自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
239 / 758
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第377話 迷宮都市 トレントの活用方法 1

しおりを挟む
 土曜日の朝。

 昨夜は兄達が飲みに出かけたので、きっと朝は起きてこないだろうと朝食の準備だけをする。
 メニューは、中華がゆ焼売シューマイ搾菜ザーサイときくらげの卵炒めだ。

 私は奏屋かなでやにフルーツを卸しに行き、その後商業ギルドへ向かった。

 受付嬢に応接室まで案内され部屋で待つ事数分。
 カマラさんが数回ノックをした後に、入ってくる。

 前回は早朝に行き、彼の身嗜みだしなみが整わない状態で会ってしまったので、反省し今回は遅めの時間にした。

「おはようございます。先日はリッチのマントを沢山卸して頂き誠にありがとうございます。本日のご用は、ご依頼下さっている新築の件でしょうか?」

「おはようございます。こちらこそ、沢山買い取って頂いて感謝しています。はい、家の進捗しんちょく確認と木材のご提案に職人の方を紹介してもらえればと思っています」

 そう、今日は悩みの種だった大量のトレントの処分方法を提案に来たのだ。
 毎日溜まる一方なので、追加した3個のマジックバッグ30㎥じゃ換金が追いつかない。

「さようでございますか。では、まず家の件から話を進めましょう。お客様のご要望通りの広い土地を幾つか選んであります。場所によって、価格も多少前後致しますので地図をご覧下さい」

 そう言ってカマラさんは、迷宮都市内が詳細に描かれた地図をテーブルに置き私に見せてくれた。
 随分ずいぶんと正確な住宅地図で少し驚いてしまう。

 流石さすが商業ギルド、土地や建物に関してはここが牛耳ぎゅうじっているからね~。
 私はそこから3ケ所候補を決めて、マッピングを使用し周辺の雰囲気を調べる。
 
 うん、ここにしよう。
 ダンクさんの家が近くにある、比較的裕福な住人が住んでいる地域の土地にした。
 
 冒険者ギルドからも教会からもそんなに離れていないので、子供達が移動する距離は短くて済む。

「ここに決めました。それで、新築を建てるとなると大量の木材が必要になりますよね?」

「はい、A地区の土地でうけたまわります。木材ですか? 勿論もちろん、家の大きさにもりますが沢山必要になるかと存じます」
 
「実は今地下14階を攻略しているので、トレントが沢山あるんです。家の木材にトレントを使用するのは可能ですか?」

「では建築に使用出来る品質かどうか、確認させて頂いても宜しいでしょうか?」

 おおっ、そうか!

 傷が沢山付いているトレントだと、強度の問題が出てくるから建築資材には使用出来ないんだね。

「トレント1体は高さが5mくらいあるので、どこか別の場所に出す事になりますけど……」

「失礼しました、では場所を移りましょう。資材置き場になりますが広い倉庫ですので、そこでなら出して頂いても問題ないかと思います」
 
「はい、では行きましょう!」

 私は、大量にあるトレントの在庫を処分出来そうでウキウキしていた。
 家を建てる時の資材として使用してもらえるなら、建築費が安く済むからだ。

 商業ギルドから出て歩く事数分。
 大きな資材倉庫に到着。

 倉庫の隣には管理する人間が働くための小屋もある。
 倉庫内には、これまた大柄な男性が何人も忙しそうに働いていた。

 毎日、重い木材を運んでいるから皆さん発達した筋肉をお持ちで……。

 私はカマラさんの後に付いて、指示された場所にトレントを1体出した。
 するとカマラさんが、倉庫内に居た1人の男性を呼んでくる。

「仕事中に申し訳ないが、このトレントの鑑定をしてくれないかな」

 どうやら本職の人にトレントの品質を確認してもらうらしい。

「ああっ? 今日はトレントの入荷予定はなかったはずだが、どっから持ち込んだ物だ?」

 一緒に来た男性が、トレントの近くにいる私に気付いて目を瞬かせた。
 きっと普段、資材倉庫に若い女性がくる事は珍しいんだろう。

「お客様が狩ってきた物だけど、これを家を建てる時に使用したいみたいでね。建築資材として使えるか確認してもらいたい」

「あぁ、そういう事か……。サラちゃんだっけ、有名な冒険者だから直ぐに分かったよ。本当にまだちっこいお嬢ちゃんだな。『肉うどん店』によく食べに行ってるよ! ありゃ安くて早くて旨い飯だ!」

「はぁ……。お店を利用して頂きありがとうございます?」
 
 この男性は私の事を知っているみたいだ。
 いきなり知らない男性から名前を呼ばれてビックリする。

 有名人って、こういう感じなのかしら?

「どれ、サラちゃんが狩ってきたトレントを見てみよう」

 男性は、トレントの周囲を一周して戻ってくると何かを考えている様子。
 そしてもう一度、今度は大きな節に当たる部分を念入りにチェックし出す。

「カマラさん、俺の目にはこのトレントに傷が一つも見当たらないんだが……」 
 
「おお、そうでしょうとも! お客様のパーティーは、凄腕の魔法士ですからね!」

「そっ、そうか……? 傷一つ付いてないのを見るのは俺も初めてなんだが、品質は間違いなくA級品だ。家を建てるには相当量必要になってくるが用意出来るのか?」

 A級品という事は、建築資材として使用出来ると思ってもよいだろう。
 
「はい、心配はいりません。沢山あるので、足りなければ毎週狩ってきますし!」

「優秀な冒険者と聞いていたが、確かに狩りの仕方は上手いもんだ」

「ありがとうございます」

 私はトレントの鑑定をしてくれた男性にお礼を言い、にっこり笑っておいた。
 男性はカマラさんに何かを耳打ちした後で現場に戻っていく。

「A級品と鑑定結果が出ましたので、建築する際の資材として使用出来ます。それで、如何いかほどご用意出来ますでしょう?」

「今出せるのは100本くらいですが、毎週追加で100本は提出可能です」

「ひゃ、100本ですか!? それだけあれば家は建築出来るでしょう。もしよろしければ、残ったトレントを商業ギルドで買い取らせて頂く事は可能でしょうか?」

「えぇ、勿論もちろん! 残り分だけじゃなく、何本でも卸しますよ!」

 やったね~。
 冒険者ギルドでは、マジックバッグ30㎥4個分の96本しか換金出来なかったのだ。

 商業ギルドでも買取してくれるなら非常に助かる。
 冒険者ギルドとは組織が違うので、両方に提出しても疑問に思われる事はないだろう。

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,587

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。