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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第882話 シュウゲン 65 家族の前世 2&シャーリーンとの再会
「父さん? 部屋に入らないのか?」
奏の前世を知り扉を開けたまま固まっていた我は、声を掛けられはっとする。
いかんいかん、ガゼインは記憶が戻っていないのだ。
我を父親だと思っているから、態度に気をつけねばならん。
「あぁ、まだ起きていたのか。風呂に入ってくるから、先に寝ておれ」
「……じゃあ、もう寝るよ」
奏は用事もなく部屋に入って来た我を不思議そうな顔で見ながら、特に言及もせず背を向けた。
明日は、まだ会っていない家族の種族が分かるだろう。
また知り合いがいるかも知れない。あまり驚かないようにしなければ……。
月曜日。
ダンジョンに向かう家族が美佐子の家に集合する。
先に来た沙良達の中で、賢也からは獅子族(それも獣王と第二王妃の血縁関係)、尚人君からはフェンリル、茜の夫の早崎君からは獣人国の武術大会で出会った白頭鷲の気配がする。
後から来た結花さんはフェンリルの女王、雫ちゃんはフェンリル(フェンリル女王の血縁)の気配がした。
結花さんを見て、尚人君も血縁関係である事が分かる。
どうやら旭家はフェンリル一家のようだな。
しかし、ヒルダちゃんはフェンリルの女王を妻にしたのか……。
巫女姫とフェンリルの繋がりが今一分からぬが、何かしら縁があるのだろう。
結花さんがフェンリルの女王なら、味音痴なのも納得がいく。
竜族同様にフェンリルも魔力を糧に生きる種族だからな。
女王である分、その特性が転生しても強く残ったのだろう。
シーリーを抱いた沙良が我に預けようとしたところで、
「沙良、悪いが今日は異世界で用があるから一緒に行かせてくれ」
可愛い子供を受け取りながら、お願いした。
『お父さん、おはよう』
『シーリー、今まで気付いてやれず済まなかったな。少し記憶を失っていたのだ。これから母親に会いに行こう』
『本当? 今日はダンジョンを攻略する日なのに会えるの?』
『あぁ風竜王の我は、この世界で一番早く飛べるのだ。母親が何処にいようとも、数時間で会えるぞ?』
記憶を取り戻し、シーリーとの念話が通じるようになったおかげで会話が可能になった。
その事がとても嬉しく笑み崩れていると、
「じゃあ、帰りは夜9時に家に居て下さいね」
沙良は迎えに来る時間を告げ、ホームから異世界の家の庭へ移転した。
このままダンジョンへ向かうメンバーと、ガーグ老の工房へ移動するヒルダちゃんを見送り、竜気を放って同族の気配を探る。
すると迷宮都市内に光竜王の気と、聖竜の気を感じて愕然となった。
てっきり竜族の棲み処である竜谷まで探しに行く必要があると思っていたのに、カルドサリ王国に居るとは何とした事だ?
しかもその方角は……。
我はシーリーの姿を見られぬようマントでしっかりと包み、逸る気を抑えながら門から出てシャーリーンの竜気を辿る。
まさか、まさかと思いつつ到着した場所は小夜の家である華蘭の前だった。
店の扉を慎重に開け、名前を伝えて店員に「小夜を呼んで欲しい」と言付ける。
暫くして顔を見せた小夜に、間違いなくシャーリーンの気配を感じて息を呑んだ。
そうか……、そういう事だったのだな。
2人の女性を愛してしまったと気を揉んでいたが、同一人物なら当然だ。
人生最大の悩みが解決してほっとする。
「小夜、少し出られるか?」
「外出するのを伝えてくるわね。少しだけ、待ってちょうだい」
突然店に来た我に気を悪くした様子も見せず、小夜は泣き笑いの表情で一度店の奥へ戻っていった。
「さぁ、行きましょ」
再び戻ってくるなり、背中を押され一緒に店を出る。
「静かに話せる場所だと、中央広場かしら?」
「あぁ……その、大事な話があって……」
「お互い、記憶が戻ったようですね。話は着いてから、ゆっくりしましょう」
小夜がシャーリーンの記憶を既に思い出していると知り動揺し、ついシーリーを落としてしまいそうになった。
「バイロン、気を付けて下さい!」
懐かしい自身の名を呼ばれ、目が潤む。
別れを決意し最後に会った時は、名も呼んでもらえなかったというのに……。
注意されてからは、しっかりとシーリーを抱き抱え中央広場まで歩いた。
迷宮都市の中心にある中央広場は広く、木々が沢山植えられている。
その一角にあるベンチに2人で腰を下ろすと、シャーリーンが我の腕からシーリーを抱き取り頬ずりした。
『私達の卵が孵るなんて奇跡のよう……。シーリー、愛しているわ』
『お母さん! 僕も大好きだよ!』
数百年振りに再会したというのに、彼女は子供に夢中のようで我の方を見ようともしない。
理解は出来るが、のけ者にされたようで少し寂しい。
「こほんっ、あ~シャーリーン? お前の記憶は、いつ戻ったのだ?」
「多分、貴方と同じ時だと思うわ。私に黙って、この子のために巫女姫を探しに行ったのでしょう? 別れを告げられてから、黒竜のゼファーに会いに行ったのよ。事情を聞いて、私も転生させてもらったわ」
「あやつめ、内緒にしろと言っておいたのに……」
「彼を責めるのはお門違いよ。この子は、私の子供でもあるんだから。母親の私が対策を講じなくてどうするの? それに記憶を失った貴方が、私を忘れてしまうのが心配だったの。一緒の世界に転生出来て良かったわ」
我はまるで信用されておらんかったのか……。
「ずっと傍に居たけど、相変わらず女性に弱いのね。兎獣人に鼻の下を伸ばしていたじゃない!」
うん? バニーちゃんにデロデロしていた事を何故知っているのだ?
異世界では人族に生まれ変わったシャーリーンが、知っている筈が……。
いや待て、先程ずっと一緒に居たと言ってはおらなんだか?
その言葉の意味に気付いて、顔面からサーッと血の気が引いた。
「もしや黒曜!?」
「えぇ、そうよ。その記憶が戻ったのも同時でしたけどね」
なんという事だ、それじゃあ本当に殆ど我の傍にはシャーリーンがいたのか……。
女性に近付くと嫉妬していた黒曜を思い出し、他に醜態を晒した事がなかったか急いで記憶を探る。
幸い夜の店には黒曜が居た時期には行っておらず、ほっと胸を撫で降ろす。
しかし、我ばかりが責められるのは割に合わん。
シャーリーンは現在、我以外の人族と所帯を持っているではないか!
そう思い、じっと彼女を見つめると、
「まっ、まぁ、記憶がないから仕方ないわ」
明後日の方向を向いて棚上げした。むう、納得がいかん。
「それより、サラさんが巫女姫だったのね。私達の孫になっているなんて、驚きだわ」
そして、唐突に話題転換した。
しかし、その件は話しておいたほうが良かろうと、我はセイから聞いた内容を伝えた。
「記憶が封印されているのは分かりました。それにしても、フェンリルの女王まで転生しているなんて……。巫女姫の護衛には、随分と多くの種族が手を上げたのね。じゃあ、迷宮都市内にいる聖竜もそうかしら?」
言われて、先ほど感じた竜気の方角に視線を向ける。
「沙良が経営している、お菓子の店のようだな。あそこに居るのは、子供達と護衛する者だけだった筈だが……」
言いながら、誰かは直ぐに分かった。
奏……いや、ガゼインの番である聖竜は香耶乃さんだったのか……。
「実は奏は、火竜のガゼインだった。そして香耶乃さんは、多分お菓子の店を護衛している聖竜だろう。2人は番で、双子の混ざり竜が生まれたらしい。その内の一人は聖竜のセイだ。巫女姫に育てられたと言っておった」
「嘘でしょう!? もう何があっても驚かないと思っていたのに、信じられないわ……。記憶が無いって大変な事なのね。私達は、まだ知らない振りをしなくちゃいけないんでしょう?」
「沙良の記憶が戻るまでは他言無用だ。全てを知っているのはセイだけだろう」
「はぁ……、演技力が試されるわね。貴方はボロが出ないよう注意して下さいな」
「わっ、分かっておる。シーリーも無事孵ったし、我らの今後も大切じゃないか?」
「恩のある巫女姫に敵対する相手を潰すのが先よ。私達の事は、その後で考えましょう」
「そうだな……、手を繋ぐくらいはいいかの」
「ここでは駄目です」
きっぱりと言い切られ、しょんぼりして肩を落とす。
それから二人でシーリーを交互に抱き締め、1時間後に名残惜しく手を振り別れた。
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奏の前世を知り扉を開けたまま固まっていた我は、声を掛けられはっとする。
いかんいかん、ガゼインは記憶が戻っていないのだ。
我を父親だと思っているから、態度に気をつけねばならん。
「あぁ、まだ起きていたのか。風呂に入ってくるから、先に寝ておれ」
「……じゃあ、もう寝るよ」
奏は用事もなく部屋に入って来た我を不思議そうな顔で見ながら、特に言及もせず背を向けた。
明日は、まだ会っていない家族の種族が分かるだろう。
また知り合いがいるかも知れない。あまり驚かないようにしなければ……。
月曜日。
ダンジョンに向かう家族が美佐子の家に集合する。
先に来た沙良達の中で、賢也からは獅子族(それも獣王と第二王妃の血縁関係)、尚人君からはフェンリル、茜の夫の早崎君からは獣人国の武術大会で出会った白頭鷲の気配がする。
後から来た結花さんはフェンリルの女王、雫ちゃんはフェンリル(フェンリル女王の血縁)の気配がした。
結花さんを見て、尚人君も血縁関係である事が分かる。
どうやら旭家はフェンリル一家のようだな。
しかし、ヒルダちゃんはフェンリルの女王を妻にしたのか……。
巫女姫とフェンリルの繋がりが今一分からぬが、何かしら縁があるのだろう。
結花さんがフェンリルの女王なら、味音痴なのも納得がいく。
竜族同様にフェンリルも魔力を糧に生きる種族だからな。
女王である分、その特性が転生しても強く残ったのだろう。
シーリーを抱いた沙良が我に預けようとしたところで、
「沙良、悪いが今日は異世界で用があるから一緒に行かせてくれ」
可愛い子供を受け取りながら、お願いした。
『お父さん、おはよう』
『シーリー、今まで気付いてやれず済まなかったな。少し記憶を失っていたのだ。これから母親に会いに行こう』
『本当? 今日はダンジョンを攻略する日なのに会えるの?』
『あぁ風竜王の我は、この世界で一番早く飛べるのだ。母親が何処にいようとも、数時間で会えるぞ?』
記憶を取り戻し、シーリーとの念話が通じるようになったおかげで会話が可能になった。
その事がとても嬉しく笑み崩れていると、
「じゃあ、帰りは夜9時に家に居て下さいね」
沙良は迎えに来る時間を告げ、ホームから異世界の家の庭へ移転した。
このままダンジョンへ向かうメンバーと、ガーグ老の工房へ移動するヒルダちゃんを見送り、竜気を放って同族の気配を探る。
すると迷宮都市内に光竜王の気と、聖竜の気を感じて愕然となった。
てっきり竜族の棲み処である竜谷まで探しに行く必要があると思っていたのに、カルドサリ王国に居るとは何とした事だ?
しかもその方角は……。
我はシーリーの姿を見られぬようマントでしっかりと包み、逸る気を抑えながら門から出てシャーリーンの竜気を辿る。
まさか、まさかと思いつつ到着した場所は小夜の家である華蘭の前だった。
店の扉を慎重に開け、名前を伝えて店員に「小夜を呼んで欲しい」と言付ける。
暫くして顔を見せた小夜に、間違いなくシャーリーンの気配を感じて息を呑んだ。
そうか……、そういう事だったのだな。
2人の女性を愛してしまったと気を揉んでいたが、同一人物なら当然だ。
人生最大の悩みが解決してほっとする。
「小夜、少し出られるか?」
「外出するのを伝えてくるわね。少しだけ、待ってちょうだい」
突然店に来た我に気を悪くした様子も見せず、小夜は泣き笑いの表情で一度店の奥へ戻っていった。
「さぁ、行きましょ」
再び戻ってくるなり、背中を押され一緒に店を出る。
「静かに話せる場所だと、中央広場かしら?」
「あぁ……その、大事な話があって……」
「お互い、記憶が戻ったようですね。話は着いてから、ゆっくりしましょう」
小夜がシャーリーンの記憶を既に思い出していると知り動揺し、ついシーリーを落としてしまいそうになった。
「バイロン、気を付けて下さい!」
懐かしい自身の名を呼ばれ、目が潤む。
別れを決意し最後に会った時は、名も呼んでもらえなかったというのに……。
注意されてからは、しっかりとシーリーを抱き抱え中央広場まで歩いた。
迷宮都市の中心にある中央広場は広く、木々が沢山植えられている。
その一角にあるベンチに2人で腰を下ろすと、シャーリーンが我の腕からシーリーを抱き取り頬ずりした。
『私達の卵が孵るなんて奇跡のよう……。シーリー、愛しているわ』
『お母さん! 僕も大好きだよ!』
数百年振りに再会したというのに、彼女は子供に夢中のようで我の方を見ようともしない。
理解は出来るが、のけ者にされたようで少し寂しい。
「こほんっ、あ~シャーリーン? お前の記憶は、いつ戻ったのだ?」
「多分、貴方と同じ時だと思うわ。私に黙って、この子のために巫女姫を探しに行ったのでしょう? 別れを告げられてから、黒竜のゼファーに会いに行ったのよ。事情を聞いて、私も転生させてもらったわ」
「あやつめ、内緒にしろと言っておいたのに……」
「彼を責めるのはお門違いよ。この子は、私の子供でもあるんだから。母親の私が対策を講じなくてどうするの? それに記憶を失った貴方が、私を忘れてしまうのが心配だったの。一緒の世界に転生出来て良かったわ」
我はまるで信用されておらんかったのか……。
「ずっと傍に居たけど、相変わらず女性に弱いのね。兎獣人に鼻の下を伸ばしていたじゃない!」
うん? バニーちゃんにデロデロしていた事を何故知っているのだ?
異世界では人族に生まれ変わったシャーリーンが、知っている筈が……。
いや待て、先程ずっと一緒に居たと言ってはおらなんだか?
その言葉の意味に気付いて、顔面からサーッと血の気が引いた。
「もしや黒曜!?」
「えぇ、そうよ。その記憶が戻ったのも同時でしたけどね」
なんという事だ、それじゃあ本当に殆ど我の傍にはシャーリーンがいたのか……。
女性に近付くと嫉妬していた黒曜を思い出し、他に醜態を晒した事がなかったか急いで記憶を探る。
幸い夜の店には黒曜が居た時期には行っておらず、ほっと胸を撫で降ろす。
しかし、我ばかりが責められるのは割に合わん。
シャーリーンは現在、我以外の人族と所帯を持っているではないか!
そう思い、じっと彼女を見つめると、
「まっ、まぁ、記憶がないから仕方ないわ」
明後日の方向を向いて棚上げした。むう、納得がいかん。
「それより、サラさんが巫女姫だったのね。私達の孫になっているなんて、驚きだわ」
そして、唐突に話題転換した。
しかし、その件は話しておいたほうが良かろうと、我はセイから聞いた内容を伝えた。
「記憶が封印されているのは分かりました。それにしても、フェンリルの女王まで転生しているなんて……。巫女姫の護衛には、随分と多くの種族が手を上げたのね。じゃあ、迷宮都市内にいる聖竜もそうかしら?」
言われて、先ほど感じた竜気の方角に視線を向ける。
「沙良が経営している、お菓子の店のようだな。あそこに居るのは、子供達と護衛する者だけだった筈だが……」
言いながら、誰かは直ぐに分かった。
奏……いや、ガゼインの番である聖竜は香耶乃さんだったのか……。
「実は奏は、火竜のガゼインだった。そして香耶乃さんは、多分お菓子の店を護衛している聖竜だろう。2人は番で、双子の混ざり竜が生まれたらしい。その内の一人は聖竜のセイだ。巫女姫に育てられたと言っておった」
「嘘でしょう!? もう何があっても驚かないと思っていたのに、信じられないわ……。記憶が無いって大変な事なのね。私達は、まだ知らない振りをしなくちゃいけないんでしょう?」
「沙良の記憶が戻るまでは他言無用だ。全てを知っているのはセイだけだろう」
「はぁ……、演技力が試されるわね。貴方はボロが出ないよう注意して下さいな」
「わっ、分かっておる。シーリーも無事孵ったし、我らの今後も大切じゃないか?」
「恩のある巫女姫に敵対する相手を潰すのが先よ。私達の事は、その後で考えましょう」
「そうだな……、手を繋ぐくらいはいいかの」
「ここでは駄目です」
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇