自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第347話 冒険者ギルドマスター オリビア・ハーレイ 1 迷宮都市に王族がやって来た! 1

 【オリビア・ハーレイ】

 私は迷宮都市の冒険者ギルドマスターを100年近くしている。
 父親がエルフで母親が人間だったので、所謂いわゆるハーフエルフだ。

 エルフは種族特性のひとつとして長命な事が挙げられるが、純粋なエルフに限って言えばその寿命は平均500年くらいだろう。

 王族のハイエルフに至っては、1,000年を優に超える事もあると言う。
 膨大ぼうだいな魔力を持つハイエルフは信仰の対象として、エルフの民に畏敬いけいの念をいだかれていた。

 ハーフエルフの私は300年程度だ。
 それでも人族の一般人が平均85歳だと考えれば、まぁ長命と言えるかも知れない。

 元々エルフの国は別大陸にあり、現在私が住んでいるカルドサリ王国と国交は無く貿易すらしていない。
 ならば何故なぜ、海をへだてた大陸に私が居るかと言えば出稼ぎに来ているからだ。

 エルフは滅多に国を出る事は無い種族だ。
 全てが自国でまかなえるので、本来なら他国と貿易する必要が無い。

 唯一手に入らない物が、人族の手にって作られた豪奢ごうしゃな衣装や装飾品だった。

 王族であるハイエルフが、この衣装に目を付け欲しがったので、ハーフエルフである私が独立採算制の迷宮都市で冒険者ギルドマスターをして利益を上納しているのだ。 

 カルドサリ王国でいえば、摩天楼まてんろうのダンジョンがある冒険者ギルドマスターもハーフエルフの男性だ。
 こちらも同じように利益を上納しているだろう。

 王都で年1回開かれる冒険者ギルドマスター会議で顔を合わせると、お互い貧乏クジを引いたなと愚痴をこぼしている。

 我がハーレイ家はエルフの中でも名家であるらしく、父が直々に王族からこの役目を言い付かったそうだ。
 父は王命に従い、人族の妻をめとり自分の後任である私を産ませた。

 お役目を200年勤め上げた後は、世代交代し楽隠居をしている。
 私の任期も後100年で終了だ。

 何事も無く勤めあげる事が出来ると思っていたが、ある1人の王族がお忍びで迷宮都市に来た事から事態は変わった。

 解体場の責任者であるアレクから、最近質の良い皮が換金されている事を聞きギルドマスターとしてその冒険者が換金する様子を見に行った時の事だ。

 事前に聞いていたのは、少女1人少年2人の3人パーティーでC級冒険者という事だけだった。
 地下30階層ある迷宮都市のダンジョンにC級冒険者がやって来る事は年に数回あるが、そのほとんどが勘違いした若者だった。

 他領のたかが10階層を攻略出来たくらいで、自分達ならイケると腕試しにやってくるのだ。
 大抵は現実の壁に阻まれ、迷宮都市を去っていく。

 C級冒険者では、ここのクランリーダーは相手にしない。
 加入するのはまず無理だった。

 クランに加入出来ないと全てを自分達で準備するしかないので、長期間ダンジョンを攻略する事が出来ず宿代やポーション代等の必要経費がかさんでしまい稼ぎを得る事が難しくなる。

 結局、思ったより稼げない事に気付いて元の場所に戻っていくのが常だった。

 そんな当たり前の常識を見事にくつがえし、3人だけのパーティーで毎週大量の素材を換金すると言うのだから興味を覚えるのも当然だろう。

 いつも金曜日の夕方に換金に来ると言うので遠目にその3人を観察した所、心臓が止まるかと思った。

 何故なぜここに王族がっ!?

 ついいつもの癖で人物鑑定をして、3人のステータスを見てしまったのだ。
 
 少女の名前はリーシャ・ハンフリーで18歳となっていた。
 Lvは25で、なんとMP値が1,248もある!

 そんな馬鹿な事がある訳ない。
 人族は大抵10歳になると冒険者登録をするから、Lv25であれば多少前後しても260くらいが普通だ。

 それが約5倍近くあるなんてどういう事かと少女の容姿に注目すると、実家にある王族の絵姿が載っている系譜けいふが描かれた人物の1人と非常によく似ていた。

 父が王族を崇拝すうはいしているので、子供の頃に系譜を全て覚えさせられたのが役に立った。
 この時程、父に感謝した事は無い。

 王族に対して常に言われていた事を思い出したからだ。
 彼らは非常に気高いが、その精神は気まぐれで気に入らない事があると、まるで塵芥ちりあくたのようにその存在を消し去ると言う。
 
 決して怒らせないように、相対した時は細心の注意を払えと事ある毎に言われた。
  
 どうしてここに王女が冒険者としているのか……。

 そして護衛の2人以外に、お付きの影衆は何処どこにいるのか辺りを探ってみたが、その存在を感知する事は出来なかった。
 
 ハイエルフである王族には、そば付きの影衆達が最低10人は控えていると言う。
 この影衆は王族の周囲に危険が迫ると姿を現し、主を命に代えても守る筋金入りの一族だ。

 ハーレイ家は影衆の一族とは縁続きではあったけれど、かなり傍流ぼうりゅうのためこうして別のお役目を与えられていた。

 一応、私も王族を守る一族の出身である。
 幼少期より父親からあらゆる武術を学んでいるにもかかわらず、影衆の気配すら感じ取る事は出来なかった。
 
 余程優秀な者がそばに控えているんだろう。
 やはり王族を陰から支える本家の影衆には、傍流の私では太刀打ち出来ない程実力に差があるのか……。

 これでも父親の厳しい修行に50年耐えて合格を貰ったと言うのに。
 
 ついでに見てしまった護衛の少年達は、ステータスを偽造しているのか名前が特殊な文字で書かれていて読めなかった。

 1人はLv25で、MP値は1,300。   
 もう1人はLv25で、MP値は1,170。
 年齢は2人とも20歳となっているが、これも偽造されているんだろう。

 もしかして毎月の上納金に不備があり、お忍びで視察にやって来たのか?

 父の代から300年――。
 多少の金額の上下はあるが、今まで充分な額を納めているはず

 不正をして上納金を減らしたりしていない事だけは確かだ。
 そんな事をしようものなら、次の日には私の首は消えて無くなっているだろう。

 私は理由が分からず混乱してしまった。
 そもそも、カルドサリ王国で生まれた私は王族に会う機会など一生無いと思っていた。

 何故なぜ自分の代に、こんな時限爆弾みたいな存在がやって来るのだ。
 運の悪さになげきたくなる。

 いつか呼び出しを食らって断罪されるのではないか、そう思ったら急に呼吸が上手く出来なくなってしまう。
 私はその場をそっと離れて、気を休めるためにギルドマスターの部屋へと戻った。

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