自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第886話 恐竜の魔物が棲む島 母への説明

 実家に行くと、母が庭で木を剪定せんていしていたので声を掛ける。 

「お母さん、ただいま」

「あら、沙良。今日は、ずいぶん早いわね。皆は一緒じゃないの?」

「ちょっと、予定外の事が……」

 不思議そうな顔で見られて、躊躇ためらいがちに返事をした。

「詳しく話を聞いたほうがよさそうね。ここを片付けるから、先に家の中に入ってなさい」

 母にそう言われ、こくりとうなずき玄関を開ける。
 温かい麦茶を用意しておこう。
 お茶をれている間に、母がダイニングに入ってきた。
 大きな湯呑ゆのみに麦茶を入れ、持っていく。
 母がテーブルに置いた麦茶を一口飲み、

「さあ、話してちょうだい」

 聞く態勢を整え、私をじっと見つめてくる。
 起きた出来事をそのまま話すしかないんだけど、そう構えられると緊張するなぁ。

「地下12階でコカトリスの卵を獲ろうとしたら、突然地面が光って海に囲まれた島に移転させられたの。マッピングで調べたけど、カルドサリ王国がある大陸じゃないみたい。通信の魔道具で、お兄ちゃんに連絡したらホームに帰れと言われたから戻ってきたところ」

「ダンジョンの罠を踏んでしまったの?」

 私の話を黙って聞いていた母が、驚いた表情で両手を口元に当てる。
 心配かけたくないけど、ここは正直に話しておいたほうがいいだろう。 
 
「ダンジョンの罠というより、人為的に設置された罠だと思う」

「えっ! またアシュカアナ帝国が貴女を狙ったんじゃないわよね?」

「それは……まだ分からないなぁ」

 母が思い当たった可能性は私も考えてみた。
 でも帝国の仕業しわざにしては、まどろっこしいというか消極的すぎると思うんだよね。
 運よく私が移転陣の罠に落ちるのをずっと待つより、直接襲撃したほうが早い。
 見知らぬ島に飛ばして、私を孤立させる必要があるとは思えないし……。

「その島からマッピングで帰ってくるのは難しそうなの?」

「う~ん、これが異世界の地図なんだけど……」

 カマラさんに貰った世界地図を母に見せて、カルドサリ王国がある場所を教える。

「結構、広いでしょ? 大きな大陸が4つあるけど、島はどこにあるか分からないし……」

 初めて異世界の地図を見た母は、真剣な顔で食い入るように顔を近付ける。
 
「地球と同じくらいなら、マッピングで移動するのは無理ね。それに貴女は方向音痴おんちだし」
 
 地図はあっても、現在地の方角が分からないのは確かだ。

「お兄ちゃん達も帰れる方法を考えてくれると思うから、大丈夫だよ!」

 不安そうな母をはげまそうとして言った言葉に、溜め息を吐かれてしまった。

賢也けんやあかねだったら、こんなに心配しないわよ」

 うん? それは私を信用してないって事? 母の私に対する態度にショックを受ける。

「また連絡が入ると思うから、お昼を食べながら待っていよう」

「皆は帰ってこれないのよね。用意した食材が余りそうだわ」

「私のアイテムBOXに入れておけばいいよ」

 母の重い腰を上げさせ台所に向かい、昼食の準備を始めてふと思う。
 犯人は、私を飢えさせる心算つもりだったのかな?
 それとも魔物に倒されるのを期待していた?
 どちらにせよ、私を9番目の妻にしたいと願っているアシュカナ帝国のやり方じゃない気がする。
 別の意図を持った誰かの仕業に違いない。
 そうなると、ホームに帰れる私が罠にはまって良かったのかも知れないな。
 一応、役に立つか分からないけど地図も持っているし、アイテムBOXには大量の食材が入っているから飢え死にする事もない。
 何度もマッピングを使えば、いずれどこかの大陸に辿り着くだろう。

「いただきます」

 たいの塩焼き、南瓜かぼちゃの煮付け、法蓮草ほうれんそうのお浸し、だし巻き玉子、きんぴらごぼうを前に、えのきとねぎの味噌汁から口をつける。
 はぁ~、体が温まるなぁ。
 
「皆、ちゃんと食べてるかしら?」

「多分、私がこんな事になってダンジョンの攻略を中止してると思うから、肉うどん店で食べてるよ」

 もし肉うどんが売り切れていても、母親達に言えば何か作ってくれるだろう。
 製麺店で、うどんを買って持ち込めばいいんだし。
 張り切って、旭のお母さんが作っている可能性もあるけど……。

『沙良、聞こえるか?』

 食事を終え、一息吐いているところに兄から連絡が入った。

『うん、聞こえてるよ。お母さんには事情を話しておいたから、心配しなくていいよ』

『そうか……。俺達はダンジョンから出て、お前の家に居る。まだシュウゲンさんは帰ってきていないが、これからガーグ老の工房へ行ってルシファーにスマホを持たせるから、島に戻って彼を呼び出し上空から写した写真を撮ってくれ』

 おおっ、その手があったか!

『分かった、30分後に島に戻るね』

『それと、何かその島を特定するようなものがあれば探してほしい』

『それなら、恐竜の魔物が居たよ』

『恐竜だと!?』

 兄以外にも、一緒に居るメンバーの声がそろって聞こえてきた。

『ステゴサウルスやトリケラトプスの実物を初めて見ちゃった。プテラノドンも居るかなぁ~?』

『お前、そういう事はもっと早く言え! 危険な島じゃないか!!』

『危険? 大きな魔物がいるだけでしょ。アイテムBOXに収納すれば問題ないよ』

『はぁ~。いいか、島に戻ったら余計な事はせず、ルシファーを呼んで写真を撮ったら直ぐに帰ってこい』

『は~い。恐竜の写真も撮ってくるね』

 通信の魔道具を切ったあと、

「恐竜が居るなんて素敵な島じゃない。動画も撮ってきてちょうだい」

 母が目を輝かせ頼んできた。
 某映画のシリーズを全て見ている母は、恐竜が大好きだ。
 既にアイテムBOXに何体も収納している事は言わず、にっこりと笑っておいた。
 ふむ、もし茜が島に飛ばされたら喜びそうだな。
 ベヒモスが居ない事に、あれほどガッカリしていたのだ。
 強敵を前に大笑して突撃しそう。
 何年も独りでダンジョンマスターをしていたから、サバイバルも苦にならないだろうし、現地調達も楽にこなせるだろう。

 そんな事を考えながら30分後、シルバーと一緒に島へ戻った。
 地面に召喚陣を描いてルシファーを呼び出す。

「渡されたのはこれだ」

 ルシファーからスマホを受け取り、シルバーに騎乗して上空から何枚も写真を撮った。
 密林から姿をのぞかせる恐竜達の姿も2台のスマホで動画撮影し、ルシファーに返す。

「ルシファーは、人を任意の場所に送る事は出来ないの?」
 
「それは無理だ。俺達は魔界から召喚陣が描かれた場所しか行けない。だから、これを渡すのも一度魔界に帰ってから、呼び出されるまで待っていた」

「それなら、この場所がどこにあるか知らない?」

「この世界に来て日の浅い俺に聞くのは間違っている」

 素直に知らないと言えばいいのに……。

「じゃあ、ゼンさんが持っている指輪を嵌めて黒竜を呼び出せば、カルドサリ王国まで送ってくれるかしら?」

「それは可能だろうが、魔王が契約を結んでいる1ヶ月の間は指輪が外れないと思う」

 あぁ、最初の契約が有効になっているのか。
 でも、最悪1ヶ月後に帰れると分かったのは大きい。
 これから食事に困るだろう兄達のために、インスタント食品や食材を大量に詰めたマジックバッグをルシファーに渡して見送った。

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