自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第381話 カマラ・リビエント 3 影衆の到着

 商業ギルド内の自室で仕事をしていると、窓ガラスがコツコツと叩かれる音がします。
 振り返って見ると、白ふくろうの『タマ』がくちばしでガラスをつついておりました。

 ガーグ老からの返信が届いたのでしょう。
 『タマ』を送り出してから1週間。

 窓を開け足に結び付けられている丸筒から、小さな羊皮紙を取り出し文面を確認しました。
 【急ぎ向かっておる】それだけが書かれています。

 自分の役目を果たした『タマ』は、私がねぎらうように羽をでると飛び去っていきました。

 この一文では、ガーグ老が何日後に迷宮都市に来られるか分かりませんね……。

 飲食店を購入した王女様ですが、あれから母子家庭の親子に住み込みで職を与えたようでございます。

 なんと心優しい慈悲深き御方なのでしょう。

 消息不明だった御子が、エルフの王族らしくないのは辿たどってきた人生が違うからなのかも知れません。

 今はまだ王女さまが森からどうやってお隠れになり、生還されたのか全く分からない状態です。
 当主のガリア様の配下が動いているそうですが、6年程前にカルドサリ王国内で最初に冒険者登録をした日しか判明していないと言っておられました。

 それ以前に、どこで何をされていたのかは謎のままです。

 迷宮都市から馬車で2週間の距離で行けます、ハンフリー公爵領にある小さな町のミリオネ。
 そこから王女様の冒険者活動は始まったようでした。

 王族が人族に紛れて冒険者などと、おいたわしい。
 きっと沢山の苦労をされた事でしょう。

 ガーグ老から手紙が届いた事で、私は少しだけ安心する事が出来ました。
 これからは傍付きの影衆10名に守られて、危険を感じる事なく生活してほしいと思います。

 その翌日。
 商業ギルドにガーグ老が尋ねてこられました。
 思った以上に早い到着で驚いています。
 
 長きに渡り捜索していた御子発見の報に、きっと『タマ』を送り出して直ぐに向かってこられたのでしょう。

 相変わらず強い覇気はきまとった御仁ごじんです。
 よわい1,100歳をうに過ぎてなお、その鍛え抜かれた鋼のような肉体は健在でした。

 かつては武の頂点にいた御仁です。
 ヒルダ様の事がなければ、後数百年は当主の座を代替わりする事はなかったでしょう。

 武の出身であるエルフは、外見上一般のエルフとは大きく異なります。
 細身で容姿端麗な種族的特徴はなく、大柄で容姿は人族より少し良い程度。
 姿変えの魔道具を使用しなくても、エルフだと判断はつきません。

 眼光鋭い眼差まなざしで見つめられると、私等は委縮してしまいそうになりますよ。

「連絡を貰ったので、急ぎ駆けつけた。して、御子はどこにおられるのだ?」

「現在、王女様は3人パーティーで迷宮都市のダンジョンを攻略しておられます」

「むっ、それでは冒険者をなさっているという事か?」

「はい、私には事情が分かりません。ガリア様の調査によると、6年前程からカルドサリ王国内にいた模様」

「なんとっ! 6年も前からこの国にいらっしゃったというのか! あれほど探し回ったというに、して何処どこにおられたのだ」

「ハンフリー公爵領のミリオネの町でございます」
   
「王領からかなり離れた場所ではないか! 一体、どうしてそんな小さな町に……」

 ヒルダ様が住んでおられた王領の森は、ミリオネの町から馬車で1ヶ月半は掛かる場所にあります。

「しかも6年前の記録は一切ないそうです」

「そうであるか。カマラ、お主がお会いした王女様はお健やかであられたか?」

「はい、とても健康的に見えました。姿変えの魔道具で外見は12歳程の少女でございましたが、容姿はヒルダ様によく似ておられます。ガーグ老が見れば、直ぐに分かるかと存じます」

「あぁ、これまで何度期待を裏切られた事か! 発見の誤報も多かった……」

 そう言って、ガーグ老は目に涙を浮かべておりました。
 ヒルダ様の大切な御子を見失ってしまったご自分を、随分ずいぶん責めてきたのでございますね。

「毎週月曜から金曜日の間ダンジョン攻略をしているようですので、金曜日の夕方冒険者ギルドに行けばお会いする事が出来ますでしょう」

「そうか、我らは影衆。王族の危機に現れる者。これから王女様の護衛の任に就く。本国には知らせを入れてある。何かあれば、また『タマ』を送ってくれ」

 最後にそう残して、ガーグ老の姿がその場から消えました。

 影衆の一族しか使用する事は出来ない特殊な魔法。
 その場に居ながら、周囲と完全に同化し見えなくなるのです。

 どんな御業みわざがそれを可能にするのか……。

 その後、ガーグ老から無事王女様にお会いする事が出来たと書かれた手紙を『タマ』が運んできました。

 もうこれで安心です。
 
 ですが少し気になる事が……。
 あれ程御子の事を気にかけていらっしゃったのに、王女様に関しての問い合わせが一度もないのです。

 何故なぜでしょう?
 ガリア様にも、これ以上の調査は不要だとおっしゃられたそうです。

 まさか……王女様は……。
 いえ、私ごときが詮索してよい事ではありませんね。

 もしかしたら存在を秘匿ひとくされた御方かも知れない等と、私の立場では知る事は一生叶わないでしょう。

 迷宮都市に王女様がお見えになる事を、ガリア様は結局カーサ様に知らせる事はありませんでした。

 全く、いつまで仲違いを続けるお心算つもりなのでしょう。

 普段は冷静沈着な当主であられるのに、ハーレイ家のカーサ様に対しては子供のような対応をなさる。
 まるでご自分の事を構ってほしいようにみえますよ?

 オリビア様とヒュー様がご結婚されなくて、本当に残念でございます。
 婚約していた時は、非常にお似合いの2人でありました。

 お互い嫡子でなければ、あのままご成婚となりましたものを……。
 やはり種族の違いは大きいのでございましょう。

 両家とも、2人目はお生まれになりませんでした。

 しばらくしてガーグ老から当分の間迷宮都市に腰を据えるので、職を紹介してほしいと頼まれる事になります。
 
 護衛の任はどうなさったのでしょうか?
 24時間体制で王族を守る必要があるというのに、迷宮都市で職探しとはこれいかに?

 疑問に思いながらも、風魔法が得意なエルフが出来る家具職人の工房を紹介致しましたが……。
 
 はて、私の知らない所で何か起こっている様子。
 まぁ、ガーグ老が率いる影衆のメンバーは精鋭部隊です。

 王女様の身に万が一の危険が及ぶ事などないでございましょう。

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