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<外伝> 椎名 賢也
椎名 賢也 109 迷宮都市 地下12階&地下10階 クラン『白銀の剣』の撤退 1
土曜日。
旭とジム帰りに、久し振りにラーメンが食べたくなり店へ向かう。
この店は沙良のお勧めで、とんこつが美味しいらしい。
醤油と油そばもあったが、どうせならと二人共とんこつを選んだ。
旭はチャーシューを、俺はメンマを追加でトッピングする。
ラーメンだけでは腹が減るから炒飯のセットにした。
出てきたラーメンには、炙りチャーシュ1枚、半熟の煮卵、増量された太いメンマが載っている。
スープを一口飲むと臭みはなく、まろやかな味わいだった。
とんこつが少し苦手だった俺は意外に思い、麺をすする。
麺の硬さもちょうど良く、厚切りにされたチャーシューも炙られて香ばしい。
ふむ、この店は当たりだな。
旭も麺が隠れるくらい載ったチャーシューを美味そうに食べていた。
「この店のとんこつスープは絶品だね! チャーシューもボリュームがあるし、沙良ちゃんに教えてもらって良かった~」
言いながら炒飯を頬張り、旭が満足そうに笑う。
「とんこつの臭みがなくて食べやすいな。ちょっとメンマとチャーシューを交換してくれ」
「いいよ」
メンマ3本とチャーシュー1枚を交換する。
それから俺達は無言でラーメンをすすり、炒飯を食べて店を出た。
家に戻ると出掛ける前に洗濯していた服を干して、各自部屋の掃除を行う。
洗濯物が乾くまでシルバーと遊ぼうかと思い探したが、駐車場に姿がない。
どうやら沙良が、どこかに連れていったようだ。
帰ってくるまで旭と将棋を指し、何度も負けた彼が意気消沈する頃に沙良が戻ってきた。
「お兄ちゃん、ただいま~。今夜は蟹すき鍋だよ!」
「おかえり、シルバーと遊んできたのか?」
「うん、シルバーの背中に乗って草原を駆けたの! 凄く速くて風が気持ち良かった」
早いと言ってもバイク程じゃないだろう。
普段、自転車しか運転しない沙良には体感速度的に速く感じただけだと思う。
「シルバーに乗ったんだ!? いいなぁ~、俺も乗せてほしい……」
犬好きの旭が沙良を羨ましそうに見て、自分も体験してみたいと言ったが妹は笑顔でスルーしていた。
テイムしたばかりのシルバーを貸すのは嫌なようだ。
沙良の部屋に場所を移し、夕食が出来るまでリビングで夕方のニュースを見る。
今年は蟹が大量に揚がっているみたいで、手頃な値段で買えると言っていた。
蟹鍋にしたのは、それが理由か?
「2人とも席に着いて~」
「は~い」
沙良の呼び掛けに旭が返事をして、俺達はソファーから腰を上げた。
ぐつぐつと煮立っている鍋には、たらば蟹が入っている。
きっと俺達が食べやすいよう配慮してくれたんだろう。
そう思って、太い脚を取り大ぶりの身を殻から外す。
おっ、これは冷凍じゃなく生だな?
身離れからして期待し、口に入れると甘い味が広がる。
「たらば蟹なんて贅沢! やっぱり蟹はいいね~」
旭が相好を崩し、次のたらば蟹の攻略を始めている。
沙良も旭に負けじと、たらば蟹を取り出し黙々と食べていた。
ニュースで流れていた映像はズワイ蟹だったから、このたらば蟹はスーパーで売っていたものじゃなさそうだ。
アパートの住民が買っていたものだろうか?
まぁ七年前の蟹でも、時間停止機能がついたアイテムBOXに入っていれば新鮮さは損なわれない。
気にせず美味しく頂こう。
締めは定番の雑炊にして、お腹一杯になり自室へ帰った。
月曜日。
ダンジョン地下12階の安全地帯から、エンダ達の姿が消えているのを確認して地下10階に移動する。
沙良が7パーティーにその件を伝え、残りの13パーティーに地下12階へ拠点を移す報告を聞きながら、やれやれやっと居なくなったと安堵の息を漏らす。
隣の旭も、ほっとした表情で小さく親指を立てていた。
なんにせよ、やつらが諦めて帰ったのは事実だ。
これで中止していた地下12階の攻略を始められる。
俺達が居なくなる事で、治療を受けられなくなる13パーティーは残念そうにしていたが……。
再び地下12階へ戻り、久し振りに安全地帯にテントを設置する。
一度ホームに戻って休憩したあと、俺は張り切って桃を探しに行った。
さぁ、今日はどこに生ってるんだ?
俺は一瞬だけ目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませ方向を探る。
目を開けたと同時に直感が働いた方角へ走り出すと、30分後に桃の木を発見した。
こうして、お宝を探し当てるようなドキドキ感が堪らなく楽しい。
出来れば果物じゃなく、本当の宝物を見付けられたら一番嬉しいんだけどな。
生っている桃を傷つけないよう、ライトボールで枝から切り離して受けとめていく。
どれも完熟状態で瑞々しい桃の甘い香りが辺りに満ちる頃に採取作業を終え、場所を移動してみかんが生っている木を探しに行った。
3時間後、ホームへ戻り昼食にする。
今日は弁当じゃなく牛カルビ丼だった。
まぁ牛といっても、ミノタウロス肉を使用したものだろう。
里芋、大根、ネギの味噌汁に箸をつけてから、肉たっぷりのカルビ丼を掻き込む。
俺好みの味付けで食欲が増すな。
お腹が膨れる頃、沙良が口を開いた。
「お兄ちゃん。迷宮都市のダンジョンに潜り始めて10ヶ月以上経つから、そろそろリースナーの武器屋へ行ってこようか?」
「あぁ、そうだな。1人で大丈夫か?」
すこし唐突な提案に疑問を感じたが、解体ナイフの切れ味が悪くなっていたのは確かだ。
「移転を使用するから直ぐに帰ってこられるよ。旭は、いつもお兄ちゃんの解体ナイフを借りてるよね? よければついでに、オリハルコンかミスリル製の解体ナイフを注文してこようか?」
「えっ! 本当? 沙良ちゃん優しいね~。じゃあ俺の分を注文してくれると凄く嬉しい!」
ついでだからと、旭の解体ナイフの注文まで請け負っている。
普段は俺達の解体ナイフなんか気にもしないくせに、言動が怪しいな……。
俺が妹の態度を疑っている間に、沙良は旭から解体ナイフに必要なミスリルゴーレムとオリハルコンゴーレムを受け取り、アイテムBOXに収納していた。
「じゃあ、午後からは私一人でリースナーの町に行ってくるね」
テントから出ると、7パーティーが戻ってきていた。
彼らは魔物を倒しながら2階層を進むので、到着時間に差が出来る。
安全地帯に着いたばかりなのか、これから昼食を取るようだ。
沙良が冒険者達にひらひらと手を振り、「攻略しに行きますね~」と走り出す。
人気がない森の奥まで進むと、移転してリースナーの町へ行った。
沙良の姿を見送ったあと、どこか腑に落ちない気がして腕を組む。
「賢也、何を考え込んでるの?」
その場から動こうとしない俺に気付いた旭から声を掛けられた。
「いや……少し、沙良の態度が変だと思って。お前は何か感じなかったか?」
「う~ん、別に普通だったと思うけど?」
「いや、まぁ大した事はないだろう」
何か他に理由がある気もしたが、沙良が言うまで黙っておくか。
重要な案件なら直ぐに話すだろうし、そこまで挙動不審というわけでもない。
旭が気付かない程度の隠し事だろう。
1時間程で沙良が戻ってきた。旭の注文した2本の解体ナイフは作製に1週間程かかるらしい。
砥ぎ直した2本の解体ナイフの内、ミスリル製の方を旭に渡して魔石取りが必要なホブゴブリンとフォレストドッグを倒しに行き、早速試してみる。
あぁ、切れ味が良くなってるな。
旭を見ると、スパッと切れる解体ナイフに喜んでいた。
俺達は、ひとしきり試したあと頷き合い、解体ナイフを洗浄して仕舞った。
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お気に入り登録をして下さった方、いいねやエールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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旭とジム帰りに、久し振りにラーメンが食べたくなり店へ向かう。
この店は沙良のお勧めで、とんこつが美味しいらしい。
醤油と油そばもあったが、どうせならと二人共とんこつを選んだ。
旭はチャーシューを、俺はメンマを追加でトッピングする。
ラーメンだけでは腹が減るから炒飯のセットにした。
出てきたラーメンには、炙りチャーシュ1枚、半熟の煮卵、増量された太いメンマが載っている。
スープを一口飲むと臭みはなく、まろやかな味わいだった。
とんこつが少し苦手だった俺は意外に思い、麺をすする。
麺の硬さもちょうど良く、厚切りにされたチャーシューも炙られて香ばしい。
ふむ、この店は当たりだな。
旭も麺が隠れるくらい載ったチャーシューを美味そうに食べていた。
「この店のとんこつスープは絶品だね! チャーシューもボリュームがあるし、沙良ちゃんに教えてもらって良かった~」
言いながら炒飯を頬張り、旭が満足そうに笑う。
「とんこつの臭みがなくて食べやすいな。ちょっとメンマとチャーシューを交換してくれ」
「いいよ」
メンマ3本とチャーシュー1枚を交換する。
それから俺達は無言でラーメンをすすり、炒飯を食べて店を出た。
家に戻ると出掛ける前に洗濯していた服を干して、各自部屋の掃除を行う。
洗濯物が乾くまでシルバーと遊ぼうかと思い探したが、駐車場に姿がない。
どうやら沙良が、どこかに連れていったようだ。
帰ってくるまで旭と将棋を指し、何度も負けた彼が意気消沈する頃に沙良が戻ってきた。
「お兄ちゃん、ただいま~。今夜は蟹すき鍋だよ!」
「おかえり、シルバーと遊んできたのか?」
「うん、シルバーの背中に乗って草原を駆けたの! 凄く速くて風が気持ち良かった」
早いと言ってもバイク程じゃないだろう。
普段、自転車しか運転しない沙良には体感速度的に速く感じただけだと思う。
「シルバーに乗ったんだ!? いいなぁ~、俺も乗せてほしい……」
犬好きの旭が沙良を羨ましそうに見て、自分も体験してみたいと言ったが妹は笑顔でスルーしていた。
テイムしたばかりのシルバーを貸すのは嫌なようだ。
沙良の部屋に場所を移し、夕食が出来るまでリビングで夕方のニュースを見る。
今年は蟹が大量に揚がっているみたいで、手頃な値段で買えると言っていた。
蟹鍋にしたのは、それが理由か?
「2人とも席に着いて~」
「は~い」
沙良の呼び掛けに旭が返事をして、俺達はソファーから腰を上げた。
ぐつぐつと煮立っている鍋には、たらば蟹が入っている。
きっと俺達が食べやすいよう配慮してくれたんだろう。
そう思って、太い脚を取り大ぶりの身を殻から外す。
おっ、これは冷凍じゃなく生だな?
身離れからして期待し、口に入れると甘い味が広がる。
「たらば蟹なんて贅沢! やっぱり蟹はいいね~」
旭が相好を崩し、次のたらば蟹の攻略を始めている。
沙良も旭に負けじと、たらば蟹を取り出し黙々と食べていた。
ニュースで流れていた映像はズワイ蟹だったから、このたらば蟹はスーパーで売っていたものじゃなさそうだ。
アパートの住民が買っていたものだろうか?
まぁ七年前の蟹でも、時間停止機能がついたアイテムBOXに入っていれば新鮮さは損なわれない。
気にせず美味しく頂こう。
締めは定番の雑炊にして、お腹一杯になり自室へ帰った。
月曜日。
ダンジョン地下12階の安全地帯から、エンダ達の姿が消えているのを確認して地下10階に移動する。
沙良が7パーティーにその件を伝え、残りの13パーティーに地下12階へ拠点を移す報告を聞きながら、やれやれやっと居なくなったと安堵の息を漏らす。
隣の旭も、ほっとした表情で小さく親指を立てていた。
なんにせよ、やつらが諦めて帰ったのは事実だ。
これで中止していた地下12階の攻略を始められる。
俺達が居なくなる事で、治療を受けられなくなる13パーティーは残念そうにしていたが……。
再び地下12階へ戻り、久し振りに安全地帯にテントを設置する。
一度ホームに戻って休憩したあと、俺は張り切って桃を探しに行った。
さぁ、今日はどこに生ってるんだ?
俺は一瞬だけ目を瞑り、感覚を研ぎ澄ませ方向を探る。
目を開けたと同時に直感が働いた方角へ走り出すと、30分後に桃の木を発見した。
こうして、お宝を探し当てるようなドキドキ感が堪らなく楽しい。
出来れば果物じゃなく、本当の宝物を見付けられたら一番嬉しいんだけどな。
生っている桃を傷つけないよう、ライトボールで枝から切り離して受けとめていく。
どれも完熟状態で瑞々しい桃の甘い香りが辺りに満ちる頃に採取作業を終え、場所を移動してみかんが生っている木を探しに行った。
3時間後、ホームへ戻り昼食にする。
今日は弁当じゃなく牛カルビ丼だった。
まぁ牛といっても、ミノタウロス肉を使用したものだろう。
里芋、大根、ネギの味噌汁に箸をつけてから、肉たっぷりのカルビ丼を掻き込む。
俺好みの味付けで食欲が増すな。
お腹が膨れる頃、沙良が口を開いた。
「お兄ちゃん。迷宮都市のダンジョンに潜り始めて10ヶ月以上経つから、そろそろリースナーの武器屋へ行ってこようか?」
「あぁ、そうだな。1人で大丈夫か?」
すこし唐突な提案に疑問を感じたが、解体ナイフの切れ味が悪くなっていたのは確かだ。
「移転を使用するから直ぐに帰ってこられるよ。旭は、いつもお兄ちゃんの解体ナイフを借りてるよね? よければついでに、オリハルコンかミスリル製の解体ナイフを注文してこようか?」
「えっ! 本当? 沙良ちゃん優しいね~。じゃあ俺の分を注文してくれると凄く嬉しい!」
ついでだからと、旭の解体ナイフの注文まで請け負っている。
普段は俺達の解体ナイフなんか気にもしないくせに、言動が怪しいな……。
俺が妹の態度を疑っている間に、沙良は旭から解体ナイフに必要なミスリルゴーレムとオリハルコンゴーレムを受け取り、アイテムBOXに収納していた。
「じゃあ、午後からは私一人でリースナーの町に行ってくるね」
テントから出ると、7パーティーが戻ってきていた。
彼らは魔物を倒しながら2階層を進むので、到着時間に差が出来る。
安全地帯に着いたばかりなのか、これから昼食を取るようだ。
沙良が冒険者達にひらひらと手を振り、「攻略しに行きますね~」と走り出す。
人気がない森の奥まで進むと、移転してリースナーの町へ行った。
沙良の姿を見送ったあと、どこか腑に落ちない気がして腕を組む。
「賢也、何を考え込んでるの?」
その場から動こうとしない俺に気付いた旭から声を掛けられた。
「いや……少し、沙良の態度が変だと思って。お前は何か感じなかったか?」
「う~ん、別に普通だったと思うけど?」
「いや、まぁ大した事はないだろう」
何か他に理由がある気もしたが、沙良が言うまで黙っておくか。
重要な案件なら直ぐに話すだろうし、そこまで挙動不審というわけでもない。
旭が気付かない程度の隠し事だろう。
1時間程で沙良が戻ってきた。旭の注文した2本の解体ナイフは作製に1週間程かかるらしい。
砥ぎ直した2本の解体ナイフの内、ミスリル製の方を旭に渡して魔石取りが必要なホブゴブリンとフォレストドッグを倒しに行き、早速試してみる。
あぁ、切れ味が良くなってるな。
旭を見ると、スパッと切れる解体ナイフに喜んでいた。
俺達は、ひとしきり試したあと頷き合い、解体ナイフを洗浄して仕舞った。
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◇小説家になろうでも同時連載中です◇