自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
97 / 759
<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 33 ダンジョン 映画&デザートバイキング

しおりを挟む
 日曜日。
 この日は沙良と一緒に映画館に行ってきた。
 たまには大画面で、迫力のある映像を見てみたいと思ったのだ。

 映画館に着くと、沙良は早速さっそくポップコーンと飲み物のセットを購入していた。
 俺は見たい映画の上映時間を調べて、いくつかピックアップする。

 映画館で見るのならアクションがよい。
 沙良はファンタジー物を選んで悩んでいる様子だ。
 
 席は空いているので、お互い好きな映画を見れば問題ないだろうに……。
 
 結局、見たいファンタジーは3部作の内の2部が今回上映となっていて、まだ1部を見ていなかったらしい。

 俺と同じアクション映画でよいと言うので、人気のスパイアクション映画を一緒に見る事にした。
 今回から主役の俳優が変わるので、若くなった分アクションシーンに期待が持てる。

 俺達2人しかいない映画館の室内で、上映時間を待っている間に沙良はもぐもぐポップコーンを食べ始めていた。
 おいおい、俺の分も少しは残しておいてくれよ。

 上映時間開始、のっけからアクションシーンの連続だ。
 この手の映画にはヒロインが必ずいるのが定番だが、今回は敵側のスパイという設定らしい。

 お互いだまし合いの最中に、果たしてロマンスが生まれるものだろうか?
 まぁ映画なので細かい事は気にしない方が楽しめるか。
 
 内容はありきたりな物だったが、やはり大画面で見るのは良い。
 音響効果もあって、それなりに楽しむ事が出来た。
 
 2人サイズのポップコーンは食べようとした所、沙良がほとんど食べてしまい残っていなかった。
 塩味のプレーンタイプだったので、俺も食べたかったんだが……。

 キャラメル味の物は甘過ぎて俺が食べないと知って、塩味にしてくれたんじゃないのか?

 映画館に入るとポップコーンを何故なぜか食べたくなる。
 多分あの匂いが購買意欲をかせるんだろうな。

 途中で席を立って追加を買いに行く訳にもいかず、俺はほんの少し残ったポップコーンをちびちびと食べた。

 沙良が映画を見た後、アクションシーンを魔法で再現出来ないかと聞いてきた。

 いや、無理だろう。
 
 あんな高層ビルから飛び降りたら普通は死ぬ。
 飛んでる飛行機から脱出するにも、それなりの訓練が必要になる。

 妹は時々、俺の予想外の事に興味を持つから注意が必要だ。
 空を飛んでみたいのは分かる。
 
 ウィンドボールじゃ、どうイメージしても飛ぶ事は出来ないぞ?
 内緒で試したりしないでくれよ……。

 好奇心旺盛おうせいな沙良の面倒を見るのは、忍耐が必要だ。
 やっと奴隷商のターゲットから外れて安心しているのに、盛大に自爆しそうで怖い。

 旭~!!

 俺1人で沙良の手綱たずなを握るのは本当に疲れる。
 お前がいないと大変だ。

 俺はどうにか沙良の好奇心から目をらそうと、美味しいデザートを出す店に行こうと提案した。

 ホテルのケーキバイキングだが、ここのケーキはパティシエが全て手作りしていて2個食べれば充分元は取れる。

 沙良がケーキに飛びついたので、気が変わらない内にさっさと映画館を出てホテルに直行だ。
 ホテルに着くまでの間、沙良は今日見た映画の話をしてくるので気が気じゃない。

 早く甘い物を食べさせて、ビルから飛び降りるシーンの事は忘れてもらおう。

 俺は気もそぞろに相槌あいづちを打ち、これから行くホテルのケーキバイキングの話にすり替える。

 誰と一緒に来たのか聞かれて、一瞬黙ってしまった。
 過去に付き合った女性で、浮気をされ別れた事を思い出したからだ。

 しかも別れ話をしたホテルが今から向かう所とは……。

 選択をあやまった!

「研修医時代に行った事があるんだよ。ほら、旭は甘い物が好きだったろう? ここのモンブランは和栗を使用しているから旭のお気に入りでな」
 
「へぇ~、男2人で食べに来たんだ。しかも、ケーキバイキングにねぇ。周りの注目浴びまくりだね!」

「あぁ、そうだったな……」

 旭をダシに使ってみたが沙良にはバレているみたいだ。
 ここで沙良の意識をらすために、別れた女性と来た話をするのも何かが違う気がする。

 俺が盛大に自爆しそうだ!

 研修医で忙しくしていた俺は、彼女が不満をつのらせている事に気が付かずフォロー出来ていなかった。

 結局、彼女の浮気がバレて別れる事になったんだよなぁ。

 痛い思い出だ。

 過去を思い出している間にホテルに到着。
 ティーラウンジに行って、電子メニューから今月のケーキバイキング2,000円を2名分注文する。

 すると電子メニューに飲み物とケーキの一覧が表示された。
 俺はホットコーヒー、沙良は紅茶を選択。
 ケーキの種類は3つまで選ぶ事が出来る。

 夕食もあるので俺はケーキを2つ頼んだ。
 沙良は3種類頼んでいたが、お腹一杯になって今日の夕食抜きとかしないでくれよ。

 俺は苺ショートにモンブラン。
 沙良はチョコレートケーキ・ミルクレープ・ミルフィーユ。

 飲み物と一緒にテーブル上に展開される。
 
 沙良はケーキを前にして、満面の笑みを浮かべていた。
 紅茶はティーポットで出て来たので、2杯は飲めるだろう。

 俺は苺ショートの苺から食べ始めた。
 ここのケーキは甘さ控えめなので男性にもお勧めだ。
   
 サイズはやや小振りのため、直ぐに食べ終わる。
 モンブランも和栗の味がしっかりとして美味しい。

 俺はどちらかと言うと洋菓子より和菓子の方が好きで、栗の季節になると岐阜県の中津川に行って栗きんとんを買いに走っていた。
 実家に手土産で持っていくと母が抹茶をててくれたので、その日は家族全員で栗きんとんを味わったものだ。

 おや?
 沙良が3個を完食して追加を注文している。
 レアチーズケーキとパンナコッタが出てきた。

 この瞬間、今日の夕食はカップラーメンが確定となった……。

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,587

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
 農家の四男に転生したルイ。   そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。  農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。  十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。   家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。   ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる! 見切り発車。不定期更新。 カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。