自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第377話 迷宮都市 トレントの活用方法 1

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 土曜日の朝。

 昨夜は兄達が飲みに出かけたので、きっと朝は起きてこないだろうと朝食の準備だけをする。
 メニューは、中華がゆ焼売シューマイ搾菜ザーサイときくらげの卵炒めだ。

 私は奏屋かなでやにフルーツを卸しに行き、その後商業ギルドへ向かった。

 受付嬢に応接室まで案内され部屋で待つ事数分。
 カマラさんが数回ノックをした後に、入ってくる。

 前回は早朝に行き、彼の身嗜みだしなみが整わない状態で会ってしまったので、反省し今回は遅めの時間にした。

「おはようございます。先日はリッチのマントを沢山卸して頂き誠にありがとうございます。本日のご用は、ご依頼下さっている新築の件でしょうか?」

「おはようございます。こちらこそ、沢山買い取って頂いて感謝しています。はい、家の進捗しんちょく確認と木材のご提案に職人の方を紹介してもらえればと思っています」

 そう、今日は悩みの種だった大量のトレントの処分方法を提案に来たのだ。
 毎日溜まる一方なので、追加した3個のマジックバッグ30㎥じゃ換金が追いつかない。

「さようでございますか。では、まず家の件から話を進めましょう。お客様のご要望通りの広い土地を幾つか選んであります。場所によって、価格も多少前後致しますので地図をご覧下さい」

 そう言ってカマラさんは、迷宮都市内が詳細に描かれた地図をテーブルに置き私に見せてくれた。
 随分ずいぶんと正確な住宅地図で少し驚いてしまう。

 流石さすが商業ギルド、土地や建物に関してはここが牛耳ぎゅうじっているからね~。
 私はそこから3ケ所候補を決めて、マッピングを使用し周辺の雰囲気を調べる。
 
 うん、ここにしよう。
 ダンクさんの家が近くにある、比較的裕福な住人が住んでいる地域の土地にした。
 
 冒険者ギルドからも教会からもそんなに離れていないので、子供達が移動する距離は短くて済む。

「ここに決めました。それで、新築を建てるとなると大量の木材が必要になりますよね?」

「はい、A地区の土地でうけたまわります。木材ですか? 勿論もちろん、家の大きさにもりますが沢山必要になるかと存じます」
 
「実は今地下14階を攻略しているので、トレントが沢山あるんです。家の木材にトレントを使用するのは可能ですか?」

「では建築に使用出来る品質かどうか、確認させて頂いても宜しいでしょうか?」

 おおっ、そうか!

 傷が沢山付いているトレントだと、強度の問題が出てくるから建築資材には使用出来ないんだね。

「トレント1体は高さが5mくらいあるので、どこか別の場所に出す事になりますけど……」

「失礼しました、では場所を移りましょう。資材置き場になりますが広い倉庫ですので、そこでなら出して頂いても問題ないかと思います」
 
「はい、では行きましょう!」

 私は、大量にあるトレントの在庫を処分出来そうでウキウキしていた。
 家を建てる時の資材として使用してもらえるなら、建築費が安く済むからだ。

 商業ギルドから出て歩く事数分。
 大きな資材倉庫に到着。

 倉庫の隣には管理する人間が働くための小屋もある。
 倉庫内には、これまた大柄な男性が何人も忙しそうに働いていた。

 毎日、重い木材を運んでいるから皆さん発達した筋肉をお持ちで……。

 私はカマラさんの後に付いて、指示された場所にトレントを1体出した。
 するとカマラさんが、倉庫内に居た1人の男性を呼んでくる。

「仕事中に申し訳ないが、このトレントの鑑定をしてくれないかな」

 どうやら本職の人にトレントの品質を確認してもらうらしい。

「ああっ? 今日はトレントの入荷予定はなかったはずだが、どっから持ち込んだ物だ?」

 一緒に来た男性が、トレントの近くにいる私に気付いて目を瞬かせた。
 きっと普段、資材倉庫に若い女性がくる事は珍しいんだろう。

「お客様が狩ってきた物だけど、これを家を建てる時に使用したいみたいでね。建築資材として使えるか確認してもらいたい」

「あぁ、そういう事か……。サラちゃんだっけ、有名な冒険者だから直ぐに分かったよ。本当にまだちっこいお嬢ちゃんだな。『肉うどん店』によく食べに行ってるよ! ありゃ安くて早くて旨い飯だ!」

「はぁ……。お店を利用して頂きありがとうございます?」
 
 この男性は私の事を知っているみたいだ。
 いきなり知らない男性から名前を呼ばれてビックリする。

 有名人って、こういう感じなのかしら?

「どれ、サラちゃんが狩ってきたトレントを見てみよう」

 男性は、トレントの周囲を一周して戻ってくると何かを考えている様子。
 そしてもう一度、今度は大きな節に当たる部分を念入りにチェックし出す。

「カマラさん、俺の目にはこのトレントに傷が一つも見当たらないんだが……」 
 
「おお、そうでしょうとも! お客様のパーティーは、凄腕の魔法士ですからね!」

「そっ、そうか……? 傷一つ付いてないのを見るのは俺も初めてなんだが、品質は間違いなくA級品だ。家を建てるには相当量必要になってくるが用意出来るのか?」

 A級品という事は、建築資材として使用出来ると思ってもよいだろう。
 
「はい、心配はいりません。沢山あるので、足りなければ毎週狩ってきますし!」

「優秀な冒険者と聞いていたが、確かに狩りの仕方は上手いもんだ」

「ありがとうございます」

 私はトレントの鑑定をしてくれた男性にお礼を言い、にっこり笑っておいた。
 男性はカマラさんに何かを耳打ちした後で現場に戻っていく。

「A級品と鑑定結果が出ましたので、建築する際の資材として使用出来ます。それで、如何いかほどご用意出来ますでしょう?」

「今出せるのは100本くらいですが、毎週追加で100本は提出可能です」

「ひゃ、100本ですか!? それだけあれば家は建築出来るでしょう。もしよろしければ、残ったトレントを商業ギルドで買い取らせて頂く事は可能でしょうか?」

「えぇ、勿論もちろん! 残り分だけじゃなく、何本でも卸しますよ!」

 やったね~。
 冒険者ギルドでは、マジックバッグ30㎥4個分の96本しか換金出来なかったのだ。

 商業ギルドでも買取してくれるなら非常に助かる。
 冒険者ギルドとは組織が違うので、両方に提出しても疑問に思われる事はないだろう。

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