自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第388話 ガーグ老 5 御子の経歴&地下9階~地下10階でのダンジョン内警護

 それから5日間。
 ダンジョン内の警護はする必要がないくらい、御子達は簡単に魔物を討伐していた。

 そしてどう考えても、持っているマジックバッグでは収納出来ない程の魔物を狩っていなさる。
 
 これはっ!
 御子は移転魔法の他に、アイテムBOXの能力も持っていらっしゃるのか!?

 他国に知られでもしたら、大変厄介やっかいな能力だ。
 戦時中、その能力があれば大量の武器や食料を運べる。
 
 移転の魔法だけでも、使える者がいれば戦況を大きく変えるというに……。
 しかもアイテムBOXの能力を持っているのは、御子だけではないようだ。

 傍にいる人族の姿をした少年も、マジックバッグに入りきらぬ量の魔物を入れておる。

 これは偶然だろうか?
 
 御子の傍に治癒や浄化が出来る高名な治癒術師が御二方。
 その内の御一方はアイテムBOXの能力まで持っているなぞ、世界樹の精霊王のお導きという他ない。

 なんにせよ、御子が独りでなくて良かった。

 これ程までに、緻密ちみつな魔力操作で魔物を一度で仕留める事が出来る御二方おふたかたが傍におられれば、儂らが護衛出来ぬ移転先でも安心だろう。

 冒険者ギルドで換金を済ませた後は、肉屋と『肉うどん店』に寄り移転された。
 そこまで確認し儂らも定宿へ帰る。

 明日は、また御子の経営する店に前回食べられなかった5人を連れて食べに行くとしよう。

 あの味は一度食べたら病みつきになるな。
 パンと違って、食感が柔らかいのもじじいの儂らにぴったりだわ。

 土曜日。
 結局10人全員で御子の店に食べに行く事になった。
 
 初めて食べる5人が、その味に驚いておる。
 分かるぞ!
 この甘辛い味が良いのだ。

 うどんの上には、たっぷりと肉も載っているし食べ応えも充分であろう。

 これで鉄貨7枚(700円)とは安い。
 ちゃんと利益が出ておるのか心配な程だ。

 これを姫様が食されたら、笑顔になっただろうに……。
 王宮での毒見済みの冷えた食事に、姫様はいつも不満顔であったからな。
 塩味ばかりで飽きるとも言われておった。

 王族の食事には高価な食材が使用されていたはずなのに、姫様が満足する料理はなかったらしい。
 こんな食事より、『ハンバーガー』や『フライドポテト』を食べたいとなげかれていた。
 儂が聞いたこともない食べ物を、姫様は一体どこでお知りになったのか?

 どんな食べ物か尋ねてみると、笑って「太る食べ物」だと教えてくれはしたが……。
 結局、分からずじまいだった。

 日曜日。

 教会の炊き出しをする御子の警護をして定宿に戻ると、使いを出した『ポチ』がマケイラ家から手紙を預かり戻ってきた。

 首にくくり付けられた袋の中に、これまで調べた資料が入っている。

 取り出して読み込んでみると、御子は今から7年くらい前にハンフリー公爵領のミリオネの町で冒険者登録をした以前の経歴が、カルドサリ王国内では見付からなかったとあった。

 やはりそれまでは他国にいらした可能性が高い。
 
 その後、兄と名乗られる少年と合流したが何故なぜか数か月の差があった。
 ミリオネの町では、路上生活をしている子供達に5軒の家を購入して与えたそうだ。

 迷宮都市での教会の炊き出しといい、御子は本当にエルフの王族らしくない。
 そこで4年半過ごし、C級冒険者となってリースナーの町へ活動拠点を移している。

 地下10階層のダンジョンを、2年で攻略するとは……。
 ここでも同じように教会で炊き出しをしておられた。
 路上生活をしている子供達にも10軒の家を購入して与えている。

 リースナーの冒険者ギルドマスターは、白狼族とのハーフ獣人だったな。

 獣人は、たとえハーフであろうとも鼻が利く。
 御子の事に何か気付かれたかもしれん。
 資料にると、御子は大層可愛がられていたらしい。

 獣人は謎が多い種族だ。
 一族の長である直系の血を引く者は、獣への完全変態が出来るらしい。

 体の構造がどうなっておるのか、なんとも不思議な事よ。
 そして百以上の種族に分かれておる。
 寿命も短命な者と長命な者とで違いがあった。

 姫様は獣人に興味津々であったらしい。
 王族は他種族に関心を持つ事など滅多にないはずだったが、特にうさぎの獣人に会いたいと言われておった。
 
 その他にも猫耳をした娘に会いたいと言われて困った事がある。

 その時も男のロマンだと……。
 姫様は、自分の性別をちゃんと分かってらしたのか今もって謎である。

 エルフの国に獣人は居らぬ。

 ナージャ王国には宮廷魔導士にってエルフしか入れない結界が張り巡らされているから、基本的に他種族は国に入る事が出来ない。

 カルドサリ王国の王と結婚したのだから問題はなかったと思うが、しかしそれまでは男性に一切興味がないようだった。
 王が溺愛できあいしておった所為せいで、結婚はまだ早いと相手を探さなかったから良かったものの、姫様は最初から結婚する心算つもりはなかったのではないかと思う。

 カルドサリ王の結婚の申し出にうなずいた時は、本当に驚いたものだ。
 その後も非常に仲睦なかむつまじい様子で、会ったばかりとは思えないくらいに意気投合なされていた。

 その割に、寝室を共にするのは初夜だけであったのが不思議であったが……。
 儂ら影衆は常に姫様のお傍に付いているので、王と仲が良い程、別々に寝られる事に疑問を抱いたものだ。
 
 王も別段、それを気にした風でもなかったしな。
 あの御二方はお似合いではあったが、恋愛とはちと違う感情で結びついているようにみえた。

 しばし姫様の思い出にひたった後、手に持ったままの資料に再び視線を落とす。
 
 3枚目の羊皮紙には、御子が迷宮都市に活動拠点を移してからの事が書いてあった。
 迷宮都市から御三方で活動を始めたようだ。
 教会での炊き出し、母子への住み込みで働ける職場の支援。

 ここからは儂も知っている事ばかりだ。
 冒険者としての活動は、直接警護をしている儂らの方が情報が多いだろう。

 ざっと読んでみたが、やはり300年間何処どこで生活をしていらしたのか分からない。
 把握出来たのは、7年前からカルドサリ王国で冒険者をしている事だけだった。

 月曜日。
 再び御子のダンジョン攻略に付いていく。
 なんとっ、今日は一気に地下10階まで全力疾走しっそうされるではないか!

 まさかこのまま、毎週1階層長くなるのではあるまいな?

 もう老体が悲鳴を上げておるわ。
 歳は取りたくないものだ……。

 御子がマジックテントを設置し、休憩されると同時に儂らは安全地帯に倒れ込んだ。
 こんなに無茶な走りをした事は経験がない。

 肩で大きく息を吐き、なんとか呼吸を安定させる。
 息子よ、儂らではダンジョン内の警護が辛くてかなわん。
 
 早く迷宮都市に『万象ばんしょう』を連れて参れ!
 お主らは、まだ若いから大丈夫だろう……。

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