118 / 757
<外伝> 椎名 賢也
椎名 賢也 54 ダンジョン 地下9階 攻略組が誰も居ない階層 1
しおりを挟む
月曜日、夜9時。
冒険者ギルド前の乗合馬車に乗りダンジョンに到着。
地下9階の地図(銀貨90枚)を持って、入場料銀貨1枚(1万円)を払いダンジョンに入る。
地下1階から地下9階まで最短距離で駆け抜けた。
地下9階に辿り着くと、沙良がマッピングで最初の魔物を見付けて走り出す。
【ダンジョン地下9階 常設依頼 C級】
ケンタウロス1匹 金貨10枚(魔石・槍・本体必要)
ユニコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バイコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バジリスク1匹 金貨10~13枚(魔石・本体必要)
やけに魔物の種類が少ないな。
そして何で馬系ばかりなんだ?
だがまぁ、初見の魔物を見るのは楽しみだ。
最初に接敵したのはケンタウロス体長3m。
こいつは大きな突撃槍を構えて突進してきた。
沙良の魔法Lvも上がり魔物に対する対処も上手くなってきたので、俺は後ろから討伐する様子を見守る。
本当は初見の魔物は俺が最初に討伐して危険かどうか判断したい所だが、余り過保護にすると沙良もつまらないだろう。
沙良が眉間に魔法を撃って倒した。
上半身が人型のケンタウロスだが、魔物だと思っているのか狩る事に忌避感は無いらしい。
まぁ人型と言えど、毛むくじゃらでは人間には見えないだろう。
この魔物、本体も換金対象になっていたが必要なのは馬の皮部分だけだと思いたい。
あぁ馬肉は日本でも食べられていたか、上半身の人型部分の肉は……考えるのはよそう。
あまり良い結果になりそうにない。
沙良は横倒しになったケンタウロスの頸動脈を槍で突き刺し、しっかりと血抜き処理をしていた。
こいつは何も考えないんだろうな。
そもそも、ケンタウロスの肉を食べるという発想自体しないかも知れない。
大きな突撃槍を手に持って珍しそうに振り回している。
同じ槍だから使ってみたいのか?
お前の身長じゃ使い辛いだろうに……。
Lvが上がり筋力も上がった所為なのか、軽々と持ち上げてグルグル回して遊んでいた。
男性でも重そうな槍を振り回す姿を見られると困るな。
「沙良、その突撃槍は換金出来るみたいだから使うのは止めた方がいいぞ」
「うん、分かった。ちょっと私には大きいみたいだし。これ、リビングアーマに持たせたら格好いいかも!」
そう言って沙良はアイテムBOXからリビングアーマを取り出し、突撃槍を手に持たせて満足そうに頷いている。
おっと!
リビングアーマの事を思い出してしまったか。
この話題は藪蛇だったな~。
「ねぇねぇ、見て見て! 凄く素敵でしょ?」
妹の感性についていけない俺は、曖昧に返事をしておいた。
「あ~まぁ、槍を持った方がよくは見えるかもな」
「騎士って感じがする。幅の大きな廊下に左右並べて中心を歩いたら、なんか優越感に浸れそう。そう思わない?」
「全く全然思わない。さっさと仕舞って、次に行くぞ」
「お兄ちゃんには、私のロマンが理解出来ないんだね!」
理解出来てたまるか!
ぶ~ぶ~言いながら、ケンタウロスとリビングアーマを収納すると次の獲物を探し出す。
「ユニコーン発見! どうしよう私、懐かれちゃうかも?」
真っ白な一角の馬を見て、沙良は瞳をキラキラさせながら期待に胸を膨らませている。
どうせユニコーンに乗ってみたいんだろう。
が、魔物だからそれは無い。
嬉しそうに走り出す沙良の後を追って、ユニコーン体長4mの前に躍り出た。
沙良の期待は大きく外れ、ユニコーンは俺達を見ると襲ってくる。
ほらっ、そんなアホ面晒してないでさっさと魔法を撃たないと馬に蹴られるぞ?
襲いかかってくる魔物に身の危険を感じたのか、漸く沙良が魔法を撃った。
「おかしいな? 今は処女なのに……」
首を傾げながらそう呟く。
コメントし辛い会話は止めてくれ。
そんな事を言ったら俺も童貞だ。
それにしてもダンジョンにユニコーンとは、これ如何に?
不釣り合いな場所での出現は、ダンジョンマスターがいる可能性があるかもなぁ。
沙良は地下10階にいるのは、絶対ドラゴンだと言い張っているが……。
そもそもドラゴンが入るような大きな空間が、このダンジョンにはなさそうだ。
ドラゴンじゃなくてがっかりする沙良を、慰める方法を今から考えておいた方がいいか?
ダンジョンマスターがいたら、怒って殴りそうな気がする。
そんな事で怒られても相手が困るだろう。
地下10階の情報は何もないので、実際何がいるのかは不明だ。
俺はメタルスタイムやユニコーンを見て、地球の人間がいるんじゃないかと考えていた。
ファンタジー小説にもよく出てくるし、この世界は魔法にダンジョンがあるから確率は高い。
もし地球の人間が召喚されて、ダンジョンマスターをしているんだとしたら……。
俺は沙良に召喚されたので異世界生活を満喫しているが、ダンジョンに召喚された人間は多分外には出られないだろう。
それはとても哀れだ。
魔物が出てくる事を願おう。
--------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
--------------------------------------
冒険者ギルド前の乗合馬車に乗りダンジョンに到着。
地下9階の地図(銀貨90枚)を持って、入場料銀貨1枚(1万円)を払いダンジョンに入る。
地下1階から地下9階まで最短距離で駆け抜けた。
地下9階に辿り着くと、沙良がマッピングで最初の魔物を見付けて走り出す。
【ダンジョン地下9階 常設依頼 C級】
ケンタウロス1匹 金貨10枚(魔石・槍・本体必要)
ユニコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バイコーン1匹 金貨20枚(魔石・本体必要)
バジリスク1匹 金貨10~13枚(魔石・本体必要)
やけに魔物の種類が少ないな。
そして何で馬系ばかりなんだ?
だがまぁ、初見の魔物を見るのは楽しみだ。
最初に接敵したのはケンタウロス体長3m。
こいつは大きな突撃槍を構えて突進してきた。
沙良の魔法Lvも上がり魔物に対する対処も上手くなってきたので、俺は後ろから討伐する様子を見守る。
本当は初見の魔物は俺が最初に討伐して危険かどうか判断したい所だが、余り過保護にすると沙良もつまらないだろう。
沙良が眉間に魔法を撃って倒した。
上半身が人型のケンタウロスだが、魔物だと思っているのか狩る事に忌避感は無いらしい。
まぁ人型と言えど、毛むくじゃらでは人間には見えないだろう。
この魔物、本体も換金対象になっていたが必要なのは馬の皮部分だけだと思いたい。
あぁ馬肉は日本でも食べられていたか、上半身の人型部分の肉は……考えるのはよそう。
あまり良い結果になりそうにない。
沙良は横倒しになったケンタウロスの頸動脈を槍で突き刺し、しっかりと血抜き処理をしていた。
こいつは何も考えないんだろうな。
そもそも、ケンタウロスの肉を食べるという発想自体しないかも知れない。
大きな突撃槍を手に持って珍しそうに振り回している。
同じ槍だから使ってみたいのか?
お前の身長じゃ使い辛いだろうに……。
Lvが上がり筋力も上がった所為なのか、軽々と持ち上げてグルグル回して遊んでいた。
男性でも重そうな槍を振り回す姿を見られると困るな。
「沙良、その突撃槍は換金出来るみたいだから使うのは止めた方がいいぞ」
「うん、分かった。ちょっと私には大きいみたいだし。これ、リビングアーマに持たせたら格好いいかも!」
そう言って沙良はアイテムBOXからリビングアーマを取り出し、突撃槍を手に持たせて満足そうに頷いている。
おっと!
リビングアーマの事を思い出してしまったか。
この話題は藪蛇だったな~。
「ねぇねぇ、見て見て! 凄く素敵でしょ?」
妹の感性についていけない俺は、曖昧に返事をしておいた。
「あ~まぁ、槍を持った方がよくは見えるかもな」
「騎士って感じがする。幅の大きな廊下に左右並べて中心を歩いたら、なんか優越感に浸れそう。そう思わない?」
「全く全然思わない。さっさと仕舞って、次に行くぞ」
「お兄ちゃんには、私のロマンが理解出来ないんだね!」
理解出来てたまるか!
ぶ~ぶ~言いながら、ケンタウロスとリビングアーマを収納すると次の獲物を探し出す。
「ユニコーン発見! どうしよう私、懐かれちゃうかも?」
真っ白な一角の馬を見て、沙良は瞳をキラキラさせながら期待に胸を膨らませている。
どうせユニコーンに乗ってみたいんだろう。
が、魔物だからそれは無い。
嬉しそうに走り出す沙良の後を追って、ユニコーン体長4mの前に躍り出た。
沙良の期待は大きく外れ、ユニコーンは俺達を見ると襲ってくる。
ほらっ、そんなアホ面晒してないでさっさと魔法を撃たないと馬に蹴られるぞ?
襲いかかってくる魔物に身の危険を感じたのか、漸く沙良が魔法を撃った。
「おかしいな? 今は処女なのに……」
首を傾げながらそう呟く。
コメントし辛い会話は止めてくれ。
そんな事を言ったら俺も童貞だ。
それにしてもダンジョンにユニコーンとは、これ如何に?
不釣り合いな場所での出現は、ダンジョンマスターがいる可能性があるかもなぁ。
沙良は地下10階にいるのは、絶対ドラゴンだと言い張っているが……。
そもそもドラゴンが入るような大きな空間が、このダンジョンにはなさそうだ。
ドラゴンじゃなくてがっかりする沙良を、慰める方法を今から考えておいた方がいいか?
ダンジョンマスターがいたら、怒って殴りそうな気がする。
そんな事で怒られても相手が困るだろう。
地下10階の情報は何もないので、実際何がいるのかは不明だ。
俺はメタルスタイムやユニコーンを見て、地球の人間がいるんじゃないかと考えていた。
ファンタジー小説にもよく出てくるし、この世界は魔法にダンジョンがあるから確率は高い。
もし地球の人間が召喚されて、ダンジョンマスターをしているんだとしたら……。
俺は沙良に召喚されたので異世界生活を満喫しているが、ダンジョンに召喚された人間は多分外には出られないだろう。
それはとても哀れだ。
魔物が出てくる事を願おう。
--------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
--------------------------------------
961
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。