔石の場所をマッピングで透視したのか、ピンポイントにナイフを入れ取り出していた。
 その魔石を自慢するように俺と旭に見せてから素早く仕舞うと、次の獲物に向かい駆け出していった。
 ここはよく出来たとめてやる場面なのか? 
 旭を見ると、流石さすがに手放しで褒めてやれる状況じゃないらしく苦笑くしょうしていた。
 まぁ、そんな頑張っている姿も可愛いと思っていそうだが……。
 ホブゴブリンやフォレストドッグの魔石取りは、当然のように俺達に回された。
 やれやれ、妹が冒険者に必須な魔石取りが出来るようになるのは時間が掛かりそうだな。
 コカトリスクイーンの赤い卵を発見し、ニマニマしている沙良を見遣り俺は小さく溜息を吐いた。

 2回の攻略を終え安全地帯に戻ると、沙良が夕食の準備を始める。
 いつもと同じかと思っていたら、卵を取り出した。
 おっ、新しいメニューか? 他にも、みじん切りにした材料を炒めていたからオムレツだろうか?
 俺の予想は外れ、キッシュだったらしい。
 7パーティーの冒険者達は、沙良がプレゼントしたバーベキュー台の設置を始めた。
 地下11階の配送担当者から炭を調達したようだ。
 沙良がフライパンに入れた溶き卵を、ダンクさんが興味深そうにのぞいている。
 そういえば、ダンジョン内で冒険者が使う食材に卵がなかったな。
 高タンパクで栄養がれるのに、調理方法を知らないんだろうか?
 沙良は、オーブンの代わりに表面をファイヤーボールであぶり出した。
 見ていたダンクさんが料理名を聞き、不思議そうな顔をしている。キッシュを知らないみたいだ。
 
「サラちゃんがいるとメニューが増えるな~。先週教えてくれたバーベキューもいいけど、今日のキッシュとやらも美味うまそうだ。卵とニンニクも、食材リストに追加しておけよ」

 彼に言われて料理担当のリリーさんがうなずきを返す。
 玉子料理なら、他にも沙良が教えてやれるだろう。
 出来上がったシチュー、キッシュ、ナンを食べ終わる頃、沙良が桃を7パーティーに配り始めた。
 切られた桃が綺麗に盛られた大皿を見て、アマンダさんがニヤリと笑う。

「やっぱり見付けてきたんだね。見付けられない方にけたやつ、金出しな!」

 どうやら、俺達が桃を発見するかどうか賭け事をしていたらしい。
 そして彼女は発見出来る方に賭けたのだろう。

「あ~、なんで見付けてくるかなぁ~。俺の銀貨1枚がぁ~」

 ダンクさんが悲鳴を上げ、

「私、見付からない方に銀貨3枚賭けたのに~」

 リリーさんがショックを受け、落ち込んでいる。

「私は見付かる方に銀貨10枚賭けたからね~。ぼろもうけだよ!」

 アマンダさんの嬉しそうな声が響き渡った。
 銀貨10枚(10万円)とはまた、大きく賭けにでたな……。
 しかも、7パーティーの全員が賭けに参加していたようだ。
 暇なのか? この賭け事は毎週続くんだろうか?
 
 金曜日。
 冒険者ギルドで換金を済ませ、製麺店に寄る。
 製麺を始めてから3週間経ち、麺の太さも均一になってきたとリーダーのバスクさんから報告を受けた。
 それを聞いた沙良は嬉しそうに喜んだあと、思案している様子を見せた。
 また、何を考えているんだ?
 異世界にないうどんを出し、秘伝とした調味料を使っているから、今でも充分人目を引く店になっている。
 店に関して口を挟む心算つもりはないが、これ以上目立つ事はしないでくれよ。
 在庫を補充し、店を出てからホームに戻った。
 
 日本酒を呑みたい気分だったので、沙良に小料理屋へ送ってもらう。
 この店はカウンターの前に出来立ての惣菜そうざいが数種類置いてあり、店内に入ると良い匂いがしたものだが……。
 旭と暖簾のれんを潜り、店に入っても無臭で残念だ。
 惣菜が置いてないから当然なんだが、ホーム内の店は情緒に欠けるな。
 電子メニューから熱燗あつかんと幾つかの惣菜を選び、乾杯する。
 大根と牛すじ煮込みにはしを付け、その懐かしい味を堪能した。
 この店のおでんが好きな旭は、味噌みそで煮込まれたコンニャクを口に含み笑顔になっている。
 
「それにしても、桃で賭け事をするなんて驚いた~」

 次に玉子を食べながら、旭が話し掛けてきた。

「掛け金も高額だったしな。俺が毎日収穫するから、沙良も皆に配ってるんだろうが……。何だか負けた冒険者達に悪い気がする」

「それは気にしなくてもいいんじゃない? その内、全員が見付ける方に賭けて賭けにならなくなると思うよ」

「どうかな? よりハイリターンを望んで、自滅しそうな冒険者が出てきそうだ」

「賭け事は身を滅ぼすっていうしね。俺は興味ないからやらないけど、パチンコやスロットもはまったら止められないかも?」

「多分、ホーム内のパチンコ屋には入れると思うが……。行ってみるか?」

「沙良ちゃんのお金で賭け事なんか出来ないよ!」

「それも、そうか……」

 月10万円の小遣いじゃ、毎週飲みに行くのが精々せいぜいだ。
 特にやる事がないわけじゃないし、俺達は健全にジムへ通おう。
 あっ、宝くじなら購入してもいいかも知れない。
 一等が当たれば、ホーム内で購入出来る物が増える。

「旭、宝くじを買おう!」

「それいいね! 当たったら何を買おうかな~」

 俺達は捕らぬ狸の皮算用をしながら、あれやこれやと夢に話を咲かせていたので、沙良が迎えに来るのが遅くなった事に気付かなかった。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?