自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第332話 迷宮都市 ホームの追加

 この日のために、実は実家をホームに追加しておいた。
 
 私が住んでいるアパートから実家は5kmと離れていなかったけど、誰も居ない家を見るのが悲しくて今まで一度も見に行けずにいた。

 でも両親を後2ケ月で召喚する予定なので、先にホームに設定しておいたのだ。
 兄のタワーマンションよりも、住み慣れた家の方が安心するだろうし。

 何より丹精たんせい込めた庭が無くなると、母は寂しがるだろう。
 私達が生まれた記念にと植えられた樹木もあるしね。

 四季折々に咲く花々は、毎年目を楽しませてくれたものだ。
 冬になると渋柿を干し柿にするために大量に吊るしてあった。
 実家の干し柿は、大きくて甘く本当に美味しかったなぁ。
 
 現在Lvは35なので、ホームに設定出来るのは3ケ所。

 実家と兄のタワーマンションを追加しても、まだ1ケ所ホームに設定出来る。
 今はまだ追加する場所を決めていないけど、実はホームに設定したい場所があるんだよね。

 まぁそれは、今後皆と相談して決めようと思う。

 実家を前にして、入れなかった敷地内に入る。
 約8年振りとなる実家は、私が持っていた鍵でちゃんと開いた。

 ホームに設定したので、『手紙の人』の補償効果で新築になっている。
 築50年は経過していたから、召喚された両親も喜ぶだろう。

 不思議な事に原状回復の効果は建物内だけなので、庭は記憶にある状態と同じだった。
 この8年の間に少しだけ植物が増えたかな?

 現在咲いている菊に、見覚えの無い種類がいくつか混じっていた。

 家の中に入ると、懐かしさで泣きそうになる。
 母は物を捨てられない人だったから、家にある家具はほとんど結婚した当時のままだ。

 その色せ古ぼけていた家具達が新品になっている。
 本当は、こんな色をしていたんだ。

 双子達が割ってしまった、飾り棚のガラスも綺麗な状態に戻っていた。
 他にも使えなくなってしまって、大切に保管してある物が使用出来る状態になっている事だろう。

 子供の頃、私達の成長を父が記録していた柱には、傷ひとつ付いてない事だけが少し残念だった。

 8年の間に家電が少し変わっている。
 冷蔵庫・洗濯機・炊飯器・掃除機は新しくしたみたいだ。

 10年以上使用していたから、最新の物に換える必要があったのかも。
 不思議なもので、家電は1つ壊れると連鎖反応のように次々と壊れていくのだ。

 取りえず、そのままだと腐る可能性のある食品は全てアイテムBOXに収納する。
 まだ召喚まで2ケ月あるからね。

 冷蔵庫の中には、母が作り置きした総菜が幾つか入っていた。

 キンピラごぼう・里芋の煮っ転がし・ひじき煮・椎茸の佃煮・ポテトサラダ・大学芋……。

 兄に食べさせたら、味の違いに気付くだろうか?

 残念ながら、今回は365日の補償は無いので全て1品のみだけど。
 でも母が取っておいた各種のゴミ袋は、律儀りちぎに原状回復してくれたようだ。

 お米の量に思わず笑ってしまう。
 どれだけお米の袋を仕舞っておいていたのか……。
 
 床にあふれている食材をアイテムBOXに収納して、あかねの部屋だった場所から剣舞に使用する剣を拝借はいしゃくした。

 旭と茜が通っていた空手道場では、剣舞も教えていたので茜はよく庭で練習していたんだよ。

 その男性らしい? 剣舞は、見ていていつも心を揺さぶられた。
 異世界の実戦的な剣舞とは違い、時にアクロバティックで魅せる動きのある剣舞は非常に完成度の高いものだった。

 実際、茜は何度か全国大会で上位入賞を果たしている。
 部屋には、その時のトロフィーが幾つか飾られていた。

 トロフィーを持って自慢げに報告してきた事を思い出す。
 私が亡くなって、あの子は日本で元気に暮らしているだろうか?

 結婚してから少し落ち着いたけど、旦那さんと仲良くやっているといいな。

 私が住んでいた部屋は現在物置になっている。
 1人暮らしをする時に、部屋の荷物はほとんど持ってきたのでこの家に私の物は残っていない。

 最後に双子達の部屋をのぞいてみよう。

 ここは最初兄の部屋だった。
 8畳ある一番広い部屋で、南向きの日当たりが良い場所にある。

 兄が大学を卒業してから、勤め先の病院に近い場所へ1人暮らしを始めたので双子達の部屋になった。
 その双子達も実家を出てからもう何年にもなるので、この部屋には誰も住んでいない状態だ。

 部屋の隅にダブルベッドが1つ置いてある。
 小さい頃から一緒の布団で寝ていたので2段ベッドは嫌がり、いつも2人一緒に寝ていたっけ……。

 お腹の中からずっと一緒だったので、離れると寂しいんだろうか。
 よく双子にはシンパシーがあると言う。

 雅人まさと遥斗はるとは二卵性だったから似てはいないけど、兄の雅人まさとは弟の遥斗はるとをよく痴漢から守ってあげていた。

 小柄で女の子としか見えない遥斗《はると》は、高校時代に通学途中良く電車内で痴漢にったのだ。

 学生服を着ていたのにも拘わらず、男装してると思われたのか……。
 女性専用車両には乗れないので、痴漢を撃退しては駅員に引き渡していた。

 ちゃんとズボンを穿いていたのになんで?
 と本人は涙目だったけど、家族は苦笑するしか無かった。  

 いやだって女の子にしか見えないし!

 雅人は背が高くモデルのように美人だったから、痴漢も童顔で可愛い遥斗を狙ったんだろう。
 
 実家に居ると家族の事を沢山思い出してしんみりとしてしまう。
 あぁ、皆に会いたいなぁ……。

 私が転移した12月24日はクリスマスイブだったので、もしかしたら家族はクリスマスを祝えなくなってしまったかも知れない。

 再びリビングへと戻って母のピアノの前に立つ。
 そう言えば随分ずいぶんピアノを弾いていない。

 もう指が動かないだろうなぁ~。
 
 リビングに飾られた家族写真にふと目をとめる。
 その中に1枚、私だけが写った写真が大きく引き伸ばされていた。

 あぁ、亡くなった私の事を忘れないように飾ってくれているんだね。
 48歳当時ではなく、30歳くらいの若い私の笑顔一杯の写真だった。

 両親を悲しませてしまった事に胸が塞がる思いをする。
 お父さん、お母さん、私死んでなんかないよ。

 別人になって、ちょっと若返り過ぎちゃったけどもう少しで会えるから待っててね!
 あっ、お母さんにはすごく嬉しいサプライズがあるから期待してて!

 サヨさんに会ったらビックリするだろうな~。
 行方不明だった兄も一緒だから、驚きすぎて倒れるかも……。

 もう少し実家に居たかったけれど、後2ケ月の辛抱しんぼうだと言い聞かせ家を後にしたのだった。

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