自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第350話 冒険者ギルドマスター オリビア・ハーレイ 4 従魔登録 1

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 サラ様が地下10階から地下11階に拠点を移された。
 この分だと最速で最終攻略組と合流するだろう。

 その後3ケ月毎に1階層下に拠点を移し、良質な素材を次々と換金して下さる。
 あぁ、そんなに私に頑張れと言われるのですか……。

 分かっております。
 高値で売らせて頂きますとも!

 そして現在は地下14階に移られたばかりだ。
 この階層、実は迷宮都市では冒険者の試金石しきんせきとなる厄介やっかいな魔物が多い。

 キングビーの毒針で刺された場合、直ちに攻略を中止して帰還しないと毒が回り壊死えししてしまう。
 そこまでしても治療で助かる見込みは五分五分と言った所。

 ここでリーダーの腕が試されるのだ。
 必ず8匹との集団戦闘になるので、余裕を持って倒せなければ回避するしかない。
 無謀に挑戦した挙句あげく、冒険者を続けられなくなれば本末転倒だ。

 いくらクインビーの蜜袋の換金額が高いとは言え、リスク管理が出来ないリーダーに未来は無いだろう。
 
 そして最も換金額が高い迷宮タイガーに至っては、常設依頼に出してはいるが冒険者が狩る事はほとんど無い魔物だった。

 トレントの森深くに居る事が多く、討伐するなら周囲のトレント全てと戦闘になる。
 しかもトレントは、目に見えない風魔法のウィンドニードルを飛ばしてくるので盾を持って進まなければならない。

 討伐難易度で言えば、地下18階層くらいの魔物だ。
 ここを拠点にしているのは、クランリーダー率いるパーティーばかり。

 地下14階を攻略している冒険者には手に余る魔物だろう。
 
 最後に貴族に人気がある迷宮ウナギは川に生息しているので、これもまた冒険者には不人気な魔物だった。
 体長5mもある迷宮ウナギは、水中を自在に移動しウォーターニードルを飛ばしてくる。

 労力の割に中々狩れないとあっては、討伐する気も失せてしまう。
 水中に逃げられれば、それまでの苦労が水の泡だ。

 そういう訳で地下14階に常設依頼は出しているが、換金される事が滅多に無い魔物が多かった。

 なのにサラ様は、1週間で大量の魔物を換金しやが……して下さった。
 こんなに大量にあっても販売ルートが無いんですけど!?

 トレントはまだいい、最悪倉庫に眠らせて市場価格が下がらぬように調整すればいいからだ。

 だけど迷宮ウナギは困る……。

 王都の高級料理店に卸すにしても量があり過ぎだ。
 何故なぜ99匹も狩ってこられるんですか……。

 1匹体長5mもあるのに、私に喧嘩けんかを売っている訳じゃないですよね?

 そして傷の全くない迷宮タイガー29匹!
 シルバーウルフの皮なんて比較にならない程のシロモノをどうしろと……。

 また王都のオークションで、シルバーウルフの皮と一緒に売らなければいけないらしい。

 しかも、この量が毎週3ケ月続くのだ。
 早急に迷宮ウナギの販売先を確保しないと!

 あぁ、考えないようにしていたけれど噂ではトレントの森が1本残らず消えたとか……。
 これも換金される予定でいますよね?
 
 森から消えたトレント……、恐ろしくて数を想像したくない。
 泣いても良いですか?

 私が換金された大量の魔物の処分に四苦八苦していると、受付嬢が部屋に入ってくるなり従魔登録の用紙が何処どこにあるか聞いてきた。

 はっ?
 従魔登録の用紙?

 それは一体誰が必要としているのか……。
 聞いた瞬間、私は嫌な予感で一杯になる。

 冒険者の名前を尋ねてみると、案の定サラ様のパーティーらしい。
 しかも従魔は2匹居ると言う。

 あぁ、今度はどんな問題を起こされるのか。
 迷宮都市に今迄テイムされた魔物は居なかったのに……。

 私は受付嬢に副ギルドマスターを呼んで、サラ様達を会議室に案内するように頼み席を立った。

 何の魔物を誰がテイムされたのか……。

 そもそもテイム魔法は、かなり特殊な方法で習得するから秘伝扱いに近い。
 それこそ一子相伝で伝える事もあるくらいだ。

 テイム魔法が使えると知られると、また危険度が増すんですけど……。

 それより私はこれまで遠目からお会いした事は会っても、直接言葉を交わした事がない。
 突然王族と初めて相対する事になり、緊張で手が震えてきた。

 あぁ心拍も相当上がっているわね。
 今にも自分の心臓が大きく脈打っている音が聞こえてきそう。

 私、サラ様にお会いする前に倒れるんじゃないかしら?
 何か粗相そそうがあったらどうすればいいの?

 治癒術師の御二方おふたかたはフォローして下さるかしら……。

 私は動揺する気持ちを何とか抑え、自分自身を叱咤激励しったげきれいしギルドマスターの部屋から出ていった。

 隣接している部屋に居る秘書のオリーに、迷宮都市で一度も使用された事がない従魔登録用の用紙と首輪を2つずつ準備させると一緒に会議室へと向かった。

 会議室に入る前に、秘書のオリーにはくれぐれも失礼な態度を取らないよう言い聞かせておく。

 この男は迷宮都市があるリザルト公爵のおいだ。

 就職先を斡旋あっせんしてほしいと公爵に頼まれ仕方無く雇ったけれど、貴族の出身である事を鼻にかけ冒険者に対して上から目線な態度を取る事が多い。

 何度注意しても直らなかったので、どこの部署でも使えず結局私が面倒を見る羽目はめになった。
 迷宮都市は独立採算制を取っているが、それでもリザルト公爵領内にある限りしがらみからは抜け出せない。

 人族の貴族なんてエルフにとっては身分を敬う対象にならないと知ってるだろうけど、こうして偶に無理を承知で頼まれる事がある。

 オリーは使えなさで言えば、その最たる者だった。
 公爵の顔を立てて雇い入れ既に5年が経過している。

 この無能者を、そろそろ解雇しても良い頃だろう。

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