自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
239 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第365話 オリー・リザルト 2 冒険者ギルドの解雇

 会議室に入ると、既に副ギルドマスターと今回従魔登録をしにきた3人組の冒険者が席に着いていた。

 6人全員で来る必要はないので、残りのパーティーメンバー3人はギルド1階に隣接している飲食店で待機でもしているんだろう。 
 
 真ん中に座っている少女は、後数年もすれば誰もが振り返るだろうというくらい綺麗な容姿をしている。
 少女の右側にいる青年からは、何処どこ怜悧れいりな印象を受けた。
 左側にいる少年・・は、少女と同い年くらいだろうか?

 いずれにしても、迷宮都市では見かけない程に若いパーティーだった。
 ここのダンジョンはカルドサリ王国内にある大型ダンジョンの1つなので、当然攻略をしに来るのはB級冒険者ばかりだ。

 大抵地方の地下10階層までのダンジョンを攻略した後に迷宮都市に来るので、30歳以上になっている。
 それなのに、この3人は10代にしか見えなかった。

 C級冒険者か?

 リーダーは一番年長者に見える右側の青年だろう。
 3人ともワイバーン製の革鎧を着ているので、そこそこ稼ぎはあるらしい。
 体が華奢きゃしゃだから貴族出身の魔法士か……。

 テイム魔法が使える貴族は多くない。
 それはテイム魔法を秘匿ひとくしていて、一族以外の人間に情報を渡す事がないからだ。

 テイム魔法が使えるだけで、かなりのアドバンテージがあるので当然だろう。
 同じように、一子相伝の魔法もあるくらいだからな。

 ただ、どういう訳か公爵家や侯爵家の人間にはテイム魔法が使用出来る者がいない。
 なので、少なくともテイムした人間は伯爵家以下の出身だろう。

 俺は3人の身分を推測し、自分の方が上であると認識した。
 
 ギルドマスターから冒険者には丁寧に接しろといつも言われていたが、その必要性を感じなかったので今回も普段通り必要な事のみを確認するために口を開く。

「従魔登録をしたいとか。テイムした方はどなたですか?」

 俺にしてみれば最大限の対応だった。
 テイムしたのは誰だ? と聞かなかった自分をめてやりたい。

 すると、返事をすると思っていた青年ではなく少女が質問に答える。

「すみません、まずは貴方は誰でどういう立場の人ですか? 受付嬢からは、ギルドマスターが対応すると言われてたんですけど、貴方がギルドマスターなんですか?」

 俺に自分から自己紹介をしろというのか!
 貴族間では、身分の低い者から名前を名乗るのが礼儀だ。

 そのため、俺は冒険者ギルドで働くようになって自分から名前を言った事はない。
 今回は、俺がギルドマスターだと思われているようだから訂正する必要がある。

 嫌々だったが名前を名乗る事にした。

「いえ、私はギルドマスターではありません。秘書のオリーです」

「では最初にそうおっしゃって下さい。でなければ貴方がギルドマスターだと勘違いする所でした。そして秘書の方なら、何故なぜ他の2人について紹介をしないのですか? 紹介が無いと私達は誰かも分からない人達と同席する事になるんですが」

 なんだこの少女は!
 公爵家出身の俺に向かって説教か?

 言われた言葉がとても不愉快ふゆかいで、つい顔をしかめる。

「オリーさん、貴方は冒険者ギルドの職員に向いていないようです。今、思い切り顔に不快だと表情が出てましたよ。相手が年端としはもいかない小娘に、あって当然の常識・・・・・を言われたくらいで腹が立つのなら秘書をお辞めなさい。交渉人としても失格です」

 俺の態度に少女が更に言及し、あろうことか上から目線でギルド職員を辞めろとまで言ってくる。
 その一瞬で頭に血がのぼり、これ以上同席するのは御免だと俺は会議室を出ていった。

 何なんだ!
 たかが冒険者の癖に、一体何様の心算つもりで俺に意見なんてしやがる。

 ムカムカとする気持ちを抑えきれないまま、自分の部屋に戻った。
 冒険者ギルドの仕事は、本当に俺に向いてないな。

 叔父が斡旋あっせんしてくれた仕事だが、辞めてやろうか……。

 王都に居る時は湯水のごとく使っていた金も、迷宮都市に来てからは反省し安宿に泊まり給料を貯金していた。
 王都の屋敷を売却した時の金には、一切手を付けていない状態だ。

 冒険者ギルドを辞めたとしても、しばらくは暮らしていけるだろう。
 
 部屋に戻ってから1時後、ギルドマスターがやってきた。
 なにやら表情が硬い。

 これはきっと先程の件について、何か言われるんだろうなと覚悟した。
 流石さすがに、会議室から対応中の冒険者を無視して出ていったのはまずかったか……。

「オリー。私の言った事が、理解出来なかったようで残念だよ。お前は、今日この場で解雇する」

 突然予想外の言葉を聞き、先程まで自分から辞めようと思っていた事など吹き飛んでしまった。

「はっ? 俺を解雇って、どういう理由なんだ!」

「お前は、あの3人・・が毎週どれだけの素材を提出しているか知らないんだろう。参考までに教えてやるが、先週5日間の換金額は金貨495枚(4億9千5百万円)だ。これがどういう意味か分かるか?」

 たった5日の換金額が金貨495枚だと!?
 俺の給料は銀貨30枚(30万円)なのに!

 冒険者が、そんなにもうかるなんて知らなかった……。
 
「勘違いするなよ? 普通は毎週こんな量の魔物を狩ってきたり出来ない。彼らは、この迷宮都市で間違いなくトップにいる冒険者達だ。お前が不誠実な対応をしたお陰で、迷宮都市を去ったりしたら冒険者ギルドが受ける損害は計り知れない。冒険者に対して丁寧に接しろと何度も注意したはず。解雇の理由は従業員規則違反だ」

「そんな事、分かる訳ないだろう! くそっ、全てあの女の所為せいだ!」

 そう叫ぶと、ギルドマスターは俺をあわれむように見て一言つぶやいた。

「まぁ、せいぜい残り短い時間を有効に生きるといい」

 なんだ、その縁起でもない言葉は……。
 俺はまだ35歳だ!

 長命なハーフエルフよりは長生き出来ないだろうけど、まだ50年以上は死ぬ訳にはいかない。

 ギルドマスターは、俺を秘書室から追い出して入室許可を取り消したのだった。

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇